アフターコロナの経済環境に移行が本格化 自動車や空運の力強い回復続く

この記事は約3分で読めます。

 3月期決算企業の2023年3月期第1四半期決算が出そろいました。株式会社東洋経済新報社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:田北浩章)では、業界担当記者が決算発表を受けて取材を行い、全上場会社について独自に今期、来期の業績予想を見直しました。

 四季報予想を集計した結果、今期(23年7月期~24年6月期、対象3607社)の予想営業利益は全産業で12.1%増加する見通しとなりました。前号の四季報夏号(23年6月発刊)との比較では、予想営業利益の合計は2.9%上振れています。

 業種別では、今期予想の営業利益額8兆6600億円と、全業種の中で最も大きい輸送用機器が前期比35.3%増予想です。半導体不足の緩和を受けて自動車の生産回復が進んでいることに円安効果も加わり、夏号比でも16.4%増と勢いを増しています。

 空運業の営業利益は、3期ぶりに黒字化した前期から倍増する見込みです。訪日客の回復など事業環境の改善がさらに進み、夏号からも46.9%増と利益額を増やしています。陸運業も鉄道大手を中心に前期比33.4%増と好調です。

 電気・ガス業の営業利益は前期比13倍超と全業種で最も増益率が高くなりました。前期に軒並み赤字だった大手電力会社が、電気料金の値上げで急回復する見通しです。

 一方で、海運業は高騰していた運賃の下落で33.3%減の大幅な減益見通し。石炭や金属の資源相場も一服し、非鉄金属は19.2%減益、総合商社を含む卸売業が11.5%減益の予想です。

 市場別では、東証プライム・名証プレミアの企業は12.1%の営業増益、IT 企業の多い東証グロース・名証ネクストの新興市場は 営業益が倍増する見通しです。

 コロナ禍の影響が一段と薄れていることや、原燃料高の価格転嫁が進んでいることが、多くの業界にプラスに働いています。一方で、当初の想定よりも中国の景気回復が遅れていることが懸念材料です。日本銀行は7月末の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策を一部修正しましたが、円安傾向が続く中で追加修正に踏み出すとの見方も出ており、金融政策を注視する必要も高まっています。

(注)業種別、市場別業績集計の算出方法

『会社四季報 2023 年4集』掲載会社で、今期・来期の予想および実績2期分がある企業の業績を集計。実績・予想とも連結決算の数値を優先。ただし、決算期変 更企業、連結決算方式変更企業、上場企業の子会社は除く。銀行、保険の営業利益は集計していない。

タイトルとURLをコピーしました