茨城県産ヒノキ材を使用した院内の“温かな相談場所づくり”

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茨城県地域がんセンター、救命救急センターの機能を担う筑波メディカルセンター病院(病院長 河野元嗣、所在地 つくば市:以下、当院) は、特定非営利活動法人チア・アート(理事長 岩田祐佳梨、所在地 つくば市) と協働し、2004年より利用されていた1号棟1階にある「患者家族相談支援センター」を、アートの力で改修。2023年10月23日より利用が開始されました。

竣工式でくす玉を割り、喜ぶ当院職員とアートコーディネーター竣工式でくす玉を割り、喜ぶ当院職員とアートコーディネーター

 患者家族相談支援センターは、地域がんセンターの役割としてがん相談支援センターを併設しており、「がん診療連携拠点病院」の役割として病気や治療、生活や福祉に関する様々な不安や疑問を誰でも無料で相談できる窓口です。当院では医療ソーシャルワーカーや看護師が月平均280件(対面相談93件/電話相談187件:2022年度実績)の相談を受けています。

 改修前の患者家族相談支援センターは、患者さんの往来が多い病院玄関付近に位置しているものの、カウンターと事務用品のみの雑然とした無機質な空間であったため、現場スタッフからは「利用者が話しかけやすく、面談もできるような、温もりのある空間にしたい」などの課題がありました。そこで当院は、NPO法人チア・アートの協力のもと、茨城県産ヒノキ材を使用した温かみのある空間へと改修しました。新設された面談コーナーは、ヒノキ材のパンフレットラックがパーテーションの役割を果たしており、相談者のプライバシー確保にも寄与しています。

 また、この空間は2018年にヒノキ材を使用して改修した外来エントランスとの連続性を持たせたデザインとなっており、患者さんを迎える「病院の顔」に、温かみある新たな空間が誕生しました。

今後も当院は、患者さんとご家族が、一緒に落ち着いて過ごすことのできる療養環境の整備に努めてまいります。

  • 患者家族相談支援センター概要

 位置 :1号棟1階(病院エントランス脇)

     ※当院には、患者家族相談支援センターが3カ所に設置されています。

 面積 :9.4㎡ 

 開設 :2004年6月

病院玄関からの連続性をもたせ“ヒノキ材の良さ”を活かしたデザインを取り入れたほか、照明には暖色系のペンダントライトを採用。現場スタッフからは「見た目だけではなく、適度な照明により書類などの視認性が向上した」などの声が聞かれています。

キャビネット等の事務用品が雑然と置かれていた空間には、L字型ソファを用いた相談スペースを設置。ヒノキ材を使用したパンフレットラックは通行者からの視線を遮断する効果もあり、利用者のプライバシーが保たれる空間となりました。

相談者以外の方も利用できるヒノキ材のベンチ相談者以外の方も利用できるヒノキ材のベンチ

付近には相談者以外も利用できるベンチを設置。小児科外来が隣接しているため、ベビーカーを押した親御さんが利用している場面も見受けられます。

冊子がとりやすくなったパンフレットラック冊子がとりやすくなったパンフレットラック

角度をつけたパンフレットラックは資料が取りやすくなったため「資料の減りが早くなった」との声が現場スタッフから聞かれています。

  • 担当者コメント

改修を担当したアートコーディネーター(中央2名)と、医療福祉相談課スタッフ(両端)改修を担当したアートコーディネーター(中央2名)と、医療福祉相談課スタッフ(両端)

■医療福祉相談課より

「ここで相談できますよ」という雰囲気を醸し出している空間になったと感じます。利用された方からは「カフェのようだ」や「可愛らしい空間」とのお声をいただいているほか、パンフレットラックは、利用者が冊子を手に取りやすく、在庫の減りが早くなっていると感じているとともに、相談時の適度な目隠しの役割も果たしており、相談時やがんの治療中に使用するケア帽子を選ぶ際など、患者さんへのプライバシーの配慮にも繋がっています。

2018年に改修したヒノキ材を用いた病院エントランス2018年に改修したヒノキ材を用いた病院エントランス

■アートコーディネーターより

改修にあたり、プライバシーを保つこと、声をかけやすいことの両方を実現する空間が求められました。そこで、2018年に改修した病院エントランスのデザインを引き継ぎ、相談スペースにヒノキ材の目隠しを設置することで、患者さんが落ち着いて相談でき、かつパンフレットやポスターなどの情報にもアクセスしやすい空間をデザインしました。今回、職員の患者さんを思う気持ちを形にするお手伝いができ、大変嬉しく思います。

  • 参考資料

■特定非営利活動法人チア・アート

2018年より医療者と芸術側をつなぐ、病院のアート・デザインコーディネートを担っています。医療現場のリサーチや職員との対話のプロセスを通してアートワークショップや空間のデザインを企画・運営し、院内の環境改善に取り組んでいます 。現在、アートコーディネーターとして岩田祐佳梨、菅原楓、井本雅乃が活動中。

・チア・アートHP:https://www.cheerart.jp

■筑波メディカルセンター病院のアート・デザインプロジェクト

当院では、2007 年より筑波大学芸術系との協働でアート・デザインによる療養環境の改善に継続的に取り組んできました。 展示や患者さん参加型のアートワークショップ、待合室、病院エントランスの空間デザイン、滑り止めのトレーシートのデザインなど、患者さん、ご家族、職員をエンパワメントする活動を実施しております。 2020年度は、新型コロナウイルス感染症による院内の緊張感の高まりに対し、患者さんやご家族に安心を感じてもらうこと、職員への敬意を表現することを目的に、職員の働く姿の写真展 「病院のまなざし展」を院内で実施したほか、2021年には当院初となるクラウドファンディングにより緩和ケア病棟内家族控室を改修し、2022年7月より利用を開始しています。

・改修した緩和ケア病棟家族控室:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000070192.html

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