WHOが薬剤耐性結核患者に対する新たな治療法を推奨――治療や検査の価格低減ですべての患者にアクセスを

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国境なき医師団(MSF)は、薬剤耐性結核に対する臨床試験「TB-PRACTECAL」を2017年より主導してきた。従来の治療法よりはるかに有効性が高く、治療期間も大幅に短縮できる同臨床試験の画期的な結果を受け、世界保健機関(WHO)は12月15日、多剤・リファンピシン耐性結核(MDR/RRTB)(※)感染者を対象に、新たな結核治療法の正式推奨に踏み切った。MSFはこの決定を支持する一方、より多くの患者が新たな治療を受けるためには、新しい治療法や検査にかかる価格の低減が必須だと訴えている。

服薬する錠剤を見せるウクライナの薬剤耐性結核患者=2021年6月4日 © Oksana Parafeniuk/MSF服薬する錠剤を見せるウクライナの薬剤耐性結核患者=2021年6月4日 © Oksana Parafeniuk/MSF

 

  • 従来の4分の1の治療期間に

MSFによる「TB-PRACTECAL」臨床試験では、最長24カ月間を要する従来の治療法に代わり、ベダキリン、プレトマニド、リネゾリド、モキシフロキサシンを使用した新しい結核治療法(総称BPaLM)を6カ月間使用することで高い治療効果が得られるという画期的な結果が出ている。

12月15日にWHOは、多剤・リファンピシン耐性結核(MDR/RRTB)感染者を対象に、このBPaLM療法を推奨すると明らかにした。WHOはまた、フルオロキノロン耐性のある患者に対して、同じく従来よりも短期で治療が可能となる2つ目の短期治療法、3剤併用療法(BPaL)の使用を推奨している。

WHOの『2022年 世界結核レポート』では、薬剤耐性結核患者の3人に1人しかいまだ治療を受けておらず、さらに、治療を受けた人の治療成功率は世界で60%と低調であることを強調している。今回の新たな治療法の推奨は、世界の結核治療にとって革新的な展開であり、全ての政府は、迅速にこの重要な変更を治療ガイドラインに反映の上、現場での実施につなげていくことが求められている。
 

  • 治療法導入に立ちはだかる価格の壁

 

南アフリカでTB-PRACTECAL臨床試験の診療をするMSFの医師=2018年8月5日 © Oliver Petrie/MSF南アフリカでTB-PRACTECAL臨床試験の診療をするMSFの医師=2018年8月5日 © Oliver Petrie/MSF

MSFアクセスキャンペーン 結核医療アドバイザーで医師のイラリア・モッタは、「WHOの決定は薬剤耐性結核患者にとって記念すべき出来事です。しかし、政府にとって、患者全員に改善された治療法を提供するためには、一回の治療にかかる総額を500ドル(約6万8745円)未満に抑える必要があります。現在の価格はまだ700ドル(約9万6243円)とこの額を大きく上回っているため、価格低減が必須なのです」と訴える。

「より多くの人が、より効果的で期間の短い治療を受けられるようにするには、治療法の普及に加えて、薬剤耐性結核の検査の拡大も必要です。MSFは結核診断に重要な検査機器GeneXpertのメーカーであるセフィエド社に対し、結核検査キットの価格を、現在の10〜20ドル(約1375~2750円)から、1回の検査あたり5ドル(約687円)以下にするよう求めています」と述べている。

※リファンピシンは、最も効果的な結核の第一選択薬のひとつ。別の第一選択薬であるイソニアジドとリファンピシンの両方に対する耐性を示す結核を、「多剤耐性結核(MDR-TB)」と定義している。MDR-TBとリファンピシン耐性結核は、どちらも第二選択薬による治療が必要。現在、両疾患に推奨されている治療法は同じであるため、互換性があると考えられる。WHOはまた、フルオロキノロン系抗菌薬に対する耐性が明らかになった人を対象に、2番目の短期治療法であるBPaLを推奨している。
 

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