(本資料は、Quantinuumが2023年8月2日に公開した資料の抄訳です)
このパートナー3社は、新しい技術論文 “Applicability of Quantum Computing to Oxygen Reduction Reaction Simulations(酸素還元反応シミュレーションへの量子コンピューティングの適用性)”の中で、白金系触媒の表面における酸素還元反応(以下、ORR)を精度良くモデル化したことを報告しています。
ORR は、燃料電池で水素と酸素を水と電気に変換するプロセスの化学反応であり、プロセスの効率に限界があります。ORR は比較的時間がかかり、かつ大量の白金触媒を必要とするため、この反応に関わる根本的なメカニズムをより良く理解することには大きな関心と価値が置かれてきました。
3社のコラボレーションチームは Quantinuum のHシリーズ量子コンピュータを使用し、この重要な化学反応をより深く理解するために産業用ワークフローにおける量子コンピューティングの適用可能性を実証しました。3社は、今後、このような産業上の課題に対処する量子コンピューティング活用について、さらなる協業を予定しています。
BMW グループの研究技術担当バイスプレジデントPeter Lehnert 博士は次のように述べています。
「循環型で持続可能なモビリティのため、新素材を探求し、効率的な製品を生み出し、将来の優れたユーザー体験を実現することが私たちに求められています。 加速する量子コンピュータの恩恵を受けながら材料特性を化学的な精度でシミュレートすることができることは、この重要な領域における技術革新のスピードを加速する後押しとなるでしょう」
BMWグループは、世界の自動車市場におけるパイオニアとして、量子コンピューティングがもたらす根本的な変革の可能性と、新素材の研究における重要性を認めています。最も基本的な電気化学プロセスのひとつに量子コンピューティングを用いて初めて取り組み、精度良くシミュレートすることは、持続可能なエネルギー転換に向けた重要な一歩であり、燃料電池、金属空気電池、およびその他の製品の能力向上に恩恵をもたらします。
エアバス社の中央研究・技術担当バイスプレジデント Isabell Gradert は、次のように述べています。
「燃料電池エンジンで動作する可能性のある ZEROe 航空機のような、持続可能で水素を動力源とする代替機を探求する上で、この研究が私たちに利益をもたらすことは明白です。この研究は、量子コンピューティングが航空事業に求められる規模感で成熟していることを裏付けるものです」
エアバスは、再生可能エネルギーから生成される水素は、飛行中に CO2 を排出しないため、低炭素航空機の動力源として有望な候補であると考えています。同社は以前、ZEROe 実証機に搭載する水素を動力源とする燃料電池推進システムの試験を数年以内に開始する計画を発表しました。同社は、2035年までに水素を動力源とする世界初の民間航空機を開発し、市場に投入するという高い目標を掲げています。
Quantinuum のチーフ・プロダクト・オフィサーである Ilyas Khan(イリアス・カーン)は、次のように述べています。
「BMWグループとエアバス社をご支援する機会に恵まれたことを大変嬉しく思います。両社はいずれの業界においてもリーダー的企業であり、量子コンピューティングが将来の持続可能なモビリティを推進する上で極めて重要な役割を果たすことを認識しています。今回の先駆的な研究で、Quantinuum は世界で最も技術的に進んだ二つの企業の産業ワークフローに量子コンピューティングを統合する方法を実証し、量子コンピューティングの利用が最も期待される分野の一つである材料科学の問題に取り組んでいます」
研究チームは、ORR を理解することで、燃料電池の性能を向上させ、製造コストを削減する可能性のある代替材料を特定するのに役立つ知見が得られることを期待しています。ORR のような化学反応を精度良くモデル化することは、関係する化学的メカニズムの量子的性質のため、古典的なコンピューターには困難な課題です。
Quantinuumについて
Quantinuum は、Honeywell Quantum Solutions の量子コンピュータ・ハードウェア事業と Cambridge Quantum のミドルウェアおよびアプリケーション事業の合併により誕生した、世界最大級の統合型量子コンピューティング企業です。「科学主導・企業駆動」(science led, enterprise driven)をテーマに、量子コンピューティングと化学、サイバーセキュリティ、金融、最適化などのアプリケーションの開発を加速しています。エネルギー、物流、気候変動、健康などの分野で、世界で最も差し迫った問題を解決するためのスケーラブルで商業的な量子ソリューションを創造することに重点を置いています。米国、欧州、日本に拠点を有し、350 名以上の科学者を含む 480 名以上の従業員を擁しています。
詳細は https://www.quantinuum.com をご覧ください。
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BMWグループについて
BMW、MINI、ロールス・ロイス、BMW Motorrad の4つのブランドを擁する BMW グループは、自動車と自動二輪車の世界有数のプレミアム・メーカーであり、プレミアム金融サービスおよびモビリティ・サービスも提供しています。BMW グループの生産ネットワークは、世界30ヵ所以上の生産拠点で構成され、140ヵ国以上にグローバルな販売ネットワークを展開しています。
BMW グループは2022年に全世界で約240万台の乗用車と20万2,000台以上の自動二輪車を販売しました。2022会計年度の税引前利益は、売上高1,426億ユーロに対して235億ユーロでした。2022年12月31日時点の BMW グループの従業員数は14万9,475人です。
BMW グループの成功は、長期的な思考と責任ある行動に常に基づいて来ました。BMW は早い段階から将来への道筋を定め、サプライ・チェーンから生産、そしてすべての製品の使用段階まで、一貫して持続可能性と効率的な資源管理を戦略的方針の中心に据えています。
エアバスについて
エアバスは、安全でつながった世界のために、持続可能な航空宇宙を開拓します。エアバスは、航空宇宙、防衛、コネクテッド・サービスにおいて、最も効率的かつ技術的に進んだソリューションを提供するため、常に革新を続けています。民間航空機では、エアバスは最も近代的で燃料効率の高い旅客機を提供しています。また、エアバスは防衛・安全保障分野における欧州のリーダーであり、世界有数の宇宙事業者でもある。ヘリコプターでは、エアバスは世界で最も効率的な民間および軍用回転翼機ソリューションを提供しています。