このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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イベント概要
開催概要:日本海・有明海・瀬戸内海と3つの海に面している福岡県。今回は有明海を舞台に、干潟の現状、有明海の生態系、山川海の繋がりを学び、実際に干潟に入り体験します。有明海の生物が住みやすい干潟を守っていくために何ができるかを考えていきます。
日時:7月26日(水)~7月27日(木)福岡県柳川市 1泊2日「体験学習」
10月14日(土) 福岡市早良区百道浜 販売体験
募集人数:21名(小学校5,6年生)
企画・運営:一般社団法人 海と日本プロジェクトinふくおか
<プログラム>
7月26日(水)
10:00〜 有明海の海の生き物の生態系を学ぼう
(やながわ有明海水族館)
11:30~ 有明海の海の恵みを味わおう
(夜明茶屋)
14:00~ 有明海の干潟の特徴、課題を学ぼう
(亀の井ホテル柳川)
15:00~ 干潟を豊かにする対策について学ぼう
(亀の井ホテル柳川)
7月27日(木)
4:00~ 筑後中部魚市場にて競り見学
(筑後中部魚市場)
9:00~ どろんこ干潟体験!
(ムツゴロウランド)
11:00~ オンライン配信発表会
(ムツゴロウランド)
12:30~ BBQ
(ムツゴロウランド)
10月14日(土)予定
9:00~ オリジナルムツゴロウラーメン販売体験
(早良区百道浜)
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有明海にはどんなお魚がいるの?
柳川市に到着して最初に訪れたのはやながわ有明海水族館。
この水族館の館長をしているのが現役大学生館長、亀井祐介さんで、今回の最初の講座の講師です。
高校生で館長に就任し、柳川水族館を守りながら地域の生き物を守る活動をしてきた亀井館長。高校生の頃、柳川市の浚渫工事が計画されている際、河底の砂がなくなり二枚貝が暮らせなくなり、貝に卵を産むタナゴが繁殖できないと意見書を出したそう。柳川市は貝に影響がないよう、工事内容を変更して実施。お堀が巡らされた柳川だからこそ、川から海への影響も大きいのです。亀井館長は実体験を通して、生き物を知ることが環境を守ることに繋がることを教えてくれました。水族館では80種の珍しいお魚たちを見学し、有明海のエイリアンと呼ばれているワラスボの顔を初めて見た子どもたちも興味津々。
また絶滅危惧種、準絶滅危惧種と言われている生物たちについても学びました。その中の一つがムツゴロウ。身体に青い斑点があり、目がハートになっているのが特徴です。
初めて間近で見るムツゴロウ。皮膚で呼吸ができるため干潟でも生息することができ、食料は干潟の表面部分に付着している珪藻類。ムツゴロウのためにも干潟を綺麗に保つ必要があることを実感しました。
有明海に珍魚が多いのは、多くの河川の水が流入し塩分が薄く、干満の差が大きいから。有明海の潮の満ち引きは国内でも飛び抜けて大きく、その差は最大6mにもなります。阿蘇山からきた泥が溜まった干潟と、1級河川である筑後川をはじめ、鹿島川、塩田川、六角川、嘉瀬川、矢部川など、大小100を超える河川が流入する有明海。生き物がよく育つ豊かな有明海を守っていくために、自分たちにできることは何かを学んでいきます。
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有明海の海の幸に感謝して頂こう!
お昼は夜明茶屋で有明海の海の幸をいただきます。柳川にある筑後中部魚市場は、県内三位の取扱高と有明海の珍魚介類の水揚げで、国内随一の魚種の豊かさを誇る一大卸売市場。毎朝、金子社長自ら自分の目で確認し、お魚を卸します。夜明茶屋には韓国、台湾だけでなく、フランスや欧州のお客様も大勢来店され連日満員です。多くのお客様のお目当てはムツゴロウのお刺身!社長は「ムツゴロウ」や「ワラスボ」は柳川の大事な観光資源。若い人たちが食べないと、ムツゴロウが増えても漁師はどんどん減ってしまう。この体験で実際に食べてもらい、食を通して海に関心を持って欲しいとお話がありました。初めてムツゴロウをお刺身で食べた子どもたちからは「美味しい!」「食べられるなんて知らなかった!」という声がありました。
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山川海の繋がり、干潟のヘドロ除去対策について
山川海の繋がりを教えてくださったのは干潟博士の藤井直紀先生です。
先生から配られた真っ白な紙に自由に有明海を描いてみようというお題が!なかなか筆が進まない子どもたちですが、先生がアサリは?海苔は?など質問をしてくださると「食べてる!」という声が上がり、身近な海産物と有明海との繋がりに気が付いた様子。
先生からは生物の体を作るには物質が必要で、植物プランクトンが豊富にある環境が大事だと教わりました。「森は海の恋人」、陸である山の状況が有明海の生き物を構成するのに大事な成分で、そのためには海だけでなく、山川の状態がとても大切だということが分かりました。環境が変わると人間の生活が変わる、例えば海の水温が変わると、魚種や漁獲量が変わり、お昼食べた美味しいお魚が食べられなくなるとおっしゃっていました。ただ先生からは、海が生きているかではなく、海が活かされているかを考えて欲しいというお言葉が。海を「再生」するのではなく、順応して「創成」していく。子どもたちも集中して先生のお話を聞き、豊かな海を創り出していくにはどうしたらいいかを想像し翌日の干潟体験へと繋げます。
ヘドロ除去については福岡大学教授渡辺亮一先生です。渡辺教授からはアサリの漁獲量が減っていることについて、想定される要因を教えていただきました。①ダム堆砂量の減少②下水道・高度処理の普及③フルボ酸鉄の減少があげられます。中でもフルボ酸鉄は植物プランクトンが育つのに必要なもので、アサリの食料である珪藻類が育つのに必要不可欠です。先生からはフルボ酸鉄シリカを使ったヘドロ抑制の対策について動画を見て効果を教えていただきました。子どもたちからは、自分たちではできないことを可能にする技術の力を目の当たりにし、驚きの声があがっていました。ヘドロが減っていく様子を見て、干潟のヘドロがアサリの成長を邪魔することが分かりました。
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競り体験!市場に潜入しよう!
2日目は競りを見学するために、朝4時に起床し、筑後中部魚市場へ。前日に食べた有明海のお魚が並んでいるのを見ることができました。講師に、毎日市場でお魚を買い付けている、地元スーパーまるまつの代表松岡さんにお越しいただき、地元の市場の様子を学びます。
実際に市場に入るのは参加者全員が初めて。全100種類ほどのお魚の中で有明海の珍しいお魚が20種類以上もあり、たくさん競りに出されています。子どもたちは気になるお魚をメモしていきます。特に今が旬と言われているクラゲの大きさにはびっくり!昨日は和え物で頂いたのに、実物はみんなの2人分の顔くらいの大きさであることに驚きの声があがっていました。初めて見るお魚もいっぱい。週末が土用の丑の日ということもあり、うなぎもたくさん並んでいました。
今まで見たことのないほどの数のお魚を見学しましたが、護岸工事や干拓による海の環境の変化、漁師さんの高齢化、さらには温暖化の影響などもあり、これでも漁獲量はかなり減っているという現状を知りました。
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干潟を体験しよう
ついに、実際に干潟を体験!泥が服に入り込まないように完全防備で臨みました。
実際に干潟に入ってみると想像以上に足がはまる!最初は足だけ入ってみると言っていた子も最後は楽しくて全身どろんこに!
至近距離でたくさんのムツゴロウにも出会えました!
この可愛いムツゴロウたちが住みやすい環境を守るためには干潟を綺麗に保たないといけないねと、子どもたちからは頼もしい声が聞けました。
先日の北部九州の大雨で筑後川からたくさんの川のごみが流れ着きましたが、柳川市のご協力も事前にあり、当日はごみのない干潟に入ることができました。そんな状況を柳川市役所生涯学習課山口さんに聞きながら、子どもたちは自然の影響力や山川海の繋がりをここでもしっかり感じることになりました。
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学びの発表、商品パッケージの開発!
子どもたちは2日間の学びをまとめ、オンライン配信で発表しました。
カメラの前に立つとみんな緊張の表情が見られましたが、しっかり発表することができました。テーマを「有明海の生態系」「山川海の繋がり」「有明海の課題、対策について」の3つに分け、それぞれのチームが発表しました。また、その後は「私の理想の有明海」というテーマでイラストを描きました。
このイラストは海と日本プロジェクト特別パッケージで夜明茶屋さんの「むつごろうラーメン」の商品パッケージになります。柳川市のふるさと納税で購入頂ける他、10/14(土)早良区百道浜のRKB毎日放送会館横で実施するカラフルフェス2023でも子どもたちが販売をする予定です。
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参加した子ども・保護者からの声
参加者
初めて体験することばかりでとても楽しかった。有明海のムツゴロウを食べられるなんて最初はびっくりしたけど、とても美味しかった。先生の「いろんな人にムツゴロウを知ってもらう、食べて興味を持ってもらうことは漁師さんの生活を守ることにも繋がるし、ムツゴロウを守っていくことにも繋がる」という言葉が印象的だった。
保護者
到着した子どもの顔を見たらしっかりと成長した顔つきだったし、帰ってきた子どもたちが、2日間学んだことをたくさんお話してくれて嬉しかったです。特に干潟の体験は福岡ではできないと思っていたので、貴重な体験をさせることができてうれしかったです。
<団体概要>
団体名称:一般社団 法人海と日本プロジェクトinふくおか
URL:https://fukuoka.uminohi.jp/
活動内容:福岡の海を未来につなげるために、地域の企業・団体と連携し、イベントや放送を通して海のことを考えるきっかけをつくり、行動する人を増やすための活動に取り組んでいます。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。