新型コロナウイルス感染症は5月8日付で5類感染症へ移行し、法に基づく入院措置や外出自粛要請等がなくなりました。
社会・経済活動を続ける中で、今後も流行が起こる可能性はありますが、ワクチン接種と自然感染によるハイブリッド免疫を維持することで、再流行を防ぐことが可能です。
このたび東京財団政策研究所(*)では、ハイブリッド免疫の減衰と再感染を考慮できる数理モデルを用いて、2023年5月1日現在のCOVID-19の日本国内の集団免疫レベルの推移の推計を行い、その結果を Review(論考)として公表いたしました。
(*)「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」プログラム(渋谷健司研究主幹)における國谷紀良プログラムメンバー(神戸大学大学院システム情報学研究科准教授)を中心とする研究班
[Review概要]
● 今回、ワクチン接種と自然感染の双方によるハイブリッド免疫の減衰と再感染を考慮できる数理モデルを用いて、2023年5月1日現在のCOVID-19の国内の集団免疫レベルの推計を行った。
● 第8波後の2023年2月から国内の集団免疫レベルは減少傾向にあるという推計結果が得られた。この推計結果は、2022年11月および2023年2月に実施された抗体検査とほぼ合致している。
● 今後集団免疫レベルが低下したタイミングで再流行(第9波)が起こる可能性は十分考えられるが、自然感染やハイブリッド免疫による重症化予防効果は長期間持続するため、重症者数と死亡者数は第8波以上には増えないことが予想される。しかし、全体の感染者数が増えればハイリスク群への感染が増え、重症者数と死亡者数(特に間接死亡)が増えるリスクがある。
● ワクチン接種率が低く自然感染例の少ない小児の間で感染が拡大すれば、外来機能が逼迫し、全体の医療に影響を与える恐れがある。
● 5類移行後も詳細な分析を続けるためには、各地域の検体陽性率、重症率、致死率、病原体の把握等、必要なデータを限定し、医療機関に負荷のかからない方法で、頻繁かつ確実にデータ収集を行うことが重要である。
[研究プログラム]
「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」
「健康危機に対するヘルス・レジリエンスの構築に関する研究」
[執筆者]
國谷 紀良 研究協力者 (神戸大学大学院システム情報学研究科 准教授)
谷口 清州 東京財団政策研究所研究主幹
徳田 安春 東京財団政策研究所主席研究員
中村 治代 東京財団政策研究所研究員
諸見里 拓宏 東京財団政策研究所主席研究員
渋谷 健司 東京財団政策研究所研究主幹
[研究プログラム関連成果一覧]
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◇◆東京財団政策研究所の方向性◆◇
戦後75年が過ぎ、国内外を問わず、社会の大きな転換が進んでいます。この大転換は、戦後の政治・経済・社会の体制から本格的に脱皮し、市民一人ひとりが独立した人間として自らの人生と社会の充実、国家の再生、平和の維持に携わる新しい時代を日本にもたらしています。また、この新たな時代を創るための政策研究・実践のイノベーター(革新者)として、戦後の体制からの独立した政策シンクタンクが必要とされています。
当財団の研究部門は、この大転換期が求める日本再生のイノベーターを目指します。
◇◆取り組む分野◆◇
国際情勢と歴史認識への冷静な視座のもと、下記5領域で約30の研究プログラムを並行して進めています。
Ⅰ. 経済・財政、環境・資源・エネルギー
Ⅱ. 健康・医療・看護・介護
Ⅲ. 教育・人材育成、雇用・社会保障
Ⅳ. 科学技術、イノベーション
Ⅴ. デジタル革命、デジタル化による社会構造転換
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