2017年度から2021年度までの5年間にNITEに通知された製品事故情報(※1)では、建物火災(※2)の件数は312件ありました。原因のトップ3は、暖房器具(※3)によるもので、1位「可燃物が接触して着火」、2位「灯油が漏れて引火」、3位「ガソリンを誤給油して出火」であり、全て誤使用や不注意等(※4)による事故でした。
冬から春にかけては空気が乾燥し、風の強い日が多くなることから、引き続き火災が発生しやすくなっています。建物火災を発生させないために、日頃から事故を防ぐ行動を習慣づけましょう。
- 「製品による建物火災」原因トップ3
〇1位「可燃物が接触して着火」
ストーブのそばに可燃物を置いてしまったことで、可燃物がストーブの熱源に接触して着火する事故が多く発生しています。
〇2位「灯油が漏れて引火」
給油作業時にカートリッジタンクから漏れた灯油にストーブの火が引火する事故が多く発生しています。
〇3位「ガソリンを誤給油して出火」
ガソリンと灯油を同じ容器や同じ場所で保管することで、特に高齢者が作業する際に誤給油する事故が多く発生しています。
- 事故を防ぐためのポイント
○暖房器具の周りには燃えやすいものを置かない、そばを離れない。
○ストーブへの給油時は必ず消火する。灯油が漏れていないことを確認してから本体にセットする。
○ガソリンと灯油はそれぞれ専用の容器で別の場所に保管し、高齢者が給油する際は家族がサポートする。
○安全機能が充実している製品への買い換えを検討する。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
(※2)本資料では、住宅や店舗などの建物が半焼または全焼した火災を「建物火災」としています。
(※3)「暖房器具」は、石油ストーブ・石油ファンヒーター・電気ストーブを指します。
(※4)本資料では、製品の誤使用・不注意によると判明したものに加えて、原因不明だが誤使用・不注意が疑われるもの及び製品に起因しないものを「誤使用・不注意等」としています。
>>今回のプレスリリース本文はこちら
NITE公式HP https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs230222.html
>>今回の注意喚起動画はこちら
NITE公式 YouTube 【nite-ps】「製品による建物火災の原因トップ3」
- 1.事故発生状況
1-1.年度ごとの「建物火災」の事故発生件数
図1に312件の事故についての「年度ごとの事故発生件数」を示します。毎年死亡事故が発生していて、過去5年間の合計では74件となっています。また、死亡事故の被害者の約7割が70歳以上の高齢者となっています。
1-2.「建物火災」の事故原因
図3に、312件の事故についての原因区分別の事故発生件数を示します。誤使用・不注意等による事故が最も多く発生しており、事故の約半分を占めています。
1-3.「建物火災」の原因トップ3
表1に、「建物火災」の原因別の事故発生件数トップ3を示します。
トップ3の全てが、誤使用や不注意等による事故です。
- 2.事故事例
■原因トップ①事例:「可燃物が電気ストーブに接触したことによる事故」
事故発生年月 2018年12月(富山県、70歳代・女性、拡大被害(※5)
【事故の内容】
電気ストーブを使用中、建物1棟を全焼する火災が発生した。
【事故の原因】
電気ストーブに布団を掛けたまま他の部屋に移動したところ、約5分後に出火したことから、布団が電気ストーブの熱源に接触したことによるものと推定される。
(※5) 製品本体のみの被害(製品破損)にとどまらず周囲の製品や建物などにも被害を及ぼすことを、NITEでは「拡大被害」と呼びます。
「暖房器具」の使用時に気を付けるポイント
○暖房器具の周囲に可燃物などを置かない。特に、近くで衣類などを乾かさない。
ストーブ、ファンヒーターなどの暖房器具の周囲に布団や衣類などを置いたり、カーテンの近くに暖房器具を置いたりすると、放射熱(※6)や高温部への接触によって、火災になるおそれがあります。また、暖房器具の上で衣類を乾燥させると、乾燥して軽くなった衣類があおられて落下し、高温部に接触することがあります。特に石油ストーブでは製品上部において上昇気流が発生するため、注意が必要です。
(※6)放射熱とは、電磁波のかたちで製品から放出される熱のこと。
○その場を離れる時や外出時などには消す。
使用中にその場を離れている間に、可燃物が暖房器具に接触したことによる火災事故が多く発生しています。発見が遅れ、ストーブ、ファンヒーターのみならず周辺を焼損するおそれがあるため、別の部屋に移動するときや外出時など、その場から離れる際は消してください。
■原因トップ②事例:「石油ストーブの灯油が漏れて引火した事故」
事故発生年月 2019年2月 (埼玉県、80歳以上・男性、1名死亡)
【事故の内容】
石油ストーブ及び建物を全焼、9棟を類焼する火災が発生した。
【事故の原因】
給油作業時にカートリッジタンクの口金が外れて漏れた灯油に石油ストーブの火が引火したものと推定される。
「石油ストーブ・石油ファンヒーター」の給油時に気を付けるポイント
○給油する前に必ず消火する。給油後は、給油口キャップをしっかりと締め、灯油が漏れていないことを確認してから本体にセットする。
給油する際は、必ず消火してください。また、カートリッジタンクへの給油後は、給油口キャップを閉め、しっかり締まっていることを必ず確認してから本体にセットしてください。漏れた灯油がストーブ、ファンヒーターにかかった際は、機器内部に浸入しているおそれがありますので、使用を中止し、販売事業者や製造事業者に相談してください。
○安全機能が付いた製品への買い換えを検討する。
石油ストーブをはじめとする石油燃焼機器は、2009年に消費生活用製品安全法の「特定製品」に指定され、2011年からはPSCマークの無い製品は販売することができなくなりました。
PSCマークの付いた製品は、下記の安全機能を有しています。
【PSCマークの付いた製品の安全機能】
・燃焼中であっても、給油時、機器からカートリッジタンクを抜いた場合90秒以内に消火する。(給油時消火機能)
・閉止音や目視又は感触などで給油口キャップが閉まっていることが確認できる。(給油口キャップの閉め忘れ防止機能)
・酸素不足により不完全燃焼になる前に、自動的に運転を停止します。※石油ファンヒーターのみ(不完全燃焼防止機能)
■原因別トップ③事例:「石油ストーブにガソリンを誤給油したことによる事故」
事故発生年月 2018年6月 (新潟県、80歳代・男性、1名死亡、1名重傷、1名軽傷)
【事故の内容】
石油ストーブを使用中、異常燃焼を起こし、建物を全焼、3棟を類焼する火災が発生した。
【事故の原因】
使用者が誤ってガソリンを給油したため、事故に至ったものと推定される。
ガソリンを誤給油しないためのポイント
○灯油とガソリンはラベル表示のある専用の容器に入れ、別々の場所で保管する。
ガソリンを誤って給油した場合、たとえ少量の混入であっても火災が発生するおそれがあるため、注意が必要です。灯油は「灯油用ポリタンク」などの専用容器に入れ、ガソリンは消防法に適合した「ガソリン用携行缶」に入れてラベル表示で区別して保管してください。また、灯油とガソリンは同じ場所で保管せずに、別々の場所で保管してください。
- 事故品・事故事例を確認 過去にどのような事故が発生しているか確認する。
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報が表示されます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
- 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。
製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。