ふるさと納税の件数が増えると、自治体と寄付者の接点の増加につながり、増えた分だけ自治体名が認知されます。移住定住等の、寄付金が増加する以外の間接的な効果につながる可能性もあります。さらに、ワンストップ制度の5自治体に入っておきたいと戦略的に考える自治体もいます。このような状況下で、あえて単価に着目したのは、返礼品としての付加価値や自治体への愛着度を考えたからです。地方には魅力的な地域産品が数多くあります。その魅力を価格以外で寄付者に伝えていくことは意外に難しい課題です。また、返礼品を不要でも自治体に寄付したい方もおられます。このような背景から寄付額単価の分析を行いました。
「令和3年度ふるさと納税寄付額の自治体別寄付額単価を分析」の主な結果
■1位から20位(寄付額30億円以上)
10億円から30億円の自治体グループと比較すると興味深い結果になりました。幸田町以外においては、寄付額の単価が高くないことが分かります。寄付単価の高い返礼品の自治体に寄付できる層がかなり限られると想定できます。令和3年度寄付額が一位であった紋別市の単価は約13,000円であったことも参考にすると、低単価でも高単価でも幅広く支持される返礼品をラインアップすることが大切と考えます。
一位の幸田町は寝具の有名ブランドであるエアウィーブが人気です。集中してこのブランドをポータルサイト上で丁寧に表現しており、プロモーションも積極的に行なっています。エアウィーブを返礼品として提供している自治体は他にもありますが、マーケティング力で差がついているようです。9位の富士吉田市はこちらも寝具である羽毛ふとんが主力の返礼品です。山梨はフルーツ王国でありその他産品も豊富であることから単価を押し下げているようですが、寄付額は70億円を超えています。
■1位から20位(寄付額10億円から寄付額30億円未満)
寄付額単価が高いグループとなりました。軽井沢町は自治体ブランドランキング上位であり、インターナショナルスクールのクラウドファンディングも行なっていることから返礼品のない高額の寄付が多いようです。それ以外では、旅行、家具、家電、寝具、貴金属類といった返礼品を用意する自治体が目立っています。2位の箱根町、7位の熱海市、9位の豊岡市、11位の神戸市は旅行会社の旅行クーポンを積極的に活用しています。4位の日立市、6位の大東市、8位の飯山市は地域で製造された家電が主力です。名古屋市は大都市でありながらその産地特性を活かし名バーミキュラやMTGなどの有名ブランドを返礼品で提供し始め、寄付額も拡大しています。
■1位から20位(寄付額10億円未満)
このグループは地元の方や自治体の出身者の方々が、返礼品を目的とせず純粋に多額の寄付を行なっていると思われます。東京都の自治体が50%を占めています。
■全国自治体の寄付平均単価の推移
寄付の全国平均単価は平成30年から令和3年度まで減少しています。コロナ禍においてEC化率の上昇と共にふるさと納税利用者も増加し、一部の富裕層だけではなく一般層まで裾野が広がっていると考えられます。
■今回の分析を通じて
寄付額単価はその自治体の返礼品特性によって大きな差がありました。また、1万円の寄付の返礼品数が一般的には最も多いのですが、寄付額単価を1万円ではなく2万円から4万円程度とより高く目標にした方が、寄付額の最大化を目指せると考えられます。しかし、今回の寄付額単価は1回あたり寄付の単価であり、一人当たり寄付額単価ではありません。一人当たり寄付額単価を調べることができれば、別の仮説を導き出せるかもしれません。今後、調査を行なってまいります。
<ふるさと納税総合研究所につきまして>
ふるさと納税の健全な発展を目指すべく、自治体、関係企業と連携しながら、ふるさと納税の価値や有用性を発信し、また助言を行ってまいります。
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代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
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