当法人は、子どもと家族が地域社会から孤立することによって生じるさまざまな課題を解決するために、「里親制度」を活用した取り組みを行っております。このたび2022年の活動報告書「ANNUAL REPORT 2022」を発行いたしましたのでご報告いたします。(https://www.sosjapan.org/pdf/annual-report_2022.pdf)
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「SOS子どもの村JAPAN」とは
オーストリアに本部を置き130以上の国と地域で活動する国際NGO「SOS Children’s Villages International」の日本法人(福岡市:理事長 福重 淳一郎 小児科医 正職員29名)です。世界共通のスローガン「すべての子どもに愛ある家庭を」に基づき、家族と暮らせない子どもを「子どもの村福岡」の里親家庭に迎えいれ、地域とのつながりを大切にしながら育てています。
また、子どもと家族が地域社会から孤立することによって生じるさまざまな課題を解決するために、福岡市から事業を受託し、子どもと家族がどのような状況であっても、寄り添い、かかわり続ける支援を実施しています。特に、虐待防止の切り札として注目されている「里親による子どもショートステイ」の取り組みを通じて、子どもと家族が地域社会から孤立せず、安心して子育てができる地域社会づくりを目指しています。
「SOS子どもの村JAPAN」の活動内容について
当法人の活動内容・事業については以下の通りです。
1.親と離れて暮らす子どもたちの養育
・「子どもの村福岡」
里親家庭制度を活用しながら、里親と専門家が子どもたちをチームで育てながら、里親不調とならないための取り組みを行なっています。
2.虐待予防の取り組みと地域の家族への支援
・「子どもの村福岡」での一時保護事業
・「子どもの村福岡」での子どもショートステイ
・子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」(地域の家族への相談事業)
・ヤングケアラー相談窓口
3.人材養成
・家庭養育に関わる専門職向けの研修
4.広報活動・情報発信
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活動成果報告書「ANNUAL REPORT 2022」について
1.親と離れて暮らす子どもたちの養育
「子どもの村福岡」で生活をする子どもたち
2022年の1月、3人の子どもたちが新たに「子どもの村福岡」の里子として迎えられました。現在、3軒の育親家庭で合計11人の子どもたちが生活をしています。
1年を振り返ると、夏休み期間中には、村内で新型コロナウイルスによる感染症が広がり、ファミリーアシスタント(養育支援スタッフ)による育親家庭への支援が一時的に中止されました。この間、子どもたちは閉鎖された空間で過ごすこととなり、育親とともに強いストレスにさらされることになりました。
しかし育親を中心とした、ファミリーアシスタント、ファミリーソーシャルワーカー、村長やセンタースタッフによる一貫したチーム養育により、子どもたちは安定した生活基盤のなかで過ごすことができています。
またコロナ禍の影響により、今津地域との連絡協議会が開催できない期間が続いていますが、米や野菜などをいただいたり、子どもたちが地域行事に参加するなどして、交流は続いています。
今後、一人一人の子どもたちが成長するにつれ、「なぜ、ここ(子どもの村福岡)にいるのか?」ということを改めて知り、自分自身を見つめ直す機会(真実告知、ライフストーリーワーク)や、そのためのプロセスが子どもたちのアイデンティティの構築や形成において重要になってきます。
今後も、チーム養育の充実を図りつつ、関係機関や専門家と連携しながら、一人一人の子どもたちの成長に寄り添ってまいります。
2.虐待予防の取り組みと地域の家族への支援
・子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」(地域の家族への相談事業)
現在、正職員・非常勤職員含め5名体制で業務を行なっています。傾向としては、きょうだい児そろっての相談が増えたほか、来所できない家族や子どもにアウトリーチによる相談を実施した1年でした。
子ども・親、それぞれの声に耳を傾けて時間を大切にする
厳しい問題を抱える家族の相談が続いていますが、さまざまな角度から支援する「家族まるごと支援」の視点を持ち、同居する家族・きょうだいへも目線を向け、相談支援を行っています。きょうだい児それぞれに1人ずつ担当者がつくことで、子どもたちの心理的安定を担保しながら、相談業務にあたっています。
信頼関係を築きながら、さまざまな支援につなげていく
相談を継続しているなかで、子ども家庭支援センターまで来所することが難しいケースがあります。経済的理由、親の心身の不調により外出もままならないほど、ハイリスクな家庭環境下で生活する家族もいるのですが、私たちはつながりを断つことがないよう、丁寧かつ慎重に支援を進めています。
・ヤングケアラー相談窓口
相談窓口を開設してから1年以上が経過しましたが、ヤングケアラー当事者からの相談は少ない状況が続いています。しかし、子どもたちにとって身近な学校関係者や関係機関からの相談が少しずつ増えており、訪問対応を積極的に行っています。
専門家や関係機関からのヤングケアラーに対する関心は高く、職員が講師を務めた研修には、1年間で1,000名を超える方が参加しました。最近メディアで取り上げられる機会も多いことから、今後は、一般向けの研修会も充実させていきます。
子ども本人が「相談してみよう」と思えるように、動画やマンガなどの広報物を制作しました。2023年4月以降、関係機関と協力しながら、子どもたちの目に届くようにしていきたいと思います。
現在、福岡市と連携し、家族への直接的な支援メニューを検討しています。
・「子どもの村福岡」の新たな事業「一時保護事業」
2022年4月から福岡市より一時保護事業を受託しましたが、昨年1年間は対象児童の委託がありませんでした。
一方で、「育児疲れ」や「育児不安」などを背景に年々増加している「子どもショートステイ」については、延べ803日の受け入れを実施しました。この間、「子どもの村福岡」では、4月に大学新卒2名、秋に経験者3名を中途採用し、急拡大の局面にある「子どもショートステイ」の受け入れの環境の整備を図るとともに、職員に対しては、新たにOJT研修、ジョブローテーション研修を取り入れるなど、人材育成、組織力の強化に努めています。
・福岡市全域に広がる「里親ショートステイ事業」
子どもショートステイの利用希望者を、地域の里親に託す「里親ショートステイ事業」は、2022年4月から福岡市全域に拡大しました。増え続ける利用ニーズに応えるため、コーディネーター、リクルーターの5名体制で、ショートステイ里親のリクルート、利用調整、事後フォローの充実に努力しています。
特に、里親普及・啓発のための研修会「里親って?カフェ」を月に1回開催することで関心の高い市民の参加を得、そのなかから福岡市の里親登録を促進しています。
子どもショートステイの取り組みについては、全国各地の行政機関や民間団体の視察が増加しています。「在宅支援による、虐待防止の切り札」として、本事業が注目されていることを実感しています。
・福岡市子どもショートステイ 受け入れ日数(左)
・SOS子どもの村JAPAN 子どもショートステイ受け入れ実数(右)
3.広報活動・人材養成
・人材養成
質の高い家庭的養育を目指して
社会的養育(児童養護施設、ファミリーホーム)に関わる専門職や、地域の里親向けの研修を「子どもの村福岡」にて2回、開催いたしました。
子どもの心の発達において、親子の信頼関係の形成につながる重要な役割を果たす「愛着」について学ぶ機会と、自分の感覚を深く掘り下げながら、養育者としての自分を客観的に見つめ直すための研修を行いました。
また、里親養育の質向上のための研修「フォスタリングチェンジプログラム」についても、コロナ禍の状況ではありましたが無事、研修を開催することができました。
・法人広報
対面やオンラインでの広報活動を行いました。
新たに入職した2名の職員は、自らも学びつつ、対面やオンライン、出張形式での説明会を通じた広報活動を行いました。1年間で開催した説明会は、計27回、約300名が参加しました。説明会をきっかけに「子どもの村福岡」の見学を希望されることも多く、福岡市内に限らず、遠方にお住まいの方も含めて、計240名が「子どもの村福岡」を見学しました。
WEBサイトをリニューアル予定です。
SOS子どもの村インターナショナル本部のブランドマニュアルが13年ぶりに改定されたことに伴い、7年ぶりに当法人のWEBサイトのリニューアルを進めました。一般市民の方に幅広く、私たちの取り組んでいる社会課題や活動について知っていただくための企画をWEBサイトやSNSで展開していく予定です。
メディア掲載実績
「ヤングケアラー」に関する社会的関心が高く、多数メディアに掲載されました。
4.財務・組織運営
会計報告
収入の部
長引く新型コロナ禍の影響で、総収入の70.0%を占めている寄付系収入への影響が懸念されていましたが、大口のご寄付を含む、個人1,229名、企業・団体からは232社の方々からのご寄付を賜りました。これにより、寄付関連の収入は昨年対比108.3%の実績となり、年間を通じて安定した活動を行うことができました。多くの支援者の皆さまには、この場をお借りして、多大なるご支援を賜りましたことにつきまして、役職員一同改めて心より感謝申し上げます。
支出の部
社会情勢の変化に柔軟に対応するために予算計上をしたものの、計画外経費の執行はなく、その他の事業経費や、管理費などについても予算の範囲内で執行できたことから、当期支出合計は予算対比91.5%となっています。
収支状況並びに決算処理については、「田中恵公認会計士事務所」における |
5.2023年に向けて
「子どもの村福岡」や地域の里親による「子どもショートステイ」の取組実績が着実に伸びており、「虐待防止、在宅支援の切り札」のモデルとして注目され全国各地から行政視察等が増加している状況にあります。
2023年は、課題として急がれている、各児童の受入れに際しての対応困難な事例の検討や、当初からの目標である利用家族の適切なアセスメントに基づく継続的な支援体制を構築してまいります。
また、「ヤングケアラー相談支援窓口」については、相談件数が伸び悩んでいるため、行政及び関係者や教育・福祉関係機関等との連携により、広報ならびに研修活動を通じて当事者等からの相談につなげていきます。
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アニュアルレポートはこちらから
アニュアルレポートにつきましては、ご寄付をいただいた皆さまへ郵送にてお送りをしておりますが、WEBサイトでの公開も行っております。
◆活動成果報告書「ANNUAL REPORT 2022」はこちらから
URL:https://www.sosjapan.org/pdf/annual-report_2022.pdf
《 クレジット 》
・企画/制作/文・編集
SOS子どもの村JAPAN
・Design
九州コミュニティ研究所(http://crik.jp/)
・Photo
Hatano Atsushi(https://www.instagram.com/hatabow_portrait/)
Ryuto Sato(https://www.instagram.com/ryutosanto/)
Hiromasa Otsuka(https://www.overhaul.jp/)
ALBUS( https://albus.in/ )
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活動報告会を開催予定です
2022年度、1年間の活動報告に加え、報告書には書ききれなかったリアルな部分について、赤裸々にお話をさせていただければと思います。前職は一般企業で働いていた広報職員が、皆さまへわかりやすくお伝え致しますので、事前の勉強やインプットは不要です。
ぜひ、お気軽にご参加ください。
・5/24(水)19:00〜21:00@オンライン
テーマ:虐待予防の活動「子どもショートステイの取り組み」
◆お申し込みはこちらから
URL:https://pro.form-mailer.jp/fms/ba8b774f256153
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団体概要
認定NPO法人SOS子どもの村JAPAN
設 立:2006年12月21日
理事長:福重淳一郎
所在地:〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-3-14 ブランシェ赤坂3F
電 話:092-737-8655