<調査結果(要旨)>
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日本企業の「対中輸出」9000社、5年前から80%増 食品産業が約1割を占める
※帝国データバンクの調査報告書データから判明した中華人民共和国(中国)国内の企業(現地法人など)と取引を直接行う企業。なお、中国本土のほか「澳門(マカオ)」「香港(ホンコン)」両特別行政区が対象
※同様の調査は、国内の全輸出企業を調査した2019年以来4年ぶり2回目
※調査機関:株式会社帝国データバンク
日本企業の「対中輸出」9000社、5年前から80%増 食品産業が約1割を占める
在中国の企業に製品やサービスなどを販売(提供)する、対中国への輸出を直接・間接的に行う日本企業を調査した結果、2023年8月現在で国内に9270社に上ることが分かった。2019年調査時点で判明した5045社に比べ、4225社・83.7%増加した。このうち、香港特別行政区(以下、香港)向けに輸出を行う企業は2639社判明し、19年から1183社・81.3%増加した。
中国向けの輸出は、中国経済の減速に加え、先端半導体の製造装置などの品目で輸出規制が実施されるなど先行きの不透明感が強い。ただ、円安相場が輸出に有利に働いていることに加え、14億人を有する中国市場の大きさを背景に、中国向け輸出を行う企業が増加した。
中国への輸出企業を関連産業別にみると、最も多いのは自動車や家電など電化製品、製造機械など「機械・設備」で、全体の約4割を占めた。中国の最終組み立て工場へ向けた部品供給などのほか、中国市場への完成品輸出・販売などが多くみられた。次いで、漁業や農業など一次産業から、食品加工・販売までを含めた「食品産業」が7.8%で続き、このうち鮮魚卸や水産加工など水産品関連を主業とする企業の割合が1.8%だった。取り扱い品目は、和牛や日本酒、健康・美容系飲料など清涼飲料水、生鮮食品など多岐にわたり、水産品では干しナマコやホタテなど多様な食品の取り扱いがみられた。なお、食品産業以外にも、中国での日本産食品の需要増を背景に、異業種ながら食品を取り扱うケースもあった。
また、自社の販売額のうち中国向け販売(輸出)が占める割合は、全産業平均(対象:約2000社)で1社あたり平均42.8%に上った。なかでも、近年の日本食ブームを背景に中国向けの販売が伸びる食品産業では1社平均で50%を超え、「機械・設備」など他産業に比べて割合が大きいほか、全業種に比べても高く、中国向けへの比重が高い傾向がみられた。
日本産食品への高い知名度や購買力などを背景に食品の輸出先として重視される香港では、食品産業の占める割合が12.0%・316社と1割を超えた。このうち、水産品関連を主業とする企業は香港向け輸出企業全体の2.1%・56社と少ないものの、販売額のうち香港向けが占める割合はいずれも大きかった。
東京電力福島第一原発の処理水放出をめぐり、中国政府は日本産の水産品について全面輸入停止措置に踏み切った。これまで中国政府や香港政府が行ってきた、10都県に限定した水産品や食品の輸入制限から踏み込んだ厳しい内容で、現状では取引正常化のメドが立たない状況が続く。
中国への食品輸出をめぐっては、従前から中国国内で人気の高いナマコなどのほか、日本食ブームを背景に日本産食品の対中輸出が近年大きく拡大してきた。実際に、中国へ直接・間接的に輸出を行う食品関連企業は、対中輸出全9270社のうち700社超におよび、1社あたりの取引における中国向けの割合も50%を超える企業が多いなど、「最大の得意(販売)先」として中国市場の存在感は大きい。そのため、国内の食品輸出業者に加え二次・三次取引などを含めたさらに多くの企業で甚大な影響が及ぶとみられ、国内市場や代替輸出先の確保といった措置が急がれる。