この度シェアリングエコノミーの安心安全な取引の促進のため、デジタルプラットフォームの果たすべき要求事項を規定した ISO/TS 42501(デジタルプラットフォームの安全性・信頼性に関する要求事項)が発行に至り、本日2023年3月16日 当協会主催にて発行記念イベントを開催しました。
- 国際規格「シェアリングエコノミーISO/TS 42501」について
シェアリングエコノミーは、インターネットを活用したプラットフォームサービスであるため、モノやサービスのやり取りが国境をまたぐことがしばしば起こります。
シェアサービス企業がこの国際規格を参照してサービスに活かすことで、ユーザー同士のトラブルを防いだり、トラブルが起こった際に解決を早めたりすることができるようになります。
▼ISO/TS 42501:2022
Sharing economy — General trustworthiness and safety requirements for digital platforms
https://www.iso.org/standard/80561.html
2019年6月「ISO/TC 324 “Sharing Economy”」の様子(*1)
- シェアリングエコノミー国際規格発行に関する発表会
挨拶
石山アンジュ(シェアリングエコノミー協会 代表理事)
シェアリングエコノミーの市場規模(*2)は、2022年 過去最高 2兆6000億円超え、2032年には15兆円と予測されています。
新しい経済活動としてのシェアリングエコノミーの健全な発展には、ルール形成を含む、政府との連携が欠かせません。
当協会は、安心安全にシェアサービスを利用できる環境を整えるべく、 政府・自治体との意見交換、政策提言などを行っています。
その中の一つの「国際標準化」とは、製品・サービスの互換性や品質の確保を目的として世界共通のルールを作る活動です。
当協会は、2017年から関係省庁や一般財団法人日本規格協会(JSA)と協力して、関係各国へ参加の呼びかけを行うなど、国際標準化に向けて準備を開始し、2019年よりシェアリングエコノミーの国際規格を作るための委員会がISOに設置され、日本が委員会の議長・幹事を務めながら世界共通のルール作りを行ってきました。
祝辞
経済産業大臣 西村康稔氏
民泊やカーシェアリングなど、有効な資源をシェアしていく新たなビジネスモデルが広がってきています。
私も色んなシェアリングを通じた新しいビジネスを展開しようという方たちとたくさんお会いします。
そんな中で国際標準化は、日本のビジネスモデルを広げていく大きなチャンスでもあります。
経産省としてシェアリングの新たな発展を大いに歓迎、応援していきたいと思っております。
国際標準発行の経緯及び概要
小出富雄(シェアリングエコノミー協会 認証制度・国際規格部長)
元々日本は諸外国に比べ、個人間の取引であることに対する不安の声が多く、それが足枷となっていた側面がございました。
普及に向け、内閣官房の元にシェアリングエコノミー検討会議が設置され、当会も議論に参加し、安心安全を担保するためのモデルガイドラインを策定。その後、第三者の目で客観的に審査、モデルガイドラインを満たすことを見える化するため、シェアリングエコノミー認証制度(*3)を創設しました。
これをもとに国際的なルールを作り、事業者の国際展開を後押しするため、国際規格に向け準備を開始し、関係各所と連携しながら、PASの発行につなげました。
シェアサービスの信頼性と安全性を確保するため、プラットフォーマーの方が遵守すべき事項が記載としては、大きく3つ「利用者が誤解せずに購入できるように、必要な情報に容易にアクセスできること」「決済が確実になされる仕組みを構築すること」「利用規約はいつでも、わかりやすい形で参照できるようにすること」と、遵守すべき事柄が規定されています。
特に新しく事業を始められる方は、安心安全のためにどこまで取り組めばいいか悩まれる方も多いと思いますが、この国際規格により、一定の水準を示すことで、事業の羅針盤になるのではないかと考えております。
シェアリングエコノミーとルール形成に関するトークセッション
今回のISO/TS 42501の発行の意義や今後の期待などについて、国際標準化、ルール形成、スタートアップ振興に取り組んでおられる皆さまに、それぞれの立場からコメントを頂戴しました。
経済産業省 国際標準課 課長補佐(総括) 田中健人氏
ISOの意義、シェアリングエコノミーの国際規格が発行された意義
経済産業省 新規事業創造推進室長 石井芳明氏
スタートアップを取り巻く環境、シェアリングエコノミーにおけるスタートアップの特徴・ニーズ、ルール形成含めた支援の方向性
渥美坂井法律事務所 シニアパートナー 弁護士 落合孝文氏
産業育成に対するルール形成(標準化含む)の役割・重要性
一般財団法人日本規格協会 システム系・国際規格開発ユニット ユニット長 中川梓氏
ISO/TS 42501の趣旨・メリット、シェアエコ普及促進に対する期待
- 国際標準発行への期待
国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長
持丸正明氏より
近年、国際標準機関であるISOでは、サービスに関連する標準を策定する技術委員会の設立が増えています。いままでは製品の互換性や安全性、品質管理に関する標準が中心だったのですが、サービスの品質管理や、品質尺度に関する標準策定が増えているのです。TC324シェアリングエコノミーも、2019年に設置された新しい技術委員会です。私、持丸はその国際議長を務めています。サービスの多くがデジタル技術とインターネットを活用するようになり、サービスそのものや、そこで活用されるツールの市場が国境を越えるようになってきました。今以上に海外サービスが日本市場にも入ってくるでしょうし、また、日本企業も海外市場に乗り出せるようになるでしょう。そのときの市場ルールを決めるのが国際標準です。シェアリングエコノミーの市場拡大に向け、皆さんにとって不利なことが起きないよう、できれば、皆さんのビジネスが有利に市場展開できるようルール形成を進めたいと考えています。是非とも皆さんのお知恵、お力をお貸しください。
国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 上級主任研究員
渡辺健太郎氏より
TS 42501のプロジェクトリーダーとして国際標準化に向けた議論を進めて参りましたが、多くの皆様のご協力のおかげで昨年10月に発行となり、本日ご報告できることを大変嬉しく思います。本文書は日本のモデルガイドラインを元にしたものであり、シェアリングエコノミープラットフォーム事業者が利用者に安心して使ってもらえるために大切なことを記した日本発の成果となります。しかしながら、文書が存在するだけでは利用者や事業者のメリットには繋がりません。本文書を業界の発展や国際化に繋げていくべく、ぜひ多くの皆様にご活用いただくと共に、本文書についてご意見いただくことでさらによりよいものにしていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
- メディア関係者の皆様へ
本イベントのアーカイブ動画を希望される方は以下までご連絡下さいませ。
info@sharing-economy.jp
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<補足情報>
・国際標準化
品質・性能・安全性などについて国際的な取り決め(規格)を行い、普及させることをいいます。製品・サービスの仕様が各社バラバラな状態ではなかなか普及しませんが、事業者が規格を利用し、一定の水準の製品・サービスが増えることにより、市場の拡大を後押しします。
・ISO
国際標準化機構のことを言います。国際的に通用する規格を制定する機関です。160カ国以上の国・地域が加盟しています。
・ISO/TC 324総会
議長国、及び委員会に参加を表明した国々が集まって、規格開発について議論。2019年6月に第1回を開催し、これまで計8回開催。
(*1)【開催レポート】第1回ISO/TC 324東京総会の開催報告
https://sharing-economy.jp/ja/news/0701_2/
(*2)シェアリングエコノミー市場調査 2022年版
https://sharing-economy.jp/ja/news/20230124
(*3)シェアリングエコノミー認証制度
https://sharing-economy.jp/ja/trust/
【一般社団法人シェアリングエコノミー協会】
https://sharing-economy.jp/ja/「Co-Society〜シェア(共助・共有・共創)による持続可能な共生社会」をビジョンに掲げ、2016年1月設立以来、シェアリングエコノミーを支える唯一の業界団体として、法的な整備をはじめとする様々な取り組みを実施しています。現在 328社の企業と113の自治体が加盟。