会場には、本プロジェクトに取り組む機械技術科(浜)の学生15名と、精密機械工学科(郡山)の学生3名に加え、多くの地元企業関係者やメディアが集まり、日本初のプロジェクトへの注目と期待の高さがうかがえました。
今回、本プロジェクトのために導入された軽量飛行機製作キットは、米国のヴァンズエアクラフト社製RV12is型機。同社のRVシリーズ機はこれまで10,000機以上製作され、45ヵ国以上で飛行しており、欧米の学校ではSTEM教育(※1)のプログラムの一つとして活用されているベストセラー機。
https://www.vansaircraft.com/
一方、日本国内でLSA製作キットを使用して次世代航空宇宙産業にかかる人材育成や、次世代航空モビリティの発展を目標とした学生の取り組みは日本初。学生たちは、本プロジェクトの航空コンサルティングと技術支援を担当する株式会社パスファインダーの航空整備士のサポートの下、軽量飛行機の製作を通じて航空機の構造を学んだり、要素技術を習得しながら、約2年間かけて機体を組み立てていきます。
本プロジェクトの概要説明に続いて、パスファインダー社の室屋 義秀代表と2名の航空整備士が「未来のLSA活用方法」「次世代モビリティ創造」という2つのテーマで特別授業を実施。学生の輪に地元企業の関係者も交じって、一緒にLSAのさらなる活用方法や次世代モビリティのアイディアについて自由な発想でディスカッションを繰り広げ、学生たちからは「再生可能エネルギーを使う」「災害対応への活用」「LSAを無人化して飛ばして地図を作ったり天気予報に活用する」など、様々な意見が出されました。
特別授業の最後には、本プロジェクトの特別講師である室屋代表から学生たちに「機体を組み立てて飛ばすプロジェクトは日本で初めての取り組みで、とてもチャレンジング。飛行機は、いろんな人が関わって飛ぶことができる。その中でも、製造技術は浜通りの未来の産業の礎になる。このプロジェクトに関わって巣立った学生が活躍することを期待しています」とエールが送られました。
続いて行われた基調講演では、次世代航空分野の地元企業を代表して、福島県内で飛行艇型ドローンを開発している株式会社スペースエンターテインメイントラボラトリーの金田 政太CEOが『REAL(本物)LSA製作プロジェクトに次世代航空分野がよせる期待』と題して、「本物に触れる経験」と「飛行機作りの経験」の貴重さ、本プロジェクトが生み出す「波及効果」について語り、これから本物の機体製作に取り組む学生たちは熱心に耳を傾けていました。
キックオフ終了後、校内に新設された製作現場に会場を移して行われた学生の実技では、機体を組み立てる際に必要となる穴を部品に開ける作業をテクノアカデミー浜の学生が披露。緊張した面持ちで丁寧に作業に取り組む学生のすぐ隣には、仮組された垂直尾翼本体も展示され、完成後の機体がイメージできる尾翼の大きさと航空用アルミニウムでできた数々の部品に、学生も関係者も目を輝かせていました。
学生たちが、飛行機の形をしたオブジェではなく、本当に人が乗って飛ぶ飛行機に真剣に向き合い、本物を作っていくことに大きな意味を持つ日本初のプロジェクトに引き続き是非ご注目ください。
REAL SKYプロジェクト PR担当:株式会社パスファインダー
※写真クレジット 全て (c)Suguru Saito
※冒頭の写真:左から
・産業人材育成課 長尾 憲宏 課長
・テクノアカデミー郡山 精密機械工学科2年 宮森 大征さん
・テクノアカデミー浜 機械技術科2年 松下 慎之介さん
・株式会社パスファインダー 室屋 義秀 代表
・株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー 金田 政太CEO
(以下、補足情報)
●福島県立テクノアカデミー
2009年(平成21年)4月に開校した福島県立の職業能力開発短期大学校と職業能力開発校を併設した職業能力開発施設。郡山・浜・会津の3校で11の学科があり産業界に必要とされる人材育成を行っています。
●テクノアカデミー「REALSKYプロジェクト」
2020年3月に福島県の産業人材育成の充実を目的として福島県とエアレースパイロットの室屋義秀氏が代表を務める株式会社パスファインダーが相互に連携を図る協定を締結。第1弾の活動ではテクノアカデミーの学生が主体となり、レース機の吸気口のパーツを設計、製作し、機体に搭載。テスト飛行の結果、従来の部品と同等の性能を持つことが証明されました。
●REALSKYプロジェクト 第2弾
第2弾では、学生たちが本物の軽量飛行機を使って、航空機の構造に関する知識の習得やパーツの役割、製造方法、品質管理方法について学びます。
テクノアカデミー郡山 精密機械工学科:パーツごとの解析を通じて構造や流体シミュレーションを学びます。
テクノアカデミー浜 機械技術科:軽量飛行機の組み立を通して、構造の理解・要素技術の習得を目指します。
※1)STEM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4つの教育分野の総称。とはいえ、単に「科学技術」や「IT技術」に秀でた人材を生み出すことだけが目的ではなく、STEM教育の根底には「自分で学び、自分で理解していく人」を育てる狙いがあります。