アイシン高丘では約21万トンのCO2を排出しています。その内訳は、鋳鉄を溶解する工程からの排出が約60%を占め、カーボンニュートラルに向けた技術革新が必須となる中、石炭由来のコークスを燃料としているキュポラへの対応が急務となっていました。キュポラの燃料となるコークスは使用時のみでなく、原料炭採掘、生成過程においてもCO2を排出、またその生産量は減少傾向にあり将来的な安定調達に懸念もありました。これら状況への対応策の一つとして、他エネルギーへの置換の検討を開始し、食品廃棄物のヤシ殻で製造したバイオ成型炭を世界で初めて開発、キュポラ操業への影響ならびに製品への影響について実証評価を繰り返し行った結果、石炭由来コークスの代替燃料として置換できることを確認しました。
本実証では、冷間強度や発熱量、熱間反応性などの特性や製造条件をはじめとする技術データを蓄積し、キュポラ用途に適したバイオ成型炭の実用化を目指しています。バイオ成型炭の開発は、コークスを使用するキュポラ溶解の課題であるCO2排出量削減はもちろん、廃棄物として捨てられているヤシ殻を有効活用することによって廃棄物の発生量を減らすことができ、環境対策効果が期待できます。現在のところ、置換率50%の実証評価は完了しており、25年度中の量産開始を予定、今後連続操業を繰り返しながら、更なる置換率の向上をめざします。
アイシングループでは、カーボンニュートラル実現に向け、生産と製品の両軸でさまざまな取り組みを行っています。生産面では、2035年の生産カーボンニュートラル達成を目標に掲げ、「動力源・熱源・無駄レス」「クリーンエネルギー」「廃棄物ゼロをめざした資源循環」を軸に、これからも環境や社会をより良いものにする技術開発を促進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
■参考:公式サイト アイシンのカーボンニュートラル実現に向けた取り組み
※1当社調べ。無酸素で加熱、コークス化することで均一品質・高強度・高熱量を実現し、生産実証において50%置換を可能とした生産技術について。
※2キュポラ…鋳鉄鋳物を製造するための直立する鋳鉄溶解炉
※3コークス…石炭を乾留(蒸し焼き)して炭素部分だけを残した燃料