『性的マイノリティに対する差別禁止及び同性婚に関する法制化を求める声明』
広島で開催されるG7サミットを前に、性的マイノリティ(LGBTQ等)に対する日本の姿勢に対して国内外から厳しい視線が注がれている。
昨年のG7エルマウサミット首脳宣言は、性自認、性表現あるいは性的指向に基づく差別や暴力から保護されるすべての人の権利を確保することへのG7のコミットメントを確認しており、今年のG7サミットでもその承継が強く期待されている。ところが、議長国である日本における性的マイノリティに対する法整備及び施策は極めて不十分である。
こうした状況下において、日本における性的マイノリティの方々は今も、日常的な差別や偏見、いじめ、無理解にさらされており、希死念慮を抱えている方々も後を絶たない。
今年2月、首相秘書官による差別発言が表面化し、同秘書官は更迭されたものの、この発言は岸田首相による、同性婚を認めると「社会のあり方が変わってしまう」とする発言を受けてなされている。政府与党内には、「LGBTは生産性がない」と述べた国会議員や、統一教会と密接な関係を持ち、同性婚阻止を公約に掲げて当選した国会議員等、差別意識が深く浸透し、差別的発言が繰り返されている。政権与党関係者が性的マイノリティに対する差別を助長し続け、それが放置される現状は極めて問題であると言わざるを得ない。
これに加えて、現在、トランスジェンダーに対する偏見に基づき、トランスジェンダーへの差別解消によりトランスジェンダーの人々が加害者となる性犯罪が増えるかのような誤情報が拡散されている。実態に基づかずに徒に性的マイノリティに対する偏見と差別を助長する言説に対し、強く抗議する。
今年開催された国連人権理事会による日本の人権状況に対する普遍的定期的審査(UPR)において、日本は、SOGI差別の撤廃、同性婚の法的保障を進めるよう勧告されている。
また、2022年11月、自由権規約委員会は日本に対する勧告で、初めて、同性婚を含む同性カップルの権利の実現を明示的に勧告した。
ILOによれば、雇用における性的指向や性自認等に基づく差別を禁止している国は世界80ヵ国以上、同性婚を法制化した国は30カ国以上あり、G7で同性カップルに対する法的保障をしていない国は日本だけである。性的マイノリティに対するこれ以上の差別の助長や放置はあってはならない。誰もが生きやすい平等な社会を実現するために、政府は性自認、性的指向に基づく差別を撤廃し、平等な取り扱いを実現する法整備に今こそ取り組むべきである。
ヒューマンライツ・ナウは日本政府に対し、G7サミット開催までに、実効性ある差別禁止法制定と、同性婚法制化を実現するよう、強く要請する。