天草の海の今を知る学習イベント「磯焼けこども調査隊inあまくさ」を開催しました!

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海と日本プロジェクトinくまもと実行委員会は11月5日(土)に小学5・6年生を対象としたイベント「磯焼けこども調査隊inあまくさ」を開催しました。磯焼けの実態を調べ、天草の海の課題を広く伝えるという目的を持った子ども達は、天草の海の研究者や素潜りでトサカノリ漁をする人の話を聞き、藻場を再生する取り組みなどを学びました。通詞島の海岸では、上空からのドローンと水中ドローンのライブ映像で磯焼け対策の「遮光シート」を確認した他、「海藻おしば」と呼ばれる海藻の標本作り、海藻の養殖実験を体験しました。このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

 

  • イベント概要

・開催概要:「海のゆりかご」とも言われる豊かな日本の藻場が徐々に失われています。熊本県の天草・通詞島でも、海藻が減少し、海藻が繁茂しなくなる「磯焼け」が起きて、約15年前から特産の海藻トサカノリの獲れる量が極端に少なくなりました。今回は、磯焼けによる海の変化を見てきた素潜り漁師らの取り組みを聞き、藻場の現状や海藻について理解を深めました。
「磯焼けこども調査隊inあまくさ」は全3回のプログラム。子ども達は第1回11月5日(土)、第2回12月3日(土)の体験、第3回1月29日(日)の学習発表を通じて海を学び、海について考え、感じたことや自分の意見を広く伝えることを目標にしています。養殖実験では、約3か月間に渡って海藻が生長する経過を観察して、変化や気づきについては、iPadで文書や絵にしてまとめて情報を共有し、集大成であるYouTube生配信による学習発表(熊本教育委員会が主催するKumamoto Education Weekのプログラム)に活用します。

・第1回日程:2022年11月5日(土)
・開催場所:熊本県天草市五和町、牛深町
・参加人数:21人(男子10人、女子11人)
・協力団体:天草漁業協同組合五和支所、天草市イルカセンター、カネリョウ海藻
      熊本県水産研究センター、くまもと里海づくり協会、熊本市教育センター
 

  • 天草の海の特徴・磯焼けの現状を知る

最初の座学では、九州大学理学部附属天草臨海実験所の新垣誠司准教授が天草の海の特徴である多様性について解説をしました。続いて、素潜り漁師として通詞島で25年ほど海の変化を見てきた松本千恵人さんに体験談を聞きました。松本さんが実際に潜っている映像をモニターで見ながら、トサカノリの生息域や漁の方法などについて教えてもらいしました。年々減っているトサカノリを守る対策としての漁の制限や、胞子による受精の機会を増やす取り組み、トサカノリが減った原因の一つであるウミアザミの駆除について詳しく聞きました。

子ども達からは「トサカノリなど海藻にオス、メスがあり、胞子で増えることを初めて知った」「遮光シートを使って光合成をさせないでウミアザミを駆除する方法はすごいと思った」などの声が上がりました。素潜りの漁についても「何メートルぐらい潜るのですか」「1回にどのぐらいの海藻を採るのですか」といった多数の質問が出ました。子ども達は「磯焼け」が漁業者にとって深刻な問題であることを理解しました。

 

  • 通詞島の藻場をライブ映像で体感

実際の海はどうなっているのでしょうか。調査隊一行は、いよいよ通詞島へ。まず、トサカノリの生息域を守るための取り組みの一つである10m四方の遮光シート30枚を設置している場所を上空のドローンと水中ドローンのライブ映像で確認しました。ドローンの操縦は、4班に分かれた班の代表が体験、海の中の様子をじっくり観察する機会は初めてで「インターネットで調べてみた写真と、実際の天草の海は全く違ったので驚きました」という感想もありました。海岸で予定していた海藻の収集は、海岸に打ち上げられたものがほとんどなく、実施できませんでしたが、子ども達は、目の前の海域で磯焼け対策がなされていることを知り、現実に起こっている海の課題を認識しました。

 

  • 海藻の分類を学び、「海藻おしば」作り

海藻について理解を深める方策として、海藻サラダの試食や、海藻の標本(海藻おしば)作りにもチャレンジしました。海藻の3種(緑藻類、紅藻類、褐藻類)の分類や食品としての魅力などについて、カネリョウ海藻の出口信さんに講義をしてもらいました。海藻を食べるのは苦手という子もいましたが、あっという間に平らげる子もいて、「海藻のために働く人の努力が感じられました。その努力に応えるためにも頑張って食べていこうと思えました」という感想もありました。

実際に海藻を初めて触ったという子は、感触が「プチプチ、ヌメヌメする」ことも体験しました。「海藻おしば」は赤や緑の海藻6種類を使い、水に沈めた紙の上にピンセットで海藻を広げながら並べ、形を整えます。子ども達は、作業に没頭し、個性豊かな作品が次々と出来上がりました。次回の12月3日には、完成した海藻おしばに、今回の学びで得たことをメッセージとして添えるやり方で「オリジナル感想海藻サラダ」のパッケージをデザインする予定です。

 

  • 海藻ミリンを使って実験、生長を予測

海藻の保全方法の一つに養殖があります。今回は、トサカノリの仲間である海藻のミリンを使って、3ヵ月間にどのように生長するのかを観察します。実験の監修をした熊本県水産研究センターの竹内美彌子研究員は、トサカノリを増やすための養殖方法を研究している方で、今回は過去の実験の成功例を基にして生長が見込める条件を設定しました。班ごとに200gずつ4つの網に分けたミリンは、海に沈める深さなどを変えて経過を観察します。期間中は各網付近の海水温や照度の変化を記録します。
子ども達は、思い思いにミリンの生長について予想し、「下に垂れ下がって長く伸びる」「全体が太くなる」「重さは300gぐらいになる」などと1ヵ月後、3か月後の変化について想像を膨らませていました。
※今回の実験は、イベントでの学習用に特別に実施したものです。

 

  • 参加した子ども・保護者からの声

座学と体験学習の項目ごとに、素早くiPadに記入したり、まとめたりする子ども達の様子に講師陣、スタッフは感心しきりでした。

【子ども達の感想】
・海藻のことを学んで食べたら、普段より味があって食べられた。普段体験できないドローンの操縦ができて良かった。(小6男子)
・海藻のいる所や、海藻の種類を知ることができて、いろんな海藻が食べられてよかった。(小6女子)
・海藻の種類や今と昔の海の変化が分かりました。(小5女子)
・海藻の育ち方など、いろんなことを知りました。来月も楽しみなのでしっかり今日のことを覚えておきたい。(小5女子)

【保護者の感想】
・海藻の養殖に非常に興味を持ち、観察用にもらったワカメの新芽の観察を始めています。
・盛りだくさんのプログラムに満足し、「こんなに楽しいイベントなら毎日行きたい」と言っています。

<団体概要>
団体名称 :海と日本プロジェクトinくまもと実行委員会
URL       :https://kumamoto.uminohi.jp/
活動内容 :「海と日本プロジェクトinくまもと」は、そんな熊本県の海の魅力を伝え、海と共生するムーブメントを起こすことを目的に活動しています。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

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