幅広い業種でコロナ禍からの回復が継続 原燃料高によるコスト増も転嫁進む

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 3月期決算企業の2023年3月期本決算が出そろいました。株式会社東洋経済新報社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:田北浩章)では、業界担当記者が決算発表を受けて取材を行い、全上場会社について独自に今期、来期の業績予想を見直しました。

 四季報予想を集計した結果、今期(23年4月期~24年3月期、対象3584社)の予想営業利益は、全産業で8.9%増加する見通しとなりました。

 業種別では電気・ガス業の営業利益が前期比14倍に膨らみ、全業種でもっとも高い増益率になりました。大手電力会社は燃料高騰の影響で前期は軒並み赤字となりましたが、今期は電気料金の値上げ効果で業績の急回復を見込んでいます。

 全業種中、今期予想の営業利益額が約7兆4300億円と2番目に大きい輸送用機器は15.2%増と2桁増益の見通しです。半導体不足による生産調整を強いられていた自動車業界の生産が回復し、原材料高の価格転嫁も進んでいるためです。

 前期に3期ぶりに黒字化した空運業も旅行や出張が増えて、今期38.5%増益と力強い回復が続く見通しです。

その一方で海運業は物流が正常化し、高騰していた運賃が下落したことなどで、36.3%と大幅な営業減益を予想。また、原油や石炭・鉄鉱石など資源相場の高騰が一服し、資源高の恩恵を受けていた業種は、非鉄金属が18.8%減益、石油・石炭製品は14.8%減益、総合商社を含む卸売業が14.8%減益の予想です。

 市場別では、東証プライム・名証プレミアの企業は8.8%の営業増益、ネットサービスやDX関連企業が多い東証グロース・名証ネクストの新興市場は94.7%増益の見通しです。

 コロナ禍で停滞した消費や企業活動の回復が続き、原燃料価格の転嫁も進んでいることで、多くの業界で総じて業績見通しは堅調です。ただ、足元では米国経済の減速や、中国の景気回復遅れに伴う先行き不透明感を指摘する声もあるほか、国内でも4月に植田和男総裁が就任した日本銀行が現行の金融緩和策を見直すとの観測が出ています。

 (注)業種別、市場別業績集計の算出方法

 『会社四季報 2023 年3集』掲載会社で、今期・来期の予想および実績2期分がある企業の業績を集計。実績・予想とも連結決算の数値を優先。ただし、決算期変 更企業、連結決算方式変更企業、上場企業の子会社は除く。銀行、保険の営業利益は集計していない。

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