【岡山大学】虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~

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2022(令和4)年 6月 15日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 

<発表のポイント>

  • 昆虫や鳥のなかには、人のように、求婚の際にオスがメスにプレゼントを渡す種類がいて、婚姻贈呈と呼ばれています。今回、私達はヤマトシリアゲという昆虫で、異なる地域に生息するオスが異なる求愛行動を示すことをあきらかにしました。
  • シリアゲムシのオスはメスに渡すプレゼントをめぐってオス同士で闘争をします。愛知に生息する集団ではオス同士の闘争に負けたオスはすぐにあきらめて別のプレゼントを探しに行きます。ところが、岡山のオスは負けても目の前のプレゼントに固執して、勝ったオスが交尾に夢中になっている間に、そのプレゼントを使って別のメスを呼んで交尾しようとしました。
  • さらに両地域のオスを実験室に持ち帰り、それぞれの子孫の求愛を観察したところ、野外観察の結果と同様の結果を示したことから、生息地の環境ではなく、愛知と岡山のオスが(文化とも言うべき)遺伝的に異なる求愛の方法を身に付けていることが世界で始めて明らかになりました。

◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区津島中、学長:槇野博史)農学部の石原凌特別教育・研究員と学術研究院環境生命科学学域の宮竹貴久教授は、プロポーズするときオスがメスにプレゼントを示して求愛するヤマトシリアゲについて、愛知と岡山の集団でオスの求愛行動が異なることを発見しました。

 シリアゲムシのオスは死んだ他の昆虫を使ってメスを呼び寄せますが、オスはメスに渡すプレゼントをめぐってオス同士が闘争します。私達は愛知と岡山のオスの求愛行動を比べたところ、愛知に生息する集団のオスはオス間闘争に負けたオスはすぐにあきらめて別のプレゼントを探しに行きます。ところが、岡山のオスは負けても目の前のプレゼントに固執して、勝ったオスが交尾に夢中になっている間に、そのプレゼントを使って別のメスを呼んで交尾しようとしました。またこの性質が遺伝的であることも明らかにしました。

 これらの研究成果は、2022年6月15日にSpringer出版会の国際雑誌「Journal of Ethology」のResearch Articleとして掲載されました。

 

図. ヤマトシリアゲにおけるオスの交尾行動の地域間比較図(左)と、餌を巡って激しく争うオスの様子(右)。オス間闘争は、腹部の末端にあるハサミ状の器官(把握器)や翅を相手に叩きつけたり、把握器で相手の腹部をはさんで持ち上げようとする図. ヤマトシリアゲにおけるオスの交尾行動の地域間比較図(左)と、餌を巡って激しく争うオスの様子(右)。オス間闘争は、腹部の末端にあるハサミ状の器官(把握器)や翅を相手に叩きつけたり、把握器で相手の腹部をはさんで持ち上げようとする

◆石原凌特別教育・研究員からひとこと
 昆虫の求愛行動にも地域で変異があり、さらに愛知と岡山の約300kmという比較的短い距離でも求愛行動の変化が見られることは特筆するべきことです。また他の生物にも“ご当地の流儀”がある可能性が十分にあると思われます。

石原凌特別教育・研究員石原凌特別教育・研究員

◆論文情報
 論 文 名:Differences in mating tactics performed by males of two local populations of the Japanese scorpionfly Panorpa japonica.
 邦 題 名:「ヤマトシリアゲの2つの地域個体群の雄が行う交尾戦術の違い」
 掲 載 誌:Journal of Ethology
 著  者:Ryo Ishihara, Takahisa Miyatake
 D  O  I:10.1007/s10164-022-00753-2
 U  R  L:https://doi.org/10.1007/s10164-022-00753-2

◆研究資金
 本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(挑戦的研究・21K199116,研究代表:宮竹貴久)の支援を受けて実施しました。

◆詳しいプレスリリースについて
 虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220615-2.pdf

◆参 考
・岡山大学農学部
 http://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/

◆参考情報
・昆虫の細菌感染密度に季節性 世界に先駆けて発見
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id459.html
・“逃げるは恥”ではない!? 戦闘で負けた後に4日間逃げ続ける昆虫について動物の行動様式の進化を数理モデルで解析
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id437.html
・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html
・ウォーキング・ブームが少子化を招く?~昆虫からの示唆~
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id561.html
・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html
・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html
・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html
・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html
・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html
・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html
・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000072793.html

 

岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)

◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 農学部 特別教育・研究員 石原 凌
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
 TEL:086-251-8339
 FAX:086-251-8388
 https://sites.google.com/view/miyatake/home

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
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 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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