タビラ類は飼育や釣りの対象としての人気が高いこともあり、近年、意図的な人為的移入の可能性がある本来の分布域外からの確認が相次いでいます。本来の生息外への放流は遺伝子汚染につながるということを広く知ってもらう必要があります。なお、本研究の成果は、今夏発行予定の「地域自然史と保全」誌(関西自然保護機構)に掲載されます。
■コイ科タナゴ亜科の淡水魚「タビラ」
タビラは、コイ科タナゴ亜科に属する全長6-10cmほどの日本固有の淡水魚です。タビラの中には、キタノアカヒレタビラ(東北地方)、アカヒレタビラ(関東地方)、ミナミアカヒレタビラ(北陸・山陰地方)、シロヒレタビラ(濃尾平野・近畿・山陽地方)、セボシタビラ(九州北部)の5亜種が存在します。どの亜種もオスは美しい婚姻色を呈することから、飼育や釣りの対象として人気があります。産卵期以外の時期は形態がよく似ていて見分けるのが困難ですが、ミトコンドリアDNAを分析することで識別が可能です。
どの亜種も近年の河川改修や土地改変による環境悪化によって激減しており、環境省版レッドリストで絶滅危惧種となっています。セボシタビラについては種の保存法によって希少野生動植物種にも指定され、採捕などが禁止されています。
■淀川水系における国内外来種ミナミアカヒレタビラ
ミナミアカヒレタビラは、北陸と山陰地方に自然分布します。2021年5月に大阪府淀川水系から採集されたタナゴ亜科魚類であるタビラ類5個体(写真②)について、ミトコンドリアDNA(mtDNA)チトクロームb領域の塩基配列を解析したところ、ミナミアカヒレタビラ北陸集団であることが明らかになりました。ミナミアカヒレタビラは、本来淀川水系には生息しておらず、淀川水系では国内外来種ということになります。
現時点では、淀川水系におけるミナミアカヒレタビラの分布は局所的だと考えられますが、今後、分布域拡大のモニタリングや在来種の保全策について検討する必要があります。
■在来の絶滅危惧種 シロヒレタビラへの影響
淀川水系には、シロヒレタビラという在来の亜種が生息しています。この魚は、大阪府では絶滅危惧I類、京都府でも絶滅危惧種に選定され、生息数が激減し絶滅が心配されています。交雑の恐れのあるミナミアカヒレタビラが定着すると、在来のシロヒレタビラの生息状況が悪化するリスクが懸念されます。さらに、遺伝子汚染が心配されます。
近年、タビラ類のように、タナゴの仲間の本来生息していない非自然分布域への放流が問題となっています。生息地外への放流は、遺伝子汚染による在来種の減少を招きます。同じ仲間の魚だから良いだろうと善意で考える傾向がありますが、安易な放流は絶対にしないようにお願いいたします。
■龍谷大学、岐阜大学同時プレス
本資料提供は、共同研究チームである龍谷大学、岐阜大学との同時プレスとなります。
問い合わせ先:龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
Tel 075-645-2154 E-Mail ryukoku.biodiv@gmail.com
:岐阜大学 教育学部 教授 古屋康則(研究に関すること)
Tel 058-293-2255 E-Mail koya@gifu-u.ac.jp
:岐阜大学総務部総務課広報グループ(報道に関すること)
Tel 058-293-3377 E-Mail kohositu@gifu-u.ac.jp
:滋賀県立琵琶湖博物館 学芸員 川瀬成吾(研究に関すること)
Tel 077-568-4811(代表) E-Mail de52pr@pref.shiga.lg.jp
(配信先)文部科学省記者クラブ、京都大学記者クラブ、宗教記者クラブ、滋賀県政記者クラブ、南部記者クラブ、滋賀県教育記者クラブ、大阪科学・大学記者クラブ
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