近年日本に侵入し分布を広げている外来種ミズワタクチビルケイソウが近畿地方で初めて安曇川でみつかりました

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北米原産の河川付着珪藻で、近年、九州や関東などの河川上流域で大繁殖して問題になっているミズワタクチビルケイソウ(学名 Cymbella janischii)が、2022年5月、琵琶湖に流入する安曇川から、近畿地方では初めて見つかりました。その観察記録を、第一発見者の一人である福井県立大学海洋資源生物学部の麦倉佳奈さん(指導教員 佐藤晋也教授)が中心になって速報にまとめ、2022年12月25日発行の日本珪藻学会誌Diatomに論文(短報)として出版しました。この研究に協力した琵琶湖博物館の大塚泰介も共著者の一人になっています。

安曇川でみつかった外来種ミズワタクチビルケイソウについて

 

ミズワタクチビルケイソウの生細胞および殻の光学顕微鏡写真ミズワタクチビルケイソウの生細胞および殻の光学顕微鏡写真

ミズワタクチビルケイソウは、細胞の長さ0.2 mmほどもある大型の珪藻です。細胞の一端から粘質の柄を出して付着し、細胞分裂とともに柄が枝分かれして伸び、時に厚さ数cmもの分厚い群体となって石の上を覆います。発達した群体は白っぽくフワフワに見え、その様子が一見して汚濁水域に発生するバクテリアの一種ミズワタ(学名Sphaerotilus spp.)の群体と似ていることから、ミズワタクチビルケイソウという和名がつけられました(以下リンク参照)。
安曇川ではまだ、ミズワタクチビルケイソウの発生は小規模にとどまっています。しかし他県ではミズワタクチビルケイソウが大繁殖した水域で、アユが著しく減少した事例が報告されています。また、付着藻類を食べる水生昆虫の多くがいなくなるとも言われています。そこで、河川利用者の皆さまのご協力も得て、県内における本藻類の分布域拡大を防いでいく必要があります。

対策について
すでに滋賀県農政水産部水産課から、ミズワタクチビルケイソウ拡大防止のために、釣り具等の消毒をお願いしています。具体的な消毒の方法については、水産試験場のウェブページまたは水産庁の資料をご覧下さい(以下リンク参照)。また、川遊びやキャンプなどで川に入られる方にも同様に、サンダルなどの消毒をお願いいたします。
なお、県内の安曇川以外の河川上流部で、ミズワタのようなものが石の上を覆っているのを発見されましたら、琵琶湖博物館あるいは水産試験場まで速やかにご報告下さい。

公表論文について
麦倉佳奈, Eldrin D.L.R. Arguelles, 鎌倉史帆, 大塚泰介, 佐藤晋也 (2022) ミズワタクチビルケイソウCymbella janischiiの近畿地方からの初記録およびその生細胞の形態観察.Diatom 38: 49-53.

リンク集

ミズワタクチビルケイソウが大繁茂した状況については、このサイトから写真や動画をご覧いただくことができます(リバーリバイバル研究所のブログ)
https://blog.goo.ne.jp/niimuray/e/10000d5095395a6197c3791c802a0bec

 

滋賀県農政水産部水産課から、ミズワタクチビルケイソウ拡大防止のための、釣り具等の消毒のお願いです。
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/suisan/325816.html

 

 

滋賀県水産試験場から、ミズワタクチビルケイソウに対する有効な消毒方法のご案内です。
https://www.pref.shiga.lg.jp/suisan-s/

 

水産庁から、同じくミズワタクチビルケイソウに対する有効な殺藻方法のご案内です。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/attach/pdf/naisuimeninfo-8.pdf

 

公表論文へのリンクはこちらです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/diatom/38/0/38_49/_pdf

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