研究タイトル
Exploring the benefits of full-time hospital facility dogs working with nurse handlers in a children’s hospital
(小児医療施設にホスピタル・ファシリティドッグが看護師のハンドラーと常勤する新たな有用性の探索)
掲載誌:PLOS ONE
URL:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285768
著者:村田夏子(1) 鈴木恵子(1) 森田優子(1) 美濃部晴美(2) 水本篤(3) 瀬戸嗣郎(2)
(1)認定特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ、 (2)静岡県立こども病院、 (3)関西大学
研究の特徴
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こども病院でファシリティドッグが入院患者の「終末期の緩和ケア」や、痛さ恐怖を伴う「治療や処置への協力」を向上させることを、体系的に初めて示すことができました。
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ファシリティドッグと看護師資格のあるハンドラーが常勤するケースについて、医療スタッフを対象に網羅的、かつ量的に調査したこのような研究は、海外でも類を見ないものです。
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日本に限らず国内外のこども病院で、ファシリティドッグが研究を通じて広く普及することを目指し、論文はオープンアクセスの国際科学誌であるPLOS ONEに、また使用したデータや解析コードはOSF (Open Science Framework, https://osf.io/hxktc/ ) で公開しました。
研究概要
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全医療職スタッフ626名を対象に匿名質問紙を用いて調査しました。回答は431名(69%)から得られ、そのうちファシリティドッグの活動を観察したことがある270名を分析対象としました。質問項目9つは、5段階評価(5が最も評価が高い)で回答され、自由記述欄も設けました。
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最も高く評価されたのは「終末期の緩和ケア」でした。回答者の73%(56/77名)が効果を “よく感じる” もしくは “常に感じる” と回答しました。また効果を “全く感じなかった” とする回答が0名だったことも特徴でした。
同様に、処置や検査の時に「患者の協力が得られやすい」ことも高く評価されました。回答者の73%(140/193名)が効果を “よく感じる” もしくは “常に感じる” と回答しました。処置の例として自由記述欄では、骨髄穿刺や手術室への同行など、侵襲性の高い処置が挙げられました。
また「終末期の緩和ケア」も「患者の協力が得られやすい」のどちらも、回答者の職種、臨床経験年数、犬の飼育経験の有無による統計的な差はみられませんでした。
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今後、さらに小児医療施設における常勤型の活動の有用性を調べることで、よりタイムリーで効果的な介入策の考案や、実施施設のニーズを満たす最適な運用方法の特定に繋がり、ファシリティドッグの医学的な効果が解明されると期待できます。
最も高く評価された項目「終末期の緩和ケア」の自由記述欄には、回答者270名中23名(9%)から記入が得られました。論文 Table4 に掲載したコメントの一例です
■ファシリティドッグ・プログラムとは
医療施設など、ある特定の施設に常勤し活動するために、専門的なトレーニングを受けた犬のことです。シャイン・オン!キッズでは、2010年日本初のファシリティドッグ・プログラムを静岡県立こども病院との協働事業として導入し、現在国内の4つのこども病院で活動しています。看護師として臨床経験のあるハンドラーと共に入院中の子どもたちを関わるため、触れ合い活動はもちろん、採血など痛みや不安を伴う検査や処置の付き添い、手術室等への同伴、ベッド上安静の際に添い寝を行うなど、活動は多岐に渡っています。
■シャイン・オン!キッズとは
小児がんや重い病気の子どもたちとそのご家族を心のケアのプログラムで支援。ファシリティドッグ・プログラム(動物介在療法)、ビーズ・オブ・カレッジ プログラム(アート介在療法)、キャンプカレッジ(小児がん経験者のコミュニティ運営)、シャイン・オン!コネクションズ(オンラインで心のケアや学習支援アクティビティを提供)、シャイン・オン!フレンズ(小児がん経験者のWEBコミュニティ)などを運営。2006年設立、2023年4月現在全国28病院にて活動中。https://ja.sokids.org/