バルセロナスーパーコンピューティングセンターと富士通、個別化医療および量子分野で共同研究契約を締結

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スペインにおいてスーパーコンピュータを活用した最先端技術の開発を行うスペインの研究開発機関であるBarcelona Supercomputing Center(注1)(Centro Nacional de Supercomputación、以下、バルセロナスーパーコンピューティングセンター)と富士通株式会社(注2)(以下、富士通)は、個別化医療および量子分野の2領域における共同研究契約を2023年4月19日に締結し、2023年5月より共同研究を開始します。
個別化医療では、バルセロナスーパーコンピューティングセンターのライフサイエンス分野における世界最先端の技術と、富士通のゲノム情報を解析可能なAIや因果発見技術、HPCにおける計算処理の高速化技術などの強みを組み合わせ、ゲノム内の分子情報やX線画像などの様々なデータをもとに病気を高精度に解析するマルチモーダルAIを開発し、病気検出率の向上や、医師が病気を診断する際の負担軽減などの成果の創出を目指します。
また、量子分野においては、より大規模な量子回路計算の実現を目指し、量子回路の縮約により計算量を削減できるバルセロナスーパーコンピューティングセンターのTensor Network(注3)技術を両者の量子コンピュータシミュレータ(以下、量子シミュレータ)システム上に実装するための共同研究、および量子シミュレータを用いて、材料や金融などの分野における実問題を解決するための量子アプリケーションの開発を行っていきます。

【 2つの共同研究について 】
1.医師の診断や治療を支援するマルチモーダルAIの開発
現在の医療では、がんなどの精密検査において、ゲノム内の分子情報や、病理画像、放射線画像内の組織や器官の特徴などの個々の診断結果に基づいて病気を判定しており、それらの複数の診断結果を組み合わせて精密医療を実現するマルチモーダルヘルスケアデータの活用が大変重要になっています。近年では、このような複合的なデータを利用するための取り組みが複数の国で始まっており、病気を精密に推定するためには技術のさらなる進歩が不可欠です。
両者は、上記の課題を解決するため、バルセロナスーパーコンピューティングセンターのゲノム関連技術や計算生物学における専門知識と、富士通のゲノム情報を解析可能なAIや、様々なデータから重要な因果関係を網羅的に抽出し新たな発見へ導く因果発見技術、大規模HPCシステム上での計算処理の設計および高速化といった技術を融合し、大規模なグラフ構造の医療データを実現することで、精密医療のための次世代大規模マルチモーダルAIを創出します。具体的には、ゲノム解析や診療データ、画像データと、生物学的プロセスおよび細胞相互作用のシミュレーションモデルを組み合わせて、個々の患者のあらゆる医療データを基にマルチモーダルAIによる解析を通じた精密な個別化医療の実現を目指します。

2. Tensor Network技術を実装した量子シミュレータの研究開発
一般的な量子シミュレータでは、量子回路のサイズが1量子ビット増えるごとに必要なメモリが2倍になるため、量子回路計算の規模拡大において課題があり、両者はこの課題を解決するため、バルセロナスーパーコンピューティングセンターが得意とするTensor Network技術を用いて量子回路を縮約し計算量を削減することで、従来同等のメモリ容量でより大規模な量子回路計算の実行が可能な量子シミュレータの実現を目指します。
両者のHPCに関する世界トップレベルの知見や技術を通じて量子シミュレータシステム上にTensor Network技術を実装し、さらなる大規模な分子のエネルギー計算やより正確な市場予測など、材料や金融といった分野における実問題を解決するための量子アプリケーションの開発を行う予定です。

【 富士通株式会社 執行役員SEVP CTO、CPO ヴィヴェック マハジャンのコメント 】
富士通は、本共同研究を通してマルチモーダルAIおよび量子シミュレータの研究開発を加速し、当社のコンピューティングやAIなどの先進技術の開発強化、および実用的なアプリケーションの開拓につなげていきます。また、グローバルな共同研究を積極的に推進することで、サステナブルな社会の実現に貢献するとともに技術の持続的発展をリードしていきます。

【 バルセロナスーパーコンピューティングセンター ディレクター Mateo Valero氏のコメント 】
これまでの富士通との長年にわたる連携の集大成となる今回の契約により、個別化医療と量子コンピューティングの2つの重要な分野で共同研究を進めることができます。この共同研究が、最終的に社会に役立つ新しい技術につながることを期待しています。

【 商標について 】
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

【 注釈 】
(注1)Barcelona Supercomputing Center:所在地 スペイン バルセロナ、Director Mateo Valero
(注2)富士通株式会社:本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁(補足:掲載先メディアや閲覧環境の仕様によっては、「隆」の文字が正しく表示されない場合があります。 正しくは、「隆」の「生」の上に「一」が入ります)
(注3)Tensor Network:テンソル(ベクトル、行列など)の積をネットワークの形式で表現したもの。量子回路のシミュレーションにも用いられており、縮約と呼ばれる演算を効率良く行うことで高速化を図るシミュレーション技術が提案されている。

【 関連リンク 】
・スーパーコンピュータ「富岳」のテクノロジーを活用し、36量子ビットの世界最速量子シミュレータの開発に成功(2022年3月30日プレスリリース):https://pr.fujitsu.com/jp/news/2022/03/30.html

【 本件に関するお問い合わせ 】
 富士通株式会社
 富士通コンタクトライン(総合窓口)
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