赤ちゃん「10人に1人」早産~過去10年で早産児1億5,200万人【プレスリリース】

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  • 生まれてきた赤ちゃん10人のうち1人は早産で、そのうち40秒に1人が亡くなっています。

  • 早産率は、世界のどの地域でも過去10年間ほぼ変化がありません。

  • 紛争、気候変動、新型コロナウイルス感染症の影響で、あらゆる場所で女性と赤ちゃんのリスクが高まっています。

  • 早産児とその家族に対するより良いケアとともに、早産予防のための行動が早急に必要です。

北部のコロゴにある病院で、早産で生まれた赤ちゃんを抱く母親。低体重で生まれた新生児の生存率向上につながるカンガルー・マザー・ケア(KMC)を実践し、生まれたばかりの赤ちゃんを温めている。(コートジボワール、2022年3月撮影) © UNICEF_UN061北部のコロゴにある病院で、早産で生まれた赤ちゃんを抱く母親。低体重で生まれた新生児の生存率向上につながるカンガルー・マザー・ケア(KMC)を実践し、生まれたばかりの赤ちゃんを温めている。(コートジボワール、2022年3月撮影) © UNICEF_UN061

【2023年5月10日 ジェネーブ/ニューヨーク/ケープタウン】

ユニセフ(国連児童基金)など国連機関とそのパートナーが本日発表した新しい報告書によると、2020年には推定1,340万人の赤ちゃんが早産で生まれ、約100万人が早産の合併症で死亡しています。これは、全世界で早産(妊娠37週よりも前の出産)で生まれた赤ちゃんの約10人に1人に相当します。

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ユニセフらが制作した報告書「Born too soon: decade of action on preterm birth(早すぎる誕生:早産に取り組んだ10年)」は、子どもの健康と生存率の向上を妨げている早産の規模と深刻さが長く認識されておらず、「静かな緊急事態」となっていると警鐘を鳴らしています。

 

首都バグダッドの病院で、早産で生まれたため人工呼吸器をつけ保育器の中で治療を受ける生後28日のモハメドちゃん。(イラク、2023年4月30日撮影) © UNICEF_UN0835805_Ridha首都バグダッドの病院で、早産で生まれたため人工呼吸器をつけ保育器の中で治療を受ける生後28日のモハメドちゃん。(イラク、2023年4月30日撮影) © UNICEF_UN0835805_Ridha

本報告書には、早産に関する、ユニセフなどがロンドン大学衛生熱帯医学大学院と共同で出した最新の推定値が含まれています。全体として、過去10年間、世界のどの地域でも早産率に変化はなく、2010年から2020年までに1億5,200万人の赤ちゃんが早産で生まれています。

 

早産は子どもの死因の第1位であり、5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもの5人に1人以上の死因を占めています。早産で生まれた子どもは、障がいや発達遅滞が起こる確率が高く、生涯にわたって健康上の影響が残る可能性があります。

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地域、所得、人種による生存率の差

2012年に発表された同テーマにおける画期的な報告書を基に、本報告書は、早産が女性、家族、社会、経済に与える影響について包括的な見解を示しています。

 

多くの場合、赤ちゃんが生き残れるかどうかは、どこで生まれたかによって決まってしまいます。この報告書では、超早産児(28週未満)の生存率は、高所得国では10人に9人以上であるのに対し、低所得国では10人に1人しかいないことを指摘しています。また、高所得国であっても、人種、民族、所得および質の高い医療へのアクセスをめぐる不平等が、早産、死亡、障がいの可能性を決定しています。

 

テランガナ州にある病院の新生児集中治療室(NICU)で、早産により低体重で生まれた赤ちゃんを抱く母親。(インド、2022年7月撮影) © UNICEF_UN0694432_Vadlamaniテランガナ州にある病院の新生児集中治療室(NICU)で、早産により低体重で生まれた赤ちゃんを抱く母親。(インド、2022年7月撮影) © UNICEF_UN0694432_Vadlamani

南アジアとサハラ以南のアフリカは早産率が最も高く、これらの地域の早産児は最も高い死亡リスクに直面しています。この2つの地域を合わせると、世界の早産児の65%以上を占めています。また、紛争、気候変動と環境破壊、新型コロナウイルス感染症、物価上昇などの影響で、あらゆる場所で女性と赤ちゃんのリスクが高まっています。例えば、大気汚染は毎年600万人の早産の一因となっていると推定されています。早産児の10人に1人近くが、人道危機の影響を受けている最も脆弱な10カ国で生まれていることが、本報告書の新しい分析で明らかになりました。

 

10代の妊娠や妊娠高血圧腎症などの母体の健康リスクは、早産と密接に関連しています。このことから、効果的な家族計画を含む性と生殖に関する保健サービスへのアクセスを確保し、妊娠中や出産前後に質の高いケアを受ける必要性が明確に示されています。

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行動のためのアジェンダ:国によるより多くの投資・親主導の積極的活動を

この10年間にはまた、親や健康専門家、学界、市民社会などのネットワークが推進することによって、早産や死産予防に関する地域活動も活発化しています。世界各地で、早産を経験した家族のために活動する団体が、より良いケアへのアクセスや政策転換を提唱し、他の家族を支援する最前線に立ってきました。

 

5月8日から11日まで南アフリカのケープタウンで開催される国際母子 ・ 新生児健康会議に向けて、ユニセフらは、女性と新生児へのケアを改善し、早産によるリスクを軽減するために以下の行動を呼びかけています。

  • 投資の拡大: 妊産婦と新生児の健康を最適化するために、国際および国内のリソースを動員し、必要な時に必要な場所で質の高いケアが提供されるようにする。

  • 実施の促進: 母体・新生児ケアに関する確立された国家政策を実施することにより、各国の進捗目標を達成する。

  • セクターの統合: 成長段階に応じて教育を推進し、セクターを超えた共同出資を行ってより賢い経済投資を支援し、人の一生を通して気候適応への対応を強化し、緊急システムの連携とレジリエンスを向上させる。

  • 地域主導のイノベーション:地域主導のイノベーションと研究に投資し、ケアの質とアクセスの公平性の向上をサポートする。

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ユニセフのスティーブン・ローウェリエ保健担当臨時代理局長は以下のように述べています。

「すべての早産死の後には、喪失感と心の傷が残ります。この10年間、世界は多くの進歩を遂げてきましたが、早産で生まれる小さな赤ちゃんの数を減らすことも、その死のリスクを回避することも、全く進んでいません。犠牲は甚大です。今こそ、妊産婦と早産児のケアへのアクセスを改善し、すべての子どもが健康的なスタートを切り、人生を豊かに過ごせるようにする時です」

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■ 注記

用語の定義

  • 早産: 妊娠満37週未満に生児を出産すること

  • 新生児死亡: 妊娠年齢や体重に関係なく、生後0~28日以内に生児が死亡すること

  • 死産:妊娠満22週以後に胎児が死亡すること

■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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