海洋環境の変化により北海道での漁獲量が急増したブリ。南北海道エリアでは毎年秋頃に漁獲の最盛期を迎えます。漁獲急増の一方で、北海道内でのブリ消費量は全校平均の半分程度と低迷しているのも事実です。地場産ブリをもっと地域の子供たちに食べてもらい、地域の海に起こっている変化を知って欲しいという思いで、2020年から開始した本取り組みも今年度で4年目となりました。昨年までは函館市内の小・中学校のみへの食材提供でしたが、今年度は南北海道エリアの5市町村へとエリアを拡大し実施しました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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イベント概要
イベント名:北海道ブリたれカツ学校給食無償提供
日程:2023年9月1日(金)〜10月5日(木)
開催場所:南北海道エリアの小・中学校38校(函館市:13校、七飯町:7校、上ノ国町:3校、江差町5校、北斗市:10校)
参加人数:7,255名(函館市:3,775名、七飯町:1,922名、上ノ国町:333名、江差町225名、北斗市:1,000名)
協力団体:はこだて・ブリ消費拡大推進協議会(渡島総合振興局)
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特有の臭みを消すために下処理に工夫を施したブリ
北海道内でのブリ消費量が低迷している理由の一つとして、特有の臭みが苦手といったブリに対するネガティブなイメージを抱いている人も多いということが挙げられます。南北海道ではブリだけではなくイナダやフクラギなどの小さなサイズの個体も水揚げされますが、そのような個体は脂身が少なく、パサついた印象を受ける方もいます。そんなブリ(フクラギ、イナダ)でも美味しく食べられるようにと、切り身を一度牛乳に漬け込むことで特有の臭みをなくし、さらに旨味成分を加えるために地場産の昆布エキスにマリネするなど、下処理に時間をかけてから揚げるメニューが「北海道ブリたれカツ」です。
家庭の食卓でもブリたれカツを味わってもらうことができるよう、そのような下処理の方法や、他にも海洋環境の変化のマンガなどを記載したランチョンマットを給食配膳時に全児童生徒へと配布しました。
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「いただきます」の前には海洋環境の変化に関するミニ講義を実施
食材無償提供校のうち4校(函館市立小学校1校、函館市立中学校1校、七飯町立小学校1校、北斗市立小学校1校)では、講師が学校へ出向き、「いただきます」の前に海洋環境の変化に関するミニ講義を実施しました。例年、給食配膳終了から「いただきます」までの時間を利用して講義を実施する場合がほとんどでしたが、七飯町立小学校では食育授業の一環として、渡島総合振興局水産課と共同で45分間の授業を担当しました。
「ブリを食べたことがある人、ブリが好きな人?」という講師の問いかけに対して、ほとんどの児童が手を挙げる学校も多く、子供たちは地場産ブリに対するポジティブなイメージを抱いていることもわかりました。
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給食を味わった子供たちからの声
(小学生)
4年生:函館でブリが増えていたり、ガゴメ昆布が減っていたり、海にはいろいろな問題があるのだとわかりました。今度スーパーに行った時、どんな魚が並んでいるのか見てみたいと思いました。
6年生:今まであまり海に興味がなかったけど、話を聞いてブリを食べてみてすごくおいしかったし、家族にも地球温暖化のことなどを伝えたいと思いました。
(中学生)
1年生:人間の手によって海の状況が変化していることがわかった。消費者として、もっと海に興味をもっていきたいと思いました。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人Blue Commons Japan
活動内容:海の問題解決に向けたアクションの輪を広げることを目的として、食文化を切り口にした海洋教育を中心に、海と人とのかかわりについて学び、海洋がもたらす恩恵や未来、さらに海洋の課題について理解を深めるために様々な事業を行います。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。