「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」を開始

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調査期間:2022年11月25日(金)~2022年12月16日(金)

NPO法人キープ・ママ・スマイリング(東京都中央区、理事長:光原ゆき)は、2018年1月~2022年12月の期間において全国の小児病棟で入院していた子どもの付き添いをしている・していた家族(母親・父親など)を対象にインターネットによるアンケート調査「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」を開始いたしました。

今回は、特に小児病棟に泊まり込んで付き添っている当事者の視点から付き添い生活の実態を詳しく調査することを目的としています。
調査結果は、2023年春を目標に「付き添い白書」という形で1冊の報告書にまとめ、国(厚生労働省)をはじめ政策立案にかかわる関係各所に届け、付き添いに関する現行制度の見直しや具体的な対応策を検討する際の資料として役立てていただくほか、当団体としましては、この調査に協力してくださった付き添い家族とともに病児とその家族の付き添い環境を見直す検討会の設置等も要望してまいります。

本調査の回答を集めるために、当団体の主事業である「付き添い生活応援パック無償配布事業」で支援した家族(2週間以上小児病棟等に泊まり込んでいた付き添い者)3,320人に協力依頼の連絡をしております。

しかし、この中に含まれない2週間未満の入院付き添い者、面会のみの付き添い者の回答も得たく、また全国で最終的に3.000人の回答を集めることを目指しておりますので、貴メディアにおかれましても本調査のことをぜひお取り上げいただき、周知にご協力いただけますよう何卒お願い申し上げます。

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▼調査実施期間 2022年11月25日(金)~12月16日(金)

▼調査対象者:2018年1月~2022年12月現在までの期間中に、0~17歳の子どもの入院に付き添っていた人
(病室の泊まり込みだけでなく、面会・通いによる付き添いも含む)

▼アンケート入口ウェブサイト 
 https://momsmile.jp/
(キープ・ママ・スマイリング公式サイト トップ画面よりアンケート回答画面に移動)
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■本調査を実施するまでの経緯
私たちは、かねてより入院中のお子さんに付き添うご家族の生活状況を把握するために複数回にわたって実態調査を行ってきました。
2019年末には聖路加国際大学と1000人規模の大規模共同調査を実施し、対象者の8割以上が泊まり込んで付き添いをしていたという結果を得ました。
このことは原則付き添いを不可とする現行制度と付き添いの実態との合わなさを明らかにしたものです。

同時に実態と合致しない現行制度の中で、医療機関や医療スタッフも付き添い者に対する生活サポートが十分にできない、人員不足にも対応できないといったさまざまな課題に直面していることも推測されました。

<参考資料>
●聖路加国際大学・NPO法人キープ・ママ・スマイリング共同実態調査
「入院中の子どもの家族の生活と支援に関する実態調査」の概要
https://momsmile.jp/7165/

一方、厚生労働省は2021年6月の国会で「付き添いが強制されている例もある」との指摘を受け、国による付き添いの実態調査に着手し、2022年8月に結果の概要について公表しました。
しかし、全国300病院/3,000人の家族を対象とした大規模調査の回答は41件(1.4%)に止まり、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会総会において報告されましたが、回答率の低さなどを理由に具体的な対応策の検討は見送られています。
この国の動きについては、11月5~7日にかけて共同通信社の配信により新聞各社においても報道され、SNS上では付き添い経験者を中心に大きな反響を呼びました。

その後、厚生労働省保険局医療課から11月9日付で「入院時における付添いの受け入れ等にかかる留意事項について」の事務連絡が発出されています。この事務連絡では保険医療機関における看護の原則、付き添い許可の条件、家族等による看護代替・看護力補充の禁止が記載されたうえで家族が付き添う場合には付き添う事由や範囲について丁寧な説明を行うことを医療機関に求めています。

<参考資料>
●厚生労働省保険局医療課
「入院患者の家族等による付添いに関する実態調査について」
調査概要、調査報告書、中央社会保険医療協議会総会議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28544.html

●厚生労働省保険局医療課 事務連絡
「入院時における付添いの受入れ等にかかる留意事項について」
https://ajhc.or.jp/siryo/20221109-1.pdf

■本調査の目的と課題の本質について
このような経緯がある中、現行制度の見直しや具体的な対応策を検討する場を求めるための調査を検討していた私たちは、今回‟付き添い入院を経験している・していた家族”の生活の実態を特に詳細に調査することによって原則付き添いを不可とする現行制度と付き添いの実態との間に矛盾があることをより一層明確にするとともに、付き添いの問題点について整理することにしました。
そのため、本調査では定量調査に加え、追加調査としてケア記録調査(付き添い者が1日に行っている子どもの世話やケアの内容と所要時間の記録)や個別ヒアリング調査も実施する予定です。

ここで強調しておきたいのは、この課題の本質は現行制度の矛盾であり、決して医療機関や医療スタッフの対応にあるのではありません。
むしろ医療スタッフは付き添い家族と同じような苦しい立場に置かれていると考えています。

欧米では子どもの分離不安の観点から「母子同室」が推奨されてきました。EACH(European Association for Children in Hospital)の「病院のこども憲章」では「病院にいる子どもたちは親または親の代わりとなる人にいつでも付き添ってもらえる権利を有する」と定めており、各国の医療機関では保護者が安心して付き添える環境を整備しています。

一方、日本においては明治期以来、病院において家族等の手に委ねられていた「療養上の世話」を看護師の手で実現するために1958年に「基準看護」が設けられ、療養上の世話が医療保険給付の対象となったことで、家族の付き添いは原則不可となりました。
しかし、看護師不足などの問題から家族の付き添いは続き、成人病棟で家族の付き添いが解消されたのは1997年頃のことだといわれています。

小児病棟においては1970年代に子どもを精神的に安定させ、治療効果を上げることを目的とする母子同室の考え方が米国から伝わったものの、従来からの療養上の世話を中心とする家族の付き添いと混同して認識されるようになり、今日においても子どもの付き添いにおける意義と目的が整理されないまま、看護師不足から家族の付き添いを続けている医療機関も少なくありません。

こうした歴史も踏まえ、付き添いの課題を根本的に解決するためには、当事者が「この制度はおかしい」と声を上げ、現行制度の見直し、子どもと家族にとっての付き添いの捉え直しを行っていくことが重要であると考えています。
私たちは、小児医療関係者とも手を携え、そのための検討会の設置を国に要望してまいります。

■調査および報告書(付き添い白書)公表・要望書提出のスケジュール

  • 2022年11月21日~23日:定量調査 プレテスト実施
  • 2022年11月25日~12月16日:定量調査 実施
  • 2023年1月:ケア記録調査 実施
  • 2023年2月:個別ヒアリング調査 実施
  • 2023年5月:「付き添い白書」(報告書)公表、厚生労働大臣に報告書および要望書を提出

「付き添い白書」(報告書)を公表する際や厚生労働省に報告書および要望書を提出する際にも情報共有させていただきますので、これらの件につきましても、貴メディアでぜひお取り上げいただき、さまざまな困難と向き合っている付き添い家族、そして医療スタッフが安心して病気の子どもの治療や療養に専念できる環境となるよう現行制度を見直し、子どもとその家族にとってよりよい付き添いの仕組みに変えていくためにお力添えを賜りますとたいへん有難く存じます。

引き続き、この課題に関心を持っていただけますよう心よりお願い申し上げます。

NPO法人キープ・ママ・スマイリング 団体概要
商号  : NPO法人キープ・ママ・スマイリング
代表者 : 理事長 光原ゆき 
所在地 : 〒104-0061 東京都中央区銀座4-13-19 銀林ビル4階
設立  : 2014年11月
事業内容: 小児病棟に付き添い入院中の家族に対する食事、食品・物品等の提供事業、普及啓発活動
URL : https://momsmile.jp
 

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