このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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イベント概要
・開催概要:本イベントでは、石鎚山系を起点とした瀬戸内海側・太平洋側それぞれの森里海の繋がりを調査し、各エリアにおいて、上流~河口域(海)の環境の違いや特異性、抱えている課題などを愛媛県側・高知県側と比較しながら学び、各プログラム終了後、それぞれの参加者が一同に集い、各プログラムでの学びの成果を発表し相互に学習します。森里海の繋がりと人との関わり方を紐解きながら、瀬戸内海と太平洋の未来を考えるイベントです。
・日程:2023年8月19日(土)、20(日)
・開催場所:高知県・仁淀川流域
・参加人数:小学5・6年生 20名
・後援:愛媛県、愛媛県教育委員会、高知県、高知県教育委員会、いの町、越知町
・協力:いの町森林政策課、横倉山自然の森博物館、仁淀川漁業協同組合、たかはし河川調査事務所、(一社)海と日本プロジェクトin高知、ソラヤマいしづち
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【森の学習】自然林を歩いて山の役割を学ぶ!
1日目、森里海を巡る大冒険は森林学習からスタートしました。いの町の野遊びの達人・自然観察指導員の山岡遵さんを講師に迎え、水やセミの音が聞こえる涼しい山の中を歩きながら森の役割や森と海の繋がりについて学びました。海の水は山に降った雨から始まり、森があることで雨を受け止め土壌の中をゆっくりと流れることで山の養分が混じり合い栄養豊かな水が生まれることや、人工林は定期的に手入れをしないと森林の中に光が差し込まず森の機能が低下してしまう現状について知りました。実際に、水が流れている所を触ったり、水の音やセミの声を聞いたりと、視覚だけでなく、山を聴覚や触覚を使ったフィールドワークを通して学びました。
自然林を歩いた後は、仁淀川上流部にて「仁淀ブルー」について学習しました。いの町地域おこし協力隊の端野寛之さんを講師に迎え、仁淀川が青く見える理由や、川にどんな生物がいるか、また川の役割についても学びました。前日までの大雨の影響で流量が増えており、当日は川に入ることは出来ませんでしたが、川の水に触れ、「冷たい!この水が海に流れていくんだなあ」と、歩いた森と海とのつながりに気が付くことができました。
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【里の学習】仁淀川の生態系とアユの生活史を学ぶ!
横倉山自然の森博物館に移動し、たかはし河川生物調査研究所の高橋勇夫さんを講師に迎え、仁淀川の生態系やアユの生活史について学びました。アユは孵化後海に流下し河口などの沿岸域で成長してまた川に戻ってくることや、日本の河川には魚が利用しやすい魚道が少ないこと、またダム建設により栄養を含む土砂などの流れが分断され、山から土砂から流れてこなくなり巨石や砂利がなくなり、結果としてアユの産卵場の減少に繋がっている現状について学びました。後半、仁淀川中流での生物調査を実施予定でしたが、河川の増水の影響で安全面に配慮して、屋内でのグループワークに変更しました。魚が利用しやすい魚道の形状や仕組みについて各グループで考え、「魚の習性に合わせて壁を作って魚道に行くよう誘導する!」「せきに沿って川幅全体を階段にする!」など、先生をうならせるアイデアがたくさん生まれました。
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【海の学習】仁淀川河口域で生物調査!
2日目は、高知大学教育学部黒潮圏総合科学専攻の伊谷行先生を講師に迎え、仁淀川の河口域で生物調査を行いました。河口は、潮の満ち引きによって海水が入ってくる特殊な場所でありここでしか生きられない生物がいることなど、子どもたちはそれぞれ、河口の特徴を学んだ上で生物調査を開始。仁淀川に多いカワスナガニや汽水でしか生きられないカノコガイなどを見つけ、他にも見つけた生き物の名前や特徴を積極的に先生に聞くなどし、学びを深めました。
また、高知県総合研究センター海洋生物研究施設の斉藤知己先生からは、太平洋側の海流「黒潮」とウミガメの生態について学びました。ウミガメの鱗や子がめに触れながら観察する貴重な体験に、皆のテンションは最高潮に!くちばしや甲羅など先生に説明してもらいながら観察しました。また、ウミガメは砂浜がないと産卵することができません。この砂浜は川からの土砂が海へ供給されないと出来ない地形であるということを知り、森・里・海の繋がりについてのさらに理解を深めることができました。
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【まとめ学習】2日間の学びを「森里海マップ」で表現!
2日間のまとめとして、森・里・海それぞれの学びとそれがどう海の豊かさと繋がるのかを表現する「森里海マップ」の作成を行いました。各班ごとに学んだことをマップに落とし込み、発表することで、この2日間で体験したこと、学んだこと、感じたことを整理しました。
また、9月10日(土)には、7月27(木)、28日(金)に開催した瀬戸内海編と今回の太平洋編の計40名が集まる交流学習会を開催し、お互いが学んだことを発表し合い、それぞれ「瀬戸内海側」と「太平洋側」の違いを学びます。40名のアイデアから、地元の企業と連携し西条市で獲れた海苔のパッケージデザインの開発を行う予定です。
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参加した子ども・保護者からの声
【参加者の感想】
・森から養分が浸み込んで川に流れ、その川を魚が泳いでプランクトンなどを食べ、その栄養を含んだ魚が海に行き、人間が食べることができる、という長い年月をかけて循環していることが分かった。
・この授業を受ける前は、「川の水蒸気が上がっていって、水が氷になり、雲になったりして、結局は雨になる」としか思ってなく、川と海と山のつながりについて、学びについての知識がなく正直興味がなかった。しかし、この授業を通して、「川から流れてきた養分を微生物が食べたり、小魚が微生物を食べたり、また、大きな魚が小さな魚を食べたりと食物連鎖に関係している他にも、山があるからこそ川にいる微生物が生きている」など、さまざまな繋がりを学び「山があるからこそ海や川の役に立っていることや、川があるからこそ海や山の役に立っているんだなぁ。他にはどういう関係があるのかなぁ。」など、だんだんと興味を持てるカギになったのが、嬉しかった。
・先生に教えてもらったように、「生き物の気持ちになって考える=よく観察する」ことを大切にして、これからも森や里、川、海に生きる生き物について観察していきたい。
【保護者の感想】
・目には見えにくい森里海のそれぞれの繋がりを学ぶ機会を作っていただきありがとうございました。海に関心のあった子でしたが、森や里、川にも興味をもったようです。
・私でも知らないことをたくさん子どもから教えてもらいました。次ある9月10日の交流学習会も楽しみにしています。
・夏休みに普段は体験できないことをさせていただきありがとうございました。ウミガメの産卵場になる砂浜を綺麗にしたいと子どもから言われ、ごみ拾いをしようかなと思っています。素敵なイベントだと感じたため、是非来年も参加させて頂きたいです。
・体験がかなり充実していたのが本人の言葉からも十分に伝わってきました。また、イベントの様子がリアルタイムでSNSから発信されているのが良かったです。
・行く先々で、その場所の専門家の先生から、色々な話を聞けたようです。また、見守りやお世話をしてくれる、たくさんの大人が関わってくれていて、安心した環境で学べたようです。行くまでは不安そうにしてましたが、帰ってきて「楽しかった!ほんと行って良かった」とすぐ話してくれました。
<団体概要>
団体名称:(一社)海と日本プロジェクトinえひめ
活動内容:愛媛県内の「海」を中心とした、食・文化・スポーツ・お祭り等の活動のムーブメント作りのための情報収集、イベント活動の広報を実施。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。