大腸癌組織や唾液検体中のフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fn)を菌株レベルで検出する手法を開発

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 協同乳業株式会社(本社:東京・中央区/社長:宮﨑 幹生)の松本光晴主幹研究員らは、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の日暮琢磨講師、中島淳教授、理化学研究所の服部正平客員主管研究員、須田亙チームリーダーらとの共同研究で、大腸癌の増悪化に関与しているFusobacterium nucleatum(フソバクテリウム ヌクレアタム,以下F. nucleatum)に関する菌株(※1)レベルでの研究を大幅に進展させました。具体的には、同一大腸癌患者の大腸癌組織および唾液から分離したF. nucleatumが同一菌株に由来することを全ゲノム解析で確認しました。さらに、生きた菌を分離・培養しなくても、凍結保管していた大腸癌組織や唾液検体中に存在するF. nucleatumを菌株レベルで検出する新たな手法(ジェノタイピング法)を開発しました。この研究成果は、American Society for Microbiology(アメリカ微生物学会)の発行する学術誌「Microbiology Spectrum」に10月11日にオンライン公開されました。

≪本研究のポイント≫ 

 ●当研究チームは先の研究で、口腔内のF. nucleatumと同一菌株が大腸癌組織から検出されることを発見し、口腔内F. nucleatumが大腸癌の増悪化に関与している可能性を強く示唆すると共に、大腸癌とF. nucleatumの研究は菌株レベルで実施することの重要性を提唱しました(Gut. 68:1335-1337, 2019) 。しかしながら、そのためには大腸癌患者の大腸癌組織や唾液から生きたF. nucleatumを分離・培養して各分離株のゲノムを個別に解析する必要があり、熟練した分離・培養スキルに加え、時間およびコスト面でも課題がありました。

●本研究では、F. nucleatumを含む約半数の細菌が保有する免疫機構であるCRISPR-Casシステム(※2)に着目し、過去に感染を受けたファージ(※3)の遺伝子断片が保存されている遺伝子領域(CRISPR)を標的に、菌株毎の感染歴の違いをPCRで増幅されるDNA断片長の違いとして検出することで、菌株レベルで識別する方法(ジェノタイピング法)を確立しました。

 ●これにより、生菌の分離や、分離した菌株の全ゲノム解析を行わなくても、凍結保存された唾液や大腸癌検体を用いて、検体中のF. nucleatum菌株をPCRで簡単かつ迅速に確度高く同定することが可能になりました。

●この方法で大腸癌患者の唾液および大腸癌組織から同一菌株と判定されたペア(5ペア)をそれぞれ全ゲノム解析した結果、これらの菌株は同一菌株由来であることが確認できました。すなわち、大腸癌患者の口腔内と癌組織に同一菌株由来のF. nucleatumが存在することを証明しました。これは、口腔内の一部のF. nucleatumが大腸癌増悪化に関与していることを見出した世界初の発見となります。

●本研究成果は、大腸癌の予防や再発防止などの研究に飛躍的な進歩をもたらすことが期待されます。

≪原著論文情報≫

著者:Yumi Shimomura, Yutaka Sugi, Aiko Kume, Wataru Tanaka, Tsutomu Yoshihara, Tetsuya Matsuura, Yasuhiko Komiya, Yusuke Ogata, Wataru Suda, Masahira Hattori, Takuma Higurashi, Atsushi Nakajima, Mitsuharu Matsumoto

論文タイトル:Strain-level detection of Fusobacterium nucleatum in colorectal cancer specimens by targeting the CRISPR–Cas region.

雑誌名:Microbiology Spectrum

DOI: https://doi.org/10.1128/spectrum.05123-22

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