富山の自然をコンセプトとしたサスティナブルオフィス十全化学株式会社本社屋が竣工、2023年4月26日に落成式を行いました!

この記事は約10分で読めます。
医薬品・原薬の製造・研究受託事業を行う十全化学株式会社(所在地:富山県富山市、取締役社長:廣田大輔)の本社屋の建設が竣工し、2023年4月26日に落成式が行われました。
設計監理は株式会社キー・オペレーション一級建築士事務所(所在地:東京都目黒区、代表取締役:小山光)と株式会社パーク・コーポレーション(空間デザインブランド:parkERs、所在地:東京都港区、代表取締役:井上英明)の設計共同体が行いました。

十全化学は医薬原薬の受託製造などを行っている1950年に創業された富山市の企業で、神通川と富岩運河の間に位置する工業団地の中に各種プラントのある4つの工場棟、研究棟等が展開されていた。将来の事業展開の為に各建物の機能を整理し、散らばっていた事務機能、会議室、食堂を集約した新社屋が計画されました。

富山は、南北にのびる本州の中央北部に位置し、立山連峰などの急峻な山岳地帯から流れ込む豊かできれいな水と、日本海に面した富山湾は豊かな自然の恵みと、漆器、薬、ガラスなど多種多様な文化と産業を生み出しています。豊かな森林資源と豊かな水がもたらした北前船の水運によって「富山の売薬」を生み出した薬文化が形成されました。

新社屋の設計を始める前に十全科学の各部署から年齢性別が多様な社員が集まり、数回に及ぶワークショップを重ねて、今回の新事務所のテーマは何か、現状の事務所の問題点、どのように改善していきたいか、新しい働き方のモデルを考えました。ワークショップで十全化学の重要なカルチャーとして認識されたのは、様々な部門の社員が自由な交流を大切にしていることでした。しかし現状では交流を培うため場所が足りないこと、また個人が集中して作業できる場も足りないことも分かりました。そのため新社屋では「集中(solo)」・「交流(collaboration)」 の「切り替え(switch)」が出来る場が実現できるようにオフィス全体のゾーニングを構築していきました。

また立山連峰や富山の豊かな自然を感じられる社屋にして来客に富山をアピールしたい、ここで働きたいと思わせるデザインにして新しい仲間を募りたいという要望もありました。

敷地のある街区の角には民家があり、もう一方の角は小さな公園になっているため、敷地はクランクした形状となっています。道路幅員の広い前面道路側は5層にすることができましたが、隣接した住宅への朝日を遮蔽しないように配慮しつつ、社屋自体に自ら影を作らないように南側のファサードをフラットにした結果、建物の平面形状はL字型となり、隣接した公園のオープンな空間を覆う形となりました。

周りの工場群は、機能上、窓のない高い壁で覆われています。そのためそれぞれの工場の間は配管で繋がれるものの、ヒューマンスケールで繋がる空間はほとんどありません。この社屋は工場棟とは対照的にガラスファサードとして周辺の工場群全てを見渡せるようにして、職員が働いている工場群と空間的に繋ぐことを試みています。さらには西側の神通川、東側の立山連峰とも視覚的に繋げて、富山全域との連続性を感じられるようにしました。

ガラスファサードの前にはバルコニーを設け、仕事の合間に外に出てリフレッシュできるようにしています。その結果、平滑なファサードの工場群とは対照的 な陰影のあるファサードとなり、ペリメーターゾーンの環境調整装置としても機能しています。バルコニーは庇のように夏の室内への日射を遮断しますが、日射角度が低くなる冬は日射を取得して、冬の暖房負荷を下げる事ができます。西日が入る階段部分にはグリーンスクリーンを設置して、日射を遮るようにしています。また火災時に2つある階段に何かしらの問題があった場合 でも、この全周にあるバルコニーからの救助が可能です。

春秋の中間期は積極的にバルコニーに面した窓を開けて、この地域に吹く北東からのあいの風を執務空間内に取り入れる事ができます。各階に入った風は中心の階段室を通って最上階の5Fへと抜けていきます。

ハザードマップによると、敷地は神通川の氾濫域に位置するため、社屋のメインのワークエリアやミーティングルーム、食堂などが入った建物ヴォリュームは、2Fの床が浸水しない程度に地面から持ち上げて、1Fの大部分をピロティとしました。1Fには受付と取引先と簡単な打ち合わせが出来るミーティングルーム、社屋と工場群全体を管理する総務部のワークエリアを配置しました。また十全化学の取り組みを訪問者に広く知ってもらうためのギャラリースペースも 設けました。社屋の垂直動線は、L字の平面の中心に配置して、効率よく各フロアにアクセスできるようにしています。

2Fには営業部、生産企画部、製造部、経営企画室といったメインの部署のワークエリアとしました。垂直動線が通る中央部は社員同士がコミュニケーションを取り、気分を切り替えてリラックスできるワークラウンジとしています。

3Fには本社屋で働く社員だけでなく、工場群で働く社員も集まる食堂があります。社員の満足度を高めるだけでなく、健康管理や社内外のコミュニケーションの活性化にもこの食堂は役立ちます。工場にいる社員もただ食事をして戻るだけでなく、リラックスが出来る様に、食堂内にラウンジエリアを設けました。

4Fには2Fの部署と独立した経理部、情報システム部を設けました。また社長室と応接室からは近くの環水公園と立山連峰を望む事ができます。

ライブラリーラウンジには社長や社員が薦める書籍を置いて、昼食後に社員と社長が気軽にコミュニケーションを取り、自習をすることもできます。ライブラリーラウンジからはルーフテラスに出る事ができ、気候の良い時は立山連峰景色を眺めながら、外で食事をし、散歩することもできます。夏はビアガーデンやBBQパーティを催して、社内外の交流を活性化することもできます。

5Fは社内、および取引先とのミーティングに使用される大小のミーティングルームを設けました。ELVの前のスペースは来客用のミーティングラウンジがあり、4Fの屋上テラスやその他の工場群を眺めることができます。ミーティングルームにアプローチする廊下はペリメーター側にあり、窓を開ければバルコニーに出ることができます。東側の大きなミーティングルームからは立山連峰を望む事ができます。 

ワークエリアの天井は国産針葉樹のルーバーを設置して、天井内設備機器を隠しながら木材の質感で自然で温かみのある空間としました。このルーバーは準不燃にする必要がありましたが、注入式の場合、節のないA材にする必要があります。そこでよりコストも安く素材感もある節ありのB材やC材でも準不燃にできる塗膜タイプとしていています。この塗膜タイプは認定上松材にする必要があったため、国産の唐松を採用しました。天井をルーバーとしたことで、将来的な設備更新や配線を増やすことが容易になっています。空調器は通常の天井カセットタイプをルーバーの上に設置していますが、フィルター清掃の時にはその部分のルーバーが容易に外せるようにしています。ルーバーの間隔は隙間に照明が入るように、間が100mm開くようにしました。このルーバーは窓サッシを超えて外部の軒裏へ連続して、バルコニーのために突き出したスラブの軒下を覆って寺社の屋根の手先のような、特徴的な陰影のある外観となっています。内部の天井懐から外部へ突き出している吸排気口などの設備もこのルーバーで覆われています。夜にはデッキの手すりに仕込まれた照明器具でこの軒裏の木製ルーバーはライトアップされます。ピロティの天井部分もこの木製ルーバーで覆われ、富山の薬の原料を運んだ北前船の船底のような佇まいとなっています。

風が抜けるピロティ空間には車寄せや駐車場だけでなく、薬になる木々や様々な草花が植えられ、医薬品業界の中で地球規模の視野で製品を作る薬品の原点を見つめ直すことができるようにしています。車寄せの融雪やピロティやデッキの植栽の灌水には北アルプスから神通川を通して富山湾に流れ込む地下水を井水として汲み上げて使用しています。町内会で管理している隣接した公園も同時に整備して連続させることで、社員だけでなく、近隣住民や訪問者も散策できる憩いの空間としています。

動画「十全化学の本社屋プロジェクトの歩み」

■ 施設概要

名称:              十全化学本社社屋

所在地:           富山県富山市木場町9-3 他

主要用途:        事務所

施主:              十全化学株式会社

設計:              キー・オペレーション+パーク・コーポレーション設計共同体

建築設計:        キー・オペレーション

内装設計:        パーク・コーポレーション

構造設計:        デルタ構造設計工房

設備設計:        コモド設備計画

照明計画:        LIGHTLINKS

外構計画:        パーク・コーポレーション+ふるうち設計室

施工:              日本海建興

規模・構造:     鉄骨造 地上5階

工期:              2022年2月~ 2023年3月

敷地面積:        1,134.23m2

建築面積:        578.80m2

延床面積:        1,885.26m2

■ 本プロジェクト紹介動画

 十全化学の本社屋プロジェクトの歩み

https://youtu.be/gpGjMgUe-KU 

十全化学の本社屋オンライン内覧会

https://www.youtube.com/live/daj33d5SUAE?feature=share 

十全化学の本社屋落成動画

https://youtu.be/XoTeu8yxi-g 

小山 光  Akira Koyama

代表取締役 一級建築士
英国登録建築家 英国王立建築家協会会員 

東京建築士会会員 日本建築家協会会員
千葉大学非常勤講師 桑沢デザイン研究所非常勤講師
Dip March Msc ARB RIBA

■経歴

1970                東京都生まれ

1994                東京都立大学工学部建築学科卒業

1996                ロンドン大学バートレット校建築修士課程優等修了

1998                アトリエ・コ創立

1998                東京工業大学建築学科修士課程修了

1998-2001       Studio E Architects

2002-2003       David Chipperfield Architects

2003-2005       Zara Japan Corp. 店舗開発部長

2005                (有)アトリエ・コ・アーキテクツ設立

2006                (株)キー・オペレーションに改称

■ 会社概要

名称:               株式会社キー・オペレーション

代表者:            代表取締役 小山 光 (こやま あきら)

住所:               〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-19-10 ドアーズ学芸大学4F

設立:               2005年

電話:               03-5724-0061

メール:            info@keyoperation.com

Website:         https://www.keyoperation.com 

Instagram:     https://www.instagram.com/keyoperation_architects/

Facebook:      https://www.facebook.com/keyoperation

Youtube:        https://www.youtube.com/@akirakop

タイトルとURLをコピーしました