一方、生活者向けの情報発信についてより一層積極的に推進するべきという回答は企業90.3%、生活者78.4%と双方多数を占めており、生活者の期待に応えた丁寧なコミュニケーションが求められていると思われます。
① SDGsの取り組みを伝える企業が生活者に期待するのは、信用85.5%、認知84.1%、好感73.2%
② 一方で、生活者の62.4%は企業が発信するSDGs情報が多く、飽きや疲れを感じると回答
③ 過去1年の間で、企業のSDGsの取り組みを1社以上覚えた人は31.2%と低調
④ 取り組みを覚えた理由は、社会にとっての重要性39.1%や、活動テーマの身近さ37.8%など
⑤ 取り組みを覚えていない理由として、情報接触機会が少ない29.5%、内容が身近に感じない28.3%、似たような情報が多い27.4%
⑥ 企業の発信対象上位は、「取引先」62.8%、「従業員」62.0%、「株主、投資家、アナリスト」54.0%と、「生活者(成人)」40.1%に比べ高い。
⑦ 企業の90.3%、生活者の78.4%は、生活者向けの発信を今後より一層積極化するべきと回答
- 調査結果
【企業設問】 SDGsの取り組みを伝える相手からの期待 (複数回答)
自社は、SDGsに関する取り組みを情報発信することによって、「伝える相手」から何を期待していますか n=138
信用、認知、好感に関する選択肢が上位を占めた。約5割が商品購入やサービス利用、就職意欲向上を期待
【生活者設問】 企業が発信するSDGs情報の課題 (項目毎に単一回答)
各企業が発信するSDGsに関する情報について課題に感じる点はありますか n=1,236
全世代で、「情報を見ることが多く飽きや疲れを感じる」割合が過半数となり、SDGs疲れの傾向が見られた。
また、68.6%が「知りたい情報が探しづらい」、55.6%が「内容が難しくて理解できない」、48.7%が「構成やデザインが見づらい」と答えており、発信する情報の検索性、伝わりやすい表現、構成・デザインに工夫の余地が見られる。
「情報が詳しく書かれていない」は56.9%、「情報の根拠や信頼性が低いと感じることがある」が52.8%と、情報の根拠や信頼性に課題を残す結果となっており、SDGsウォッシュが問題視されるなか、適切な情報発信が求められる。
※選択肢は「とてもそう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」。上記の割合は、「とてもそう思う」、「ややそう思う」の合計
【生活者設問】 企業のSDGs情報に飽きや疲れを感じる理由 (自由回答)
(「情報を見ることが多く飽きや疲れを感じる」の設問で、「とてもそう思う「やや思う」と回答した方への質問)それはどういったときに感じましたか。
発信情報のわかりやすさを求める声だけでなく、自社ならではのストーリーが伝わっていなかったり、活動内容とSDGsゴールの因果関係を理解できない生活者が一定数いることが分かった。今後は、自社ならではの活動目標や内容、成果について、簡潔かつ伝わりやすい表現の工夫が求められる。また、SDGsが“流行語”として捉えられ、なんでもかんでもSDGsという情報環境を指摘する声も見られた。
●説明が分かりにくい
・長い文章が多く簡潔にかかれていることがないので読み飽きてしまう。(30代・女性)
・書いてあることが多すぎて結局何を伝えたいのかよく分からなく、理解しようとも思えない。(20代・女性)
・情報の記載が抽象的、冗長、かつやたら文字数が多い。意味のない図も多い。具体的な目標が記載されていない。(60代・男性)
・抽象的な話が多くてわかりづらい。(50代・男性)
・実際に何をしているかが分からない。(10代・女性)
●企業差が見えない、綺麗事のように感じてしまう
・どの企業も同じようなことを発信しているから。(30代・男性)
・やっています感が垣間見える。(40代・男性)
・表向きばかりで中身がない。(60代・男性)
・各企業が積極的に取り組んでいることはわかるが、具体的にどのような成果があるのがわからないことが多い。(50代・男性)
・どの会社も綺麗事ばかり掲げているが、実際やっていることとはかけ離れていて信頼できない。(40代・男性)
●SDGsがある種の“流行語”になってしまっている
・メディアなど、あらゆる所で流行語のようにSDGsの言葉があふれているから。(30代・女性)
●メディアの報道に懐疑的
・こんなことでSDGsに貢献することになるのかと思うような事を地方ニュースでよく取り上げている。例えばある料理店でキャベツの芯も無駄にせず他の料理に利用しているとか。なんでもかんでも無駄にしなければSDGsだと勘違いしているマスコミ報道はおかしいと思う。(60代・男性)
【生活者設問】 過去1年での気持ちや行動の変化 (項目毎に単一回答)
過去1年の間で、企業のSDGsに関する取り組みを知った時に、気持ちや行動が変化したと思う企業は1社以上ありましたか。n=1,236
1社以上「企業の取り組みを覚えた」人は31.2%に留まり、新たに取り組みまで記憶している企業数は少ないことが分かった。一方、1社以上の企業に対し、「好感を持った」44.4%、「信用が高まった」37.4%、「商品を購入したりサービスを利用した」30.3%と回答しており、SDGsの情報発信が好感獲得や購買に寄与することが見て取れた。
世代別では10代の割合が最も高く、中長期的なコミュニケーションにおいて重要なテーマと言える。
【生活者設問】 企業の取り組みを覚えた要因 (複数回答)
(1社以上企業の取り組みを覚えたと回答した方への質問)その企業の取り組みについて覚えた要因は何と感じていますか。 n=385
「取り組む課題が社会にとって重要だと思うから」39.1%、「取り組みが仕事や生活に身近だから」37.8%、「取り組みの説明がわかりやすいから」33.2%が上位となった。取り組みを覚えられている企業は、課題の重要性や身近さを伝えており、わかりやすい伝え方に長けていると思われる。一方的な情報発信ではなく、ターゲットの共感を得られているか、活動の必要性を分かりやすく丁寧に説明できているかなど、生活者の立場に立った情報発信が企業に求められる。
【生活者設問】 企業の取り組みを覚えていない要因 (複数回答)
(企業の取り組みを覚えていないと回答した方への質問)その企業の取り組みについて覚えていない要因は何と感じていますか。 n=851
要因として、「情報を見る機会が少ない」29.5%、「活動が身近に感じない」28.3%、「似たような情報が多くて記憶できない」27.4%が上位を占めた。生活者にとって、企業のSDGs情報は全体的に飽和状態だが、その中でも、伝えたい相手の共感を呼ぶような、自社ならではの独自性ある情報発信が必要とされていると思われる。
【企業設問】 SDGsの情報発信対象 (複数回答)
自社は、SDGsに関する情報発信を、誰に対して行っていますか。 n=137
「取引先」62.8%、「従業員」62.0%、「株主、投資家、アナリスト」54.0%、「協業先、パートナー」51.1%と、事業を推進する上で伝える必要性が高い対象者が上位となった。「一般生活者(成人)」40.1%、「一般生活者(学生、子ども)」34.3%と、必ずしも生活者向けに情報発信されていないことが伺える。これらが、生活者が情報を理解したり、認知することが難しいと感じる一因になっていると考えられる。
【生活者設問/企業設問】 生活者への積極的な情報発信の必要性 (単一回答)
企業は(自社は)より一層積極的に一般生活者に情報発信すべきと思いますか。
生活者 n=1,236 企業 n=124
生活者の78.4%、企業の90.3%が積極化すべきという回答であり、企業は生活者を重要なステークホルダーとして位置づけていることが伺える。相手に合わせたわかりやすく、かつ正確で丁寧なコミュニケーションが求められる。
【生活者設問/企業設問】 企業が今後積極的に取り組むべき活動テーマ (複数回答)
企業が(自社が)、今後積極的に取り組むべきと感じるSDGsの活動テーマを5つ選んでください
生活者 n=1,236 企業 n=132
活動テーマ毎に、生活者と企業の回答率を比較したところ、企業は「つくる責任つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」という、事業に直接関わる項目が多かった。一方、生活者は、「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべての人に」と、格差是正への取り組みの選択が多い。生活者が企業に期待する役割を認識した上で、情報発信していくことが求められる。
- 調査概要
生活者向け調査
調査対象 : 10代~60代・各206人(男女103人ずつ)の計1,236人。人口構成比でウエイトバック集計
調査方法 : WEBアンケート
調査時期 : 2023年1月20日(金)~23日(月)
企業向け調査
調査対象 : 企業のサステナビリティ領域実務担当者を中心とする138人
調査方法 : 企業担当者へEメールでアンケートを送付し回収
調査時期 : 2023年1月10日(火)~2月14日(火)
- 調査実施主体からのコメント
株式会社オズマピーアール
各企業が発信するSDGsに関連する取り組みについて、飽きや疲れを感じる声や、情報の信頼性を疑問視する声が見られました。1年で企業のSDGsの取組を1社以上覚えた人は31.2%となっており、生活者から見て似たような情報が増えたことで、企業の取り組みが認知されづらい状況になったと推測されます。一方で、記憶した理由として企業が取り組む課題自体が重要と感じたことや、取り組みを身近に感じることがあげられました。企業が持続可能な社会づくりに貢献することはもはや当たり前の時代となっているなか、生活者の共感を獲得するために、生活者の関心との接点を見出したり、新たな気づきをもたらす情報、目標や成果を丁寧にわかりやすく伝えるコミュニケーション方法の設計が重要になっているようです。
株式会社オルタナ/オルタナ総研
今回の調査では、生活者の「SDGs疲れ」が浮き彫りになりました。これは、自社による環境・社会への取り組みを一方的に語るコミュニケーション方法に限界が来たことを示唆しています。今後は、自社の課題や問題点など、マイナス情報も含めて開示したり、生活者/市民やNGO/NPOなどステークホルダーとの対話に注力したりすることが求められます。一方、ESG(環境・社会・ガバナンス)を含めたサステナ情報開示は、取引先や株主だけでなく、より広いステークホルダーへの発信が必要です。あらゆるステークホルダーに対する情報の「一貫性」も重要です。(武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集長・森 摂)
- 調査実施主体 概要
■名称:株式会社オズマピーアール (https://ozma.co.jp/)
■代表:代表取締役社長 中尾 敏弘
■所在地:〒102-8025 東京都千代田区紀尾井町3−23
■事業:国内、海外の企業、政府関係機関、公的団体などのクライアントに企画立案から実施まで、総合的な広報(パブリックリレーションズ)サービスを提供。
■名称:オルタナ総研 (https://souken.alterna.co.jp/) ※株式会社オルタナの調査・コンサルティング部門
■代表:株式会社オルタナ代表取締役社長 森 摂
■所在地:〒153-0041 東京都目黒区駒場1-26-10
■事業:株式会社オルタナは、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」の発行、オルタナオンライン、オルタナS、オルタナZなどメディア運営のほか、サステナ経営検定(1~4級)、サステナ経営塾、オルタナ総研など「サステナ経営」に関する事業を展開。