1.調査の背景
本研究では「公営塾」を自治体の施策として設置している学習支援のための塾と捉えています。
公営塾は過疎化が課題となっている地域において、子どもの受験準備や補習を担うために設立されることも多く、2012年以降急増しています。これまで、地域活性化の立役者としてメディアに取り上げられたり、特定の地域を対象とした研究が行われたりしてきました。
しかし、取り組みが広がっているにもかかわらず、全国的な状況を把握できるデータが不足しているという課題がありました。
そこで本研究では、公営塾についての全国調査を実施し、自治体や国の行政、公営塾の管理運営者、公営塾のスタッフ、地域活性化に取り組むアクターの方々が参照できるような情報を収集分析し、公営塾の効果や課題を明らかにすることを目指しています。
※本研究は、JSPS科研費JP21K18501「公営塾の全国調査にもとづく効果と課題の分析」(研究代表者:林寛平)の助成を受けています。
2.調査の概要
第1弾の調査としての「全国自治体調査」は、2022年1月から3月にかけて、全国の1778自治体を対象に実施しました。
<調査方法>
質問紙は、ウェブ上で回答できるものと、PDFあるいはテキストファイルで回答できるもの(いずれも同内容)を用意し、送付は自治体のホームページの問い合わせフォーム、連絡先メールアドレス、FAX、電話によって行いました。回答はウェブ上で回答する、あるいはPDFやテキストファイルを用いて回答したものをメールあるいはFAXによって返送するという方法で実施しました。また、質問紙には何らかの理由で回答できなかったものの、メール・電話・問い合わせフォームを通じて公営塾の設置有無を回答された場合もありました。
3.調査結果の概要
●170の自治体が「公営塾」を設置
全国には1778の自治体がありますが、このうち連絡先が公開されている1773の自治体に質問紙を送付し、658の回答を得ました。うち有効回答数は653件(回答率36.8%)でした。
有効な回答があった653自治体のうち、170の自治体が「「公営塾」を設置している」と回答しました。
「「公営塾」を設置していない」と回答した自治体は421でした。これらの自治体には、追加で、「自治体として、校外学習に対する公的支援を行っているか」と尋ねました。「校外学習に対する公的支援を行っている」自治体は83あり、この中には何らかの学習支援を実施している場合、あるいは複数の施策を実施している場合が含まれていました。
「分からない」と回答した自治体は62でした。これらの自治体には、追加で、自治体が実施している取り組みの内容を尋ねました。回答からは、何らかの学習支援を実施している場合、あるいは複数の施策を実施している場合があることが分かりました。
本調査では、取り組みの内容および対象者についても分類を行いました。調査結果の詳細は、公営塾研究プロジェクトのウェブサイト(https://publicjuku.com/)をご覧ください。