本報告書は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定に貢献する主要な多国間気候基金(MCF)からの気候変動対策資金が、「現在子どもたちが経験している著しく増大している気候危機に対応しているか」「子どもにとって重要な社会サービスのレジリエンス(強靭性)を強化しているか」「変革の担い手として子どもたちの能力を強化しているか」という3つの基準を用いて評価したものです。
● 報告書「Falling short: addressing climate finance gap for children」(子どものための不十分な気候変動資金ギャップへの対応)
https://www.plan-international.jp/about/pdf/2306_climatecrisis.pdf
本報告書では、気候変動危機の矢面に立たされている子どもたちが、気候変動への資金提供の約束から見過ごされていることを指摘し、世界の主要な気候変動基金のうち、子ども対策も含めた活動を支援していると分類できるのは、わずか2.4%に過ぎないことを明らかにしています。2023年3月までの17年間にMCFが気候変動関連プロジェクトに拠出した資金のうち、3つの要件をすべて満たしたのはごく一部(2.4%)で、その額はわずか12億ドルであるものの、この数字は過大評価である可能性が高く、さらに少ない資金ですべての要件を満たそうとしている可能性があることも指摘しています。
気候危機の影響を受けている10億人の子どもたち
子どもへの気候変動の影響の深刻さを表したユニセフの指標「子どもの気候危機指数」によると、現在世界中で10億人以上の子どもたちが、気候危機の影響により極めて高いリスクにさらされています。
子どもたちは、水や食料不足、水系感染症、身体的・心理的トラウマに対して不均衡な影響を受け脆弱な立場に置かれています。これらは全て、極端な気象現象や、緩慢に発生する気候変動の影響と関連しており、天候パターンの変化により、子どもたちは、教育、保健医療、清潔な飲料水といった基本的サービスにアクセスできない状況に陥っているのです。
報告書では、子どもたちが、積極的なステークホルダーや変革の担い手として認識されるよりも、むしろ脆弱なグループとして見なされることが多いことを危惧しています。女の子のニーズや参加を考慮した活動内容は、MCFの投資額(25億8000万ドル)のわずか7%にしか相当していないのが実情です。
気候変動活動家としてユニセフの活動に参加しているバルバドス出身のマリア・マーシャルさん(13歳)は、「『子どもたちは未来』と言われていますが、私たちの未来は、現在意思決定をしている大人たちの行動によって形作られ、誰も私たちの声には耳を傾けません。この報告書が示すように、気候変動対策に資金を提供することは義務ですが、その資金をどのように使うかが重要です。そこには、子どもたちのニーズと視点が含まれるべきです」と述べています。
子どもたちの声を反映した資金拠出を!
私たち、子どもの環境権イニシアティブ (CERI)連合は、多国間気候基金や、国際社会の気候変動資金の提供者に対し、適応ギャップに迅速に対処するよう求めます。特に、気候変動による「損失と損害」を支援するための資金拠出が必要とされています。この資金は、子どもたちの幸福と、彼らを支援する重要な社会サービスに優先的に分配されるべきです。また、気候変動の影響により最も脆弱で高いリスクにさらされている子どもたちに手を差し伸べ支援することに重点を置くことを訴えます。
バングラデシュのプラン・インターナショナルの国統括事務所長カビタ・ボースのコメント
「緊急かつ効果的な投資は、気候変動に適応するための鍵であり、子どもたち、特に短期的・長期的な影響を強く受けやすい女の子にとって重要です。子どもたちのことをほとんど考慮していない現在の支出を改める必要があります」
セーブ・ザ・チルドレンの気候変動担当グローバル責任者ケリー・トゥール氏のコメント
「すでに不平等や差別の影響を受けている子どもたちは、気候変動を引き起こす原因である可能性は最小限であるにもかかわらず、最も大きな気候変動の影響を受けています。子どもたちのニーズと視点を考慮することで、気候変動資金をこうした不公正に取り組むために拠出することができるようになります。これまで不十分であった気候変動への取り組みを変えることは可能であり、変えなければなりません。気候変動危機に真正面から取り組むためには、子どもの権利を対策の中心に据え、子どもたちの声が確実に届くようにしなければなりません」
ユニセフの気候アドボカシー担当特別顧問であるパロマ・エスクデロ氏のコメント
「すべての子どもたちが、少なくとも1つの、そして多くの場合複数の気候災害にさらされています。保健や水といった重要な社会サービスを気候変動に適応させるために必要な資金や投資は不十分であり、子どもたちの緊急かつ固有のニーズをほとんど把握できていないのが実情です。この状況を変えなければならない。気候危機は、子どもの権利の危機であり、気候資金、これを反映したものでなければなりません」
プラン・インターナショナルは、女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組む国際NGOです。世界75カ国以上で活動。世界規模のネットワークと長年の経験に基づく豊富な知見で、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができる世界の実現に取り組んでいます。 *日本のプラン・インターナショナルは創立40周年を迎えました。 https://www.plan-international.jp/special/40th/ |