日本企業の「ロシア取引」社数 1年で3割減、1.1万社 水産物・中古車など一部物品は取引活発化

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帝国データバンクでは、ロシア国内の現地企業などと取引(輸出入)を行う日本企業と、関連するサプライチェーン企業について分析を行った。同様の調査は、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年3月実施に続き2回目。

<調査結果(要旨)>

  1. 日本企業の「ロシア取引」、1年間で3割減少 「対ロ輸出」関連の企業は4割減

  2. 北海道で対ロシア輸出入企業が大幅に増加 水産関連産業で目立つ

  3. 750品目に上る新たな「対ロ禁輸」追加措置、中古車輸出企業など減少の可能性も

[注] 直接取引(貿易)企業とは、帝国データバンクの調査報告書データから判明したロシア国内の企業(現地法人など)と取引を直接行う企業。二次取引先企業とは、直接貿易企業と取引関係にある企業で、ロシアと間接的な貿易関係の有無は含めていない。なお、取引関係の有無は各調査時点の情報に基づく

※調査期間:2023年3月までのデータに基づく

※調査機関:株式会社帝国データバンク

日本企業の「 ロシア取引」、1年間で3割減少 「対ロ輸出」関連の企業は4割減

在ロシアの企業と直接取引(貿易)を行う日本企業を調査した結果、2023年3月現在で国内に295社あることが分かった。また、こうした直接輸入・輸出企業と取引関係にある企業は全国に1万633社判明し、ロシアと直接・間接的に取引のある企業は全国で最大1万928社に上ることが分かった。ロシアのウクライナ侵攻が本格化した2022年3月時点と比較すると、対ロシアの直接貿易企業数は43社、関連する取引企業も4316社それぞれ減少した。この結果、ロシアと直接・間接的に取引でつながりのある企業は1年間で4359社・28.5%減少した。

影響度別にみると、原材料をロシアから仕入れたり、主力取引先がロシアをサプライチェーンに組み込んだりするなど、対ロシア貿易の動向が経営に影響を及ぼす恐れのある日本企業が3184社となり、昨年から31.6%減少した。

対ロシア輸出・輸入別にみると、特に「輸出」関連の取引で大幅な減少がみられた。「直接取引」の企業数は微減となったものの、関連する取引企業が大幅に減少し、輸出全体で4567社・41.6%減少した。取扱品目では対ロ輸出が大きく増加した中古自動車や生産設備など機械・設備が多く、2022年時点から大きな変化はみられない。取引企業のすそ野が広い大手完成車メーカーや機械メーカーが、対ロシア向け取引などを停止したことが大きく影響した。一方、対ロ禁輸制裁の対象外となる食品などでは、ロシア向け需要の高まりから取扱高が伸長したケースも見られた。

「輸入」関連の取引では149社・3.2%増加した。直接輸入を行う企業は2022年から2割超の減少となったものの、関連取引企業の増加が影響した。取扱品目ではウニやイクラ、カニをはじめとした水産物など食品に加え、建築資材向けの木材などが多くを占めた。ウクライナ侵攻によりロシアからの調達が困難となり取引を解消した企業もある一方で、水産物が対ロ禁輸制裁の対象外であることを背景に、スーパーや外食産業向けに仕入れるケースがみられた。

総じて、日本企業の対ロシア輸出入動向では、対ロ禁輸制裁対象外の品目を中心に取引活動が続いている。

北海道で対ロシア輸出入企業が大幅に増加 水産関連産業で目立つ

 地域別にみると、2022年から23年にかけて対ロシア取引社数が増加したのは「北海道」と「東北」の2地域のみだった。なかでも北海道では、水産食料品製造や生鮮魚介卸など水産関連産業の企業で増加がみられた。水産関連製品は対ロシア禁輸措置の対象品目となっておらず、22年におけるロシア産水産物の輸入額は中国やチリ、米国に次いで4番目に多い。このほか、対ロ輸入金額としては旧ソ連からロシアに移行して以後、過去最高を記録するなど、存在感が増している。こうしたなか、日本近海の不漁、極東ロシアでの生産能力向上などに加え、禁輸となった米国以外の輸出先として日本向けの輸出量が拡大したことも背景に、安価で良質な水産物を求めた関連業者の取引が増加するなどの影響もみられる。

他方、7地域では2022年から減少した。なかでも「関東」や「中部」、「北陸」では前年から30%超の大幅減少となった。半導体や化学物質など、ロシアの軍事能力強化につながるような重要品目が輸出禁止リストに加わり、精密機械、半導体といった各種部品で輸出が大幅に減少したことが影響した。

 また、特に関東や中部では、日本や欧米の大手完成車メーカーがロシア国内の生産から相次ぎ撤退したことで、数千社に及ぶ自動車産業に影響したことが要因となった。

750品目に上る新たな「対ロ禁輸」追加措置、中古車輸出企業など減少の可能性も

日本政府は、ウクライナへ侵攻を続けるロシアに対し、半導体などハイテク製品、工作機械など軍事転用可能な品目、酒類などについて輸出入を禁じるなど、欧米諸国と歩調を合わせた対ロ制裁措置に踏み切った。ロシアとの取引がリスクとして認識されつつあったことで、直接的にロシアと取引を行う日本企業は取引の縮小や解消を余儀なくされるケースも出てくるとみられたほか、こうした企業と仕入れや納入などの関係を持つ二次取引先でも代替調達先の確保といった対応を迫られるなど、相応の混乱が想定された。しかし、実際には中古車や水産物など制裁対象外の物品を中心に活発に取引された傾向が見られたほか、対ロ取引社数も1年間で3割減にとどまり、当初想定されたほどの大きな混乱は見られなかった。

欧米のグローバル企業でも、直接的な対ロ制裁の対象外である日用品や製薬分野などではロシアビジネスを続行するケースが多くみられるなど、各企業で対応の足並みが揃っていなかった。日本企業でも中国や韓国など第三国を経由したロシア産食品を取り扱うケースもあり、取引関係における完全な「脱ロシア」は、1年を経て容易ではない実態も浮き彫りとなっている。

こうしたなか、政府は8月9日以降、新たに排気量1.9L超のガソリン車や繊維製品など、対ロ輸出額の2割相当・約750品目を新たな禁輸対象とする。ロシアとの取引品目が「侵略に重要な全ての品目」へと広がるなか、日本企業の対ロ取引社数は輸出を中心にさらに減少する可能性がある。

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