2023年2月には大きな節目となる登録者数1,000人を達成。YouTubeを始めるきっかけは、新型コロナウイルス感染症の影響で断たれてしまった子どもたちと調理員の交流にありました。
大きな釜に1,000人分の材料がどんどん投入され、1メートル以上あるスパテラ(しゃもじ)を使いながら混ぜていく調理員。
クリームシチューは1からホワイトソースを作り、レンコンとジャガイモの皮は機械ではなく手で何百個もむいていく…。調理員たちの日々の「ありのままの姿」が、動画に映し出されています。
2021年4月から配信を始めたYouTubeチャンネル「とよはし学校給食チャンネル」は、月1本程度の頻度で動画を投稿。
人気メニューの調理風景が見られる「○○作ってみた」シリーズ、調理員の長年の経験が垣間見える「匠の技」シリーズ、農業が盛んな豊橋らしく農家を訪ねる動画など26本(2023年2月16日現在)をアップしています。
▼【学校給食】カレーライス作ってみた!
現在、自治体が継続して給食に特化した動画を配信しているのはこのチャンネルのみです。
その立ち上げに動き出したのは、2020年秋。
新型コロナウイルスの感染拡大により、子どもたちにとって楽しみの一つだった給食の時間から声が消え、給食センターに子どもたちが見学に来たり、学校へ調理員が直接出向いて子どもたちと一緒に給食を食べたりする交流も失われた頃でした。
「子どもたちとの交流がなくなってしまったので、その代わりに何かしたい」という調理員の声から、チャンネルが誕生。
現在、豊橋市役所の保健給食課、東部と南部の学校給食センターの調理員の計7人がチームになって運営しています。
動画は、主に調理員が撮影と編集を担当。臨場感ある映像は実際の調理風景を撮影しています。
「調理員の目線で映して、子どもたちが実際に調理場に来たような映像を心がけています。年に1回しか出ないメニューの撮影は取り返しがつかないので、緊張感がありますね」と話すのは、撮影と編集を担当する東部学校給食センターの白井利和さん(44)。
動画には効果音が入ったり、できるだけ専門用語を使わずに、わかりやすい言葉で字幕やナレーションが入っていたり、「小学1年生でも楽しめる動画」になっています。
方言である三河弁を多用し、独自のカラーも打ち出しています。
白井さんオススメの動画の一つが、「柿の皮むきマシーン【匠の技】第3回」。
1つ1つ形や大きさが違う次郎柿の皮を微調整しながら素早くむいていく作業には、「見よう見まねでできないような、調理員のスキルが詰まったもの」が表れています。
▼【学校給食】柿の皮むきマシーン【匠の技】第3回
また、4万回近い視聴数がある「給食センターの1日」には、「残飯がごみ収集車で運ばれていく様子も入れています。
『たくさん食べてね』と言うだけでなく、こうしたリアルな様子を見てもらうことで、子どもたちが一口でも多く食べてくれればという思いもあります」。
▼給食センターの1日
チャンネル登録者1,000人という大きな節目に、白井さんは「始めた時はまさかこんなに増えるとは思っていませんでした。1年、2年と続けるうちに数字として現れるのはとても嬉しいです。今後、新しい企画にも挑戦したいと思っています」と意気込んでいます。
当初は、撮影に使ったスマートフォンからパソコンに動画を移すこともままならず、今でも5分ほどの動画の編集に「10時間以上かかることもある」と苦笑いの白井さん。その原動力は?
「子どもたちや学生さんからコメントが届くのが一番嬉しいですね。『こういう風に給食ができることを初めて知って、とても勉強になりました』というようなコメントを見ると、僕たちがYouTubeを通して伝えたかった思いが届いたと感じて、泣いてしまいました。まさか自分たちの動画に反応してくれるとは思っていなかった。」
編集に携わる調理員の河辺峻皓さん(40)も「コメントが励みになります」と話します。
コメント欄も丁寧に読み、質問にもできるだけ返事をしています。視聴者からのリクエストで制作した動画もあります。
豊橋市内に4つある給食センターでは、毎日75校 約3万4,000食分の給食を調理しています。
動画の中には、1,000人分の野菜を手作業で鍋に移したり、冷水で野菜を繰り返し洗ったりする、安心安全な給食作りに日々励む調理員の姿があります。
コロナ禍以前の日常にあった調理員と子どもたちとの交流は、YouTubeに形を変え、続いています。
調理員が子どもたちの健康と成長を願い、毎日心を込めて給食を作っている姿をぜひご覧ください。
【とよはし学校給食チャンネル】
https://www.youtube.com/@user-ux3kn5xc7f/featured