- 江戸東京きらりプロジェクトによる「江戸東京リシンク展」の開催
江戸東京の伝統に根差した技術や産品などを新しい視点から磨き上げ、世界へと発信していく「江戸東京きらりプロジェクト」は、現代アートの分野で国内外問わず幅広く活躍する舘鼻則孝を展覧会ディレクターとして招聘し、展覧会「江戸東京リシンク展 」を実施します。本展覧会では、東京都の伝統産業事業者を舘鼻則孝のコラボレーターとして迎え、「 日本文化の過去を見直し現代に表現する」という舘鼻則孝の創出プロセスである「Rethink(リシンク)」を起点として、歴史ある伝統産業の価値や魅力を新たなかたちで提案します。昨年より継続して開催される本展覧会は、新たに制作されたアート作品や伝統産業事業者が保有する貴重な歴史的資料を、江戸時代の大名庭園の一つであり、文化財指定から2023年3月で100年を迎える特別史跡・特別名勝 小石川後楽園にて、2023年3月11日(土)9時より開催いたします。さらに、今年は「江戸東京リシンク展」開催以来(2021年から毎年開催)初となるリアルな場での一般公開を行いますので、実作品を間近にご覧いただけます。
■~江戸東京きらりプロジェクト×現代アート~「江戸東京リシンク展」開催概要 【展 覧 会 名】「江戸東京リシンク展 」 【開 催 期 間】2023年3月11日(土)~2023年3月15日(水) 9時~17時 ※最終入園:16時30分 【会 場】特別史跡・特別名勝 小石川後楽園 【告 知 URL】https://edotokyokirari.jp/news/life/edotokyorethink2023/ 【主 催】東京都・江戸東京きらりプロジェクト 【参加事業者】江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、和太鼓 宮本卯之助商店、 東京くみひも 龍工房、江戸組子 建松、新江戸染 丸久商店 |
- 「舘鼻則孝× 伝統産業事業者」コラボレーション作品紹介
江戸木版画 高橋工房
左右から異なった2種類の図案を鑑賞することができる《Duality Painting Series》と呼ばれる舘鼻則孝氏の絵画作品が木版画として表現された作品。紙を手で折っただけのシンプルな構造が視覚効果を与え、作品のコンセプトでもある二面性が示されている。4枚の版木の両面に彫られた図案を摺り重ねることで完成に至る本作は、版数以上に多くの色が摺り重ねられることで鮮やかな色彩や深みのある色味が画面に現れている。
江戸切子 華硝
伝統的な文様から現代的なデザインまで多様な表現に挑戦し続けている華硝とのコラボレーション作品は、舘鼻則孝氏が描く雷雲のモチーフが繊細な切子文様として意匠化され表現されている。勢いのある輪郭線の表情と、その中を埋め尽くすようにカットされた伝統文様の「魚子」が視覚的なコントラよって描かれた輪郭線がカットラインとして写し出されており、器の外形と切子文様が一体となることで雷雲のモチーフが表されているストを生み出している。また、ガラス器の外形は雲をイメージして舘鼻氏に。
和太鼓 宮本卯之助商店
雷鳴を神仏の来臨に擬えて、雷神の持つ雷鼓を表した作品。玩具太鼓と呼ばれる4.5寸の小さな太鼓を連結し制作された。宮本卯之助商店の職人が制作した太鼓を円形に繋ぎ、現代美術家・舘鼻則孝氏のアトリエで彩色を施して完成させた。本作に使用されている太鼓は、皮を張る前、乾燥させる工程で歪んでしまったり、割れてしまったことで、製品にすることが叶わなかった昭和50年代のもの。
東京くみひも 龍工房
本作のために新たに考案された組み方で組まれた正絹製の「角紐」は、表と裏で色が異なっている。これは、江戸の粋な美意識とも言える着物の羽裏から着想を得たもので、一見モノトーンに見える作品の差し色として豊かな表情を生んでいる。また、60ミリのピッチで正確に「結び」を入れることで、立体的なテクスチャーを与え、それらが集合することで現れる表情は作品の重要なアクセントとなっている。本展で唐門に実際に展示されている《Heel-less Shoes》は、写真とは異なり脚の付け根まであるような大型の作品で、本展のために初めて制作され公開される。
江戸組子 建松
繊細な組子細工を活かした多様なものづくりを得意とする建松とのコラボレーション作品では、組子細工による伝統的な幾何学文様と舘鼻則孝氏がアクリル絵の具で描く雷雲のモチーフがレイヤーとなって表現されている。作品に用いられた「二重麻の葉」と「桔梗亀甲」と呼ばれる2種類の文様は、古くから魔除けの意味を持つとされてきた。同様に舘鼻氏が描く雷雲も日本では古くから結界を象徴し、魔除けの意味を持つモチーフとして、それぞれの文様同士がリンクしている。
新江戸染 丸久商店
1970年代に丸久商店が発表した貴重な歴史的資料に収録されている図案に、舘鼻則孝氏が雷雲のモチーフを描き足すことで完成させた作品。注染と呼ばれる伝統技法で染め上げられた本作は、1枚の型紙にもかかわらず多くの鮮やかな色彩で同時に染め上げることが可能な技法の特性を活かした内容となっている。舘鼻氏がモチーフとして選んだのは、日本舞踊の長唄「雨の五郎」にまつわる「五郎蝶」。日本の芸事に関連する意匠は、丸久商店が代々継承してきた代表的なものでもある。
[写真]舘鼻則孝とコラボレーション作品 ©︎Edo Tokyo Kirari Project, Photo by GION
- 展覧会ディレクターを務める現代美術家 舘鼻則孝からのメッセージ
江戸東京きらりプロジェクトのコンセプトである“Old meets New”。
東京には、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和の時代にまで続く、数多くの「老舗」が存在しています。そして、そこにはさまざまな技、文化、伝統が息づいている。そうした東京の魅力を国内外に伝えたいという思いからスタートしたのが本プロジェクトになります。今回、その活動の一環として開催される「江戸東京リシンク展」に、私は、作家としてだけでなく、展覧会ディレクターとしても参画しています。私はこれまで“Rethink” という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New” と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink” が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。その点において、“Old meets New” と“Rethink” は同義であり、だからこそ、これまで数多くの伝統工芸、伝統芸能とコラボレーションする形で、過去と現在をつなぐ活動をしてきたのです。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100 年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。
- 舘鼻則孝(たてはな のりたか)プロフィール
1985年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻卒。卒業制作として発表したヒールレスシューズは、花魁の高下駄から着想を得た作品として、レディー・ガガが愛用していることでも知られている。現在は現代美術家として、国内外の展覧会へ参加する他、伝統工芸士との創作活動にも精力的に取り組んでいる。作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに永久収蔵されている。「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT, 2014)、「Future Beauty」(東京都現代美術館 ほか国際巡回 , 2012)、個展「呪力の美学」(岡 本 太 郎 記 念 館 , 2016)、個 展「Itʼ s always the others who die」(POLA Museum Annex, 2019)、個 展「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園 , 2019)他、ニューヨーク、パリ、 ベルギーなど世界各地で作品を発表。また、2016年3月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど、幅広く活動している。
- 「江戸東京リシンク展」に出展する伝統産業事業者の一覧
江戸木版画 高橋工房(えどもくはんが・たかはしこうぼう)
安政年間(1854 年~ 1860 年)に創立し、現在に至るまで伝統の木版画の制作を続けている。江戸木版画は、「絵師」「彫師」そして色ごとに色を摺り重ねる「摺師」の3者の分業で作品を作り上げていく。高橋工房は、170年前の初代から摺師を継承し、現在は3者をプロデュースする「版元」も兼ねている。
江戸切子 華硝(えどきりこ・はなしょう)
1946 年の創業以来、常に前進し新しいものづくりにチャレンジし、現在では、国賓の贈呈品やサミットなどの国際会議などの記念品として選出されている工房。カットから磨きまですべて自社の工房で行っており、デザインもすべて職人が生み出している。
和太鼓 宮本卯之助商店(わだいこ・みやもとうのすけしょうてん)
文久元年(1861年)、太鼓店として創業。太鼓・神輿の製造・販売を中心に事業を拡大。創業以来、宮本卯之助商店は祭と伝統芸能の保存と発展を使命とし、祭の持つ人々を繋げる力、世界に誇れる伝統芸能という日本の佳き伝統の継承に貢献している。
東京くみひも 龍工房(とうきょうくみひも・りゅうこうぼう)
1963 年に創業以来、組紐にあった糸づくり、染色・デザイン・組みまでを一貫して行う都内で唯一の工房。伝統的な組紐だけでなく、先代から受け継がれてきた技術とノウハウから組紐を進化させ、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは、メダルリボン・参加記念敷布を、耐久性と伸縮性を重視した純国産シルクの組布で製作した。
江戸組子 建松(えどくみこ・たてまつ)
1982年江戸川区にて創業。「組子細工」の端緒は、平安時代に生まれた日本建築の建具であり、釘を一切使うことなく、小さな木片を手作業で組み合わせてさまざまな模様を編み出すことができる。
新江戸染 丸久商店(しんえどぞめ・まるきゅうしょうてん)
明治32年、日本橋堀留町にて創業した注染製品の問屋。注染は主に浴衣や手拭に使用されてきた染色技法であり、創業以来、さまざまな柄や図案を産み出し、日本の芸事、季節のお祭りに彩りを添えている。
- 江戸東京きらりプロジェクト
江戸東京きらりプロジェクトは、江戸東京の伝統ある技や老舗の産品といった「東京の宝物」に磨きをかけ、その価値と魅力を世界に発信するプロジェクトです。本プロジェクトは、“Old meets New”をコンセプトに、伝統的な匠の技の中から新たな取組に果敢に挑戦する「モデル事業者」を「衣・食・住」の各分野から選りすぐり、新しい視点から江戸東京の伝統ある技、産品を磨き上げることでその価値を高める取組と、SNSや国内外でのプロモーション等を通じてその魅力を発信する取組を行っています。これらの取組を通じて、東京の伝統ある産業の魅力向上と持続的発展、技の継承を目指していきます。
【江戸東京きらりプロジェクト 各種リンク】
オフィシャルサイト:https://edotokyokirari.jp/
Twitter :https://twitter.com/edotokyokirari
Instagram:https://www.instagram.com/edo_tokyo_kirari
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[画像:左]江戸東京きらりプロジェクトのシンボル
- 特別史跡・特別名勝 小石川後楽園
関ケ原の合戦から29年後の寛永6(1629)年、水戸藩の祖である徳川頼房が増築を開始し、頼房の三男で「水戸黄門」として知られる二代藩主の光圀が修治し完成させた江戸時代初期の庭園。北宋の政治家・范仲淹の著した『岳陽楼記』の一節「天下に憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」がその名の由来と言われ、明の儒学者・朱舜水の助言を受けて、光圀が名付けたと伝わっている。
円月橋、西湖の堤など、随所に中国の趣向が取り入れられ、梅、桜、藤、そして紅葉と、四季を通して美しい景色を見ることができる回遊式築山泉水庭園。都立文化財9庭園の1つであり、昭和27(1952)年に文化財保護法により、特別史跡・特別名勝に指定されている。
【小石川後楽園 オフィシャルサイト】
https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index030.html
[写真:右]特別史跡・特別名勝 小石川後楽園