ダマ付きしにくく、目元のボリュームアップを実現するまつ毛の「18-MEA」と親和性のあるマスカラ素材を開発

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 株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は互応化学工業株式会社(本社:京都府宇治市、代表取締役社長:藤村 春輝)との共同開発により、まつ毛を含む毛髪のキューティクルの表面に存在する脂質成分である「18-メチルエイコサン酸(18-MEA)」との親和性をもたせることで、「ダマ付き」や「束付き」しにくく、まつ毛のボリュームアップが可能なマスカラ素材を開発しました。この研究成果は2023年7月16日発売の「ファシオ ウルトラ WP マスカラ (ボリューム)」(※1)に応用されます。これにより、従来の化粧持ちの良さに加え、ボリュームアップ効果をさらに高めることが可能となりました(図1)。
(※1)2023年5月16日発行ニュースリリース https://corp.kose.co.jp/ja/news/8063/

               図1 開発素材を用いたマスカラのボリュームアップ効果

図2 マスカラのダマ付き、束付きの例図2 マスカラのダマ付き、束付きの例

研究の背景

 目元を印象的に見せるマスカラは多くのメイクユーザーの必需品です。これまでは、まつ毛の量を多く見せるボリュームアップ効果のあるマスカラには、まつ毛への付着性を高める必要があるため、べたつきの指標であるタック性の高い成分が多く配合されてきました。しかし、これらを用いたマスカラはまつ毛に付着しやすい反面、不均一な付着になりやすく、ボリュームを出すために重ね付けすると「ダマ付き」や「束付き」といった好ましくない状態になりやすいという課題がありました(図2)。そこでタック性とは別のアプローチでまつ毛への

付着性を高めることで、これらの課題を解決するマスカラ素材の開発に取り組みました。

まつ毛表面の脂質成分「18-MEA」と親和性が高い皮膜形成剤の開発

 今回、まつ毛への付着性を高めるにあたり、タック性に代わる性質として注目したのが、まつ毛や毛髪の表面に存在する「18-メチルエイコサン酸(18-MEA)」という脂質成分との親和性です。この成分は、健康な毛髪のキューティクル表面を覆っていて、摩擦などで損なわれると髪の傷みの一因となることが知られている重要な成分です。この成分と類似した分子構造を素材に持たせることで、素材がまつ毛と選択的に付着することが期待できます。この構造をマスカラのボリュームアップ効果に欠かせない「皮膜形成剤」という素材に組み込むことで、新たなマスカラ素材を開発しました(図3)。
 この開発素材の付着性を評価したところ、マスカラの塗布に使われるナイロンブラシよりもまつ毛への付着力が約1.4倍大きく、本素材はまつ毛に選択的な付着性を有していることが分かりました(図4)。また、タック性について既存の皮膜形成剤と比較したところ、開発素材は物理的に付着することが少なく、狙い通りの性質をもっていることが確認できました(図5)。

                図3 まつ毛と親和性の高い開発素材の模式図

   図4 開発素材の付着性評価             図5 開発素材のタック性(べたつき)評価

開発素材を配合したマスカラのボリュームアップ効果と化粧もち効果

 この開発素材を配合したマスカラ(開発品)のボリュームアップ効果とカールキープ効果の検証を行いました。ボリュームアップ効果の検証には、通常使うようにビューラー(まつ毛をカールさせる化粧道具)とマスカラを使用し、その仕上がりの外観評価を行いました。その結果、開発品は従来品よりもボリュームアップ効果に優れており、ダマ付きや束付きも見られませんでした(図1)。
 化粧もち効果の検証には、通常使うようにビューラーとマスカラを使用し、メイク直後と10時間後のまつ毛のカールの度合いやにじみの有無を外観評価しました。その結果、10時間後もまつ毛はメイク直後のカール度合いを持続しており、代表的な化粧くずれであるにじみもないことが確認できました(図6)。

                 図6 開発素材を用いたマスカラの化粧もち効果

今後の展望

 本研究により、まつ毛のボリュームアップに伴う「ダマ付き」や「束付き」を解決する素材およびマスカラ製剤の開発に成功しました。本研究成果はまつ毛だけでなく、眉毛や毛髪にも選択的な付着効果を有することが期待されることから、アイブロウやヘアワックスなどの他製剤への応用も検討していきます。今後も当社ではお客さまのニーズに寄り添い、よりよい価値を提供すべく、独自性と有用性の高い研究開発を続けていきます。

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