ジェンダー平等を中核に据えた平等で公正で平和な未来を

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G7広島サミットで発表された首脳コミュニケに対し、公式エンゲージメントグループの一つであるWomen7(W7)ジャパンは、同コミュニケの発表を受け、見解を発表しました。

5月19日から21日にかけて、G7広島サミットが開催され、首脳コミュニケが発表されました。公式エンゲージメントグループの一つであるWomen7(W7)ジャパンは、同コミュニケの発表を受け、以下の見解を発表します。

首脳コミュニケ仮訳はこちら:https://www.g7hiroshima.go.jp/documents/pdf/Leaders_Communique_01_jp.pdf?V20230521 

W7ジャパンは、G7広島サミット首脳コミュニケが「ジェンダー」に関し特別に項目を設けG7としてのコミットメントを表明したこと、また以下の点についてG7としての取り組みを表明したことを歓迎します。

  • 長年の構造的障壁、有害なジェンダー規範、ステレオタイプ、規範、慣行を克服するためのコミットメントを表明したこと(para.42)

  • 人道的危機への対応にあたり、女性や少女、脆弱な状況に置かれている人々に焦点を当てる決意を表明したこと(para.16)

  • 「ジェンダーを変革する変化」(para.11)、「我々の社会の実質的な変革」(para.44)など、ジェンダー平等への道筋として社会的変革への言及が繰り返されていること

  • LGBTQIA+の人々の人権と自由に対するあらゆる侵害を非難し、性表現についてG7として初めて言及していること (para.42)

  • ジェンダー平等を後退させるいかなる動きに対してもG7として対抗することを明らかにしたこと

  • 紛争に関連した性的暴力及びジェンダーに基づく暴力を根絶するための取組の強化、及びサバイバー中心のアプローチの採用を明言したこと

  • 教育及びデジタルにおけるジェンダー格差を解消する措置を講じる重要性を強調していること (para.43)

  • 教育における、また教育を通じてのジェンダー平等及び女性・女児のエンパワーメントの推進に政府開発援助(ODA)を優先的に支出すること、及び就学前からのジェンダー分野の変革的な教育が打ち出されていること(para.37)

  • すべての人に働きがいがあり人間らしく(ディーセント)良質な仕事を保障し、特に女性や社会的に周縁化されたグループを誰一人取り残さない包括的な労働市場を構築するという決意を表明したこと(para.36)

  • ジェンダー不平等の主要な原因として女性のケアワークの不平等な負担を指摘し、さらにアンペイドワークやケアワーカーへの対応の必要性に言及していること(para.36)

  • 包括的SRHR(性と生殖に関する健康と権利)がジェンダー平等および女性・女児のエンパワーメントと、性的指向や性自認を含む多様性を支援する上で不可欠かつ変革的な役割を果たすこと確認したこと (para.43)

  • 全ての人が包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認していること(para.43)

一方で、W7ジャパンとしては、全体を通じて、コミットメントを実現するための具体的な財政的措置が不明確であることを始めとして、以下の点について懸念を表明するとともに更なるG7の取り組みを期待します。

  • ジェンダー平等への取組みを裏付ける財政的なコミットメントの記述が不十分です。G7としての財政的な公約を6月末の男女共同大臣会合までに行うことを求めます。

  • 2022年のG7エルマウ・サミット(ドイツ)と異なり、今年はW7への言及がなかったことは残念です。

  • 特に地域コミュニティでジェンダー平等と女性のエンパワーメントに果たしてきた重要な役割を認識し、女性団体や市民社会団体への支援強化に強く期待します。

  • 昨年のG7サミットで言及された「フェミニスト開発・外交・貿易政策」という記述が、今回のコミュニケには含まれていないことは残念です。

  • 「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダに関して、防災への言及や交差性アプローチの推進を含めた実施強化が宣言されたことは歓迎しますが、不処罰をなくす決意と努力が明確ではありません(para.43)。

  • ユニバーサルヘルスカバレッジの実現に不可欠な要素としてのSRHRを位置づけることを望みます(para34)。

  • ケアに関するジェンダー不平等を確認しつつG7として具体的な政策が示されていないことは残念です。G7として、ケアは社会的保護を保証するために十分な公的資金を提供するに値する公共の利益であるとの明確な認識に立ち、育児支援にとどまらない社会保障を強化する必要があります(para.36)。

  • LGBTQIA+に関し、昨年の「差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全な コミットメント」から、「暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」と異なる表現が用いられており、取り組みの後退につながることがないよう注視が必要です。

  • G7としてジェンダーに基づく暴力を根絶するためのサバイバー中心アプローチに基づく包括的な条約であるイスタンブール条約の批准と実施を促すことを求めます。

  • 「法の支配及び人権の尊重」の理念の下、選択議定書を含む国際人権条約の完全な批准と実施を通じてジェンダー平等実現を推進することへのコミットメントに期待します。

  • AIを含むデジタル技術の進歩が女性や女児に関する固定観念や偏見を強化するなどの有害でジェンダー平等を逆行させる影響に対し、規制の導入を含む対策を検討する必要があります (para39)。

  • コミットメントに対する適切な資金調達への言及が不十分なことに懸念を感じます。例えば、「ジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントを促進する二国間ODAの割合の増額」(para.44) はタイムフレームを明示した具体的な資金拠出が示されるべきです。

  • G7は新たにネクサス・アプローチという概念を打ち出しましたが具体的なプロセスが明確ではないため実効性のあるアプローチであるかどうかが現時点では不明確です。異なる分野の関連性を理解して包括的に取り組むためのアプローチとして有効に機能するためにはさらなる精緻化が求められます。またG7広島サミットの関連文書「G7ファクトシート:ネクサス・アプローチを通じたジェンダー主流化の促進」 の位置づけが明確ではありません。

非暴力に基づく平和の実現

W7が今回のG7広島サミットを経てG7各国に強調したいのは、平和と非暴力への     信念に基づいた取り組みの重要性です。平和とは戦争がない状態にとどまりません。暴力を受ける危険がない状態こそが平和であり、紛争においても日常生活においても非暴力によって平和を実現することが大切です。この文脈で、私たちは、今回のサミットがウクライナの武器供与を強化する機会になったことに懸念を表明します。

G7が広島サミットで公約した「すべての政策に一貫してジェンダー平等を主流化させていくため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める」ことを基軸に、ジェンダーに基づく不平等と差別の交差性と複合性に取り組み、ジェンダー平等を中核に据えて平等で公正で平和な未来を構築することが、平和な社会の実現に欠かせないことを繰り返し強調します。

PDFはこちら:

https://prtimes.jp/a/?f=d27673-58-f2f8e6ee76a67a68d29257c78abfc7a9.pdf

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