・長期化するコロナ禍と円安の影響により資金繰りが限界に達し、息切れ倒産増の懸念
・美容、医療、広告業界内で不正や金銭トラブル情報が多発する企業の倒産を予測
◆倒産可能性の高い業種ランキング
◆調査背景
2022年は新型コロナウイルスによる原材料の高騰やウクライナ問題による原油高、アメリカの利上げによる円安といった変動の激しい経済状況により、消費者だけでなく企業も苦境に立たされることとなりました。日本銀行が発表した経済・物価情勢の展望では2022年度の消費者物価指数は前年比で約3%上昇し、今後の原材料コストの上昇圧力や企業の予想物価上昇率の動向次第では、価格転嫁が想定以上に加速し、物価が上振れる可能性があるとしています。※5
このような先行き不透明な状況によって多くの企業は財務基盤が以前よりぜい弱となっているため、取引先倒産によって引き起こされる代金未回収が資金繰りに与える影響は大きくなっています。これらの経営リスクを回避するべく、企業には取引先の業種動向や倒産リスクを常に把握することが求められます。
当社はこれまで企業の連鎖倒産を防ぐ取り組みとして、AI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」の提供を通じて倒産の事由や前兆と見られる情報を「アラームボックス」上で収集・解析してきました。
以上を踏まえ、“1年以内に倒産する危険性がある要警戒企業”を業界ごとに集計し、内容の分析を行うことで、取引先の与信管理におけるタイムリーな情報収集の重要性と活用法を啓発すべく、本調査の実施と発表に至りました。
※5 日本銀行 経済・物価情勢の展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/index.htm/
◆主な調査結果
今回の調査では、円安による原材料高騰の影響を受けた業界と、長期化するコロナ禍によって需要が回復しない業界に倒産関連情報が多く発生しました。
1位の農業と2位の電気業は、前回の調査と変わらない上位2業種であり、飼料や燃料費の高騰によって厳しい業界動向が続いていることがわかりました。また、建築資材高騰の影響を受けた職別工事業も収益悪化により上位となりました。
長期化するコロナ禍による需要の落ち込みの影響を受けたのは、業務用機械器具製造業のアミューズメント機器製造企業やアパレル業界、物品賃貸業のレンタカー事業を行う企業であり、再建の見通しが立たず息切れ倒産に至るケースが散見されました。
一方で、医療や美容、広告業界では、代表者逮捕や金銭トラブルといった情報が多数発生しており、信用失墜により倒産に至る企業が散見されました。
◆調査結果詳細
1位 農業:56社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:耕種農業、畜産農業、園芸サービス業など
畜産農業で大手企業の倒産が複数発生し、その余波により連鎖倒産が発生したため業界全体に暗雲が立ち込めました。以前より飼料穀物の海外依存度の高さや過剰生産といった業界課題は問題視されてきましたが、今年は特にコロナ禍や円安による飼料や燃料費といった生産コストの増加により資金繰りが悪化したため、倒産が発生しました。前回のランキングでは、耕種農業が業務用需要の減少による野菜余りや気候変動による生産力低下に関する警戒情報が発生していましたが、今回は畜産農業の資金繰り悪化や家畜の伝染病に関する警戒情報が発生しており、農業全体の倒産危険度が高まっています。
2位 電気業:63社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:発電所、電力小売りなど
2021年の初頭から続く原油や液化天然ガスなどの燃料価格の高騰により、発電所を持たない新電力と呼ばれる電力小売り事業者の多くで電力の仕入価格が提供価格を上回る“逆ザヤ”が発生した結果、多数の事業者が事業停止に踏み切りました。2022年以降も市場価格の高騰は続いており、新規受付の停止や事業撤退、倒産等の警戒情報が継続して発生していることから、今後も電気業全体の倒産リスク増加が予測される結果となりました。
3位 業務用機械器具製造業:89社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:医療用機械、アミューズメント機器、光学機器などの業務用器具の製造
アミューズメント機器や映像関連の光学機器など、コロナ禍初期に需要減となった企業に倒産や警戒情報が発生していました。製造業の事業拡大には設備に多額の先行投資が必要ですが、長引くコロナ禍の影響で受注が確保できない企業に関しては、今年になって資金繰りが悪化し息切れ倒産を起こしています。今後ゼロゼロ融資やコロナ特例リスケが終了することから、業界内企業の倒産リスクは増加しています。
4位 職別工事業(設備工事業を除く):103社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:とび工事、内装工事、塗装工事、鉄骨工事など
主に下請けとして工事建設の一部を担う職別工事業は、支払い遅延や粉飾の噂、破産手続きの決定といった警戒情報が発生していました。一般的に元請業者より経営基盤がぜい弱な下請業者は、昨今の労働費や燃料費の高止まり、建築資材高騰の煽りを受けやすく、コロナ禍によって公共事業が低調化したこともあり、自助努力の限界が達した中小・零細企業に倒産の危険性があると考えられます。
5位 洗濯・理容・美容・浴場業:106社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:サロン運営、クリーニング店、銭湯など
複数のエステサロン運営会社に金銭トラブルや財務状況悪化の噂が発生したほか、クリーニング店に給与未払いの情報が発生していました。特にエステサロンの金銭トラブルはネット上の書き込みからニュースに取り上げられることも多く、口コミの内容によっては顧客が離れていき事業に多大な影響を及ぼすことから、今後も注視が必要です。
6位 広告業:117社に1社が倒産する可能性あり
主な事業: 総合広告業、広告代理業など
他業種に比べ業績悪化などの情報よりも逮捕や裁判といった不祥事の情報が多く見受けられました。重大な不祥事を起こした企業が倒産につながるケースは多いため、来年以降業界内で不祥事を起因とした倒産企業の増加が予測される結果となりました。
7位 繊維工業:122社に1社が倒産する可能性あり
主な事業:製糸業、紡績業、織物業など
コロナ禍によって需要が落ち込むアパレル業界の製造部門である繊維工業が前回に引き続き10位以内にランクインしました。特にコロナ禍によって需要縮小したフォーマルウェアや、百貨店を主力販路にしたアパレルブランドに業績低迷の情報が多く発生していました。近年は海外企業との価格競争も激化していることから利益や品質の確保が難しく、要警戒予備軍となる業界不評などの情報も多数見られました。
8位 繊維・衣服等卸売業:126社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:繊維や染材など原料の輸入、既成服の卸売業など
アパレル業界の商社部門である繊維・衣服等卸売業も、繊維工業と同じく前回に引き続き10位以内のランクインとなりました。もともと競争激化により利益の確保が難しかったところに、コロナ禍の長期化により衣料品に対する需要が戻らず、支払いの延期や破産といった内容が散見されました。昨年度から歴史的なアパレル関連企業の連鎖倒産など厳しい状況が続いています。
9位 医療業:131社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:病院、診療所、訪問看護業、あん摩業、衛生検査所、臨床検査業など
医療法人や接骨院、バイオベンチャーに破産が発生していました。コロナ禍による受診控えの影響のほか、保険診療の不正請求やデータ改ざんといった不正行為による信用失墜により破産に至ったケースが散見され、今後の業界全体の倒産リスク増加が予測される結果となりました。
10位 物品賃貸業:138社に1社が倒産する危険性あり
主な事業:産業用機械リース業、レンタカー業、レンタルビデオ業、貸衣裳業など
コロナ禍による観光事業の落ち込みの影響を受けたレンタカー会社や、建設機械リース会社に業績悪化の情報が発生していました。
◆考察
多くの業界で生産・仕入・労働費などのコストが増加していますが、特に零細企業など体力のない企業が多く属する業界や、価格転嫁が難しいビジネスを展開する企業が属する業界で、資金繰り悪化の警戒情報が多く発生していました。特に、前回集計時の上位10業種のうち4業種が継続して10位以内ランクインするなど、コロナ禍による需要の落ち込みと原材料高騰のどちらの影響も受ける企業は今後も厳しい状況が続くと考えられます。
しかし、本調査で上位にランキングされた業種の企業の中にも財務状況や企業体質が良好な企業はあるため、あくまで適切な個社ごとの判断をするためにも、動向や倒産リスクをタイムリーに把握できる与信管理体制や仕組みを整えた上で取引することを推奨します。
なお、本調査で抽出・分析した要警戒企業の情報はSNSやネットニュースなど、一般消費者の目にも触れる状態でも多く発生しています。また、この情報は増加傾向にあります。取引先の倒産に繋がりかねない情報や顧客とのトラブル、反社会的勢力との関わりなど、情報をきちんとキャッチすることで、経営リスクとなる事象を未然に防ぐことが可能となります。このことからも与信管理体制や仕組みの構築は必要不可欠と言えます。
◆調査概要
調査期間:2021年12月1日〜2022年11月30日
対象企業:アラームボックスでモニタリングしていた企業のうち、10,767社
対象データ:アラームボックスで配信されたアラーム情報330,298件
◆アラームボックスについて
AI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」( https://alarmbox.jp )は、スマートフォンやPCから取引先を登録しておくだけで、取引先のリスクや状況変化を自動で知らせてくれるクラウドサービスです。収集・判断の難しいネット上の情報を、与信への影響度を診断したうえでお届けするため、インターネット上の情報を活用した「高精度」な与信管理を、「カンタン」に、「低価格」で導入できます。それにより、取引先の情報収集に関わる業務負荷を大幅に削減し、信用状況の変化をいち早くキャッチして、リスクに迅速に対応できます。
◆会社概要
会社名:アラームボックス株式会社
代表者:代表取締役社長 武田 浩和
所在地:東京都新宿区市谷本村町3-22
設立 :2016年6月
資本金:3.36億円
企業サイト: https://alarmbox.co.jp
サービスサイト: https://alarmbox.jp