月経の際に、子宮の壁からはがれおちた内膜や血液などが混ざったもの(以下、経血)の量が非常に多い場合に診断される過多月経は、婦人科系の疾患だけでなく、血液疾患などのサインである可能性もあります。しかし、経血量には個人差もあるため、過多月経だと気付かずそのまま放置してしまうケースもあり、正しい経血量について知っておくなど、日頃から自身の経血量の変化に気付けるようにしておくことが大切です。
本調査では、過多月経についての認識をはじめ、経血量に関する不安や、それに伴う医療機関への受診状況などが明らかになりました。今回の結果をもとに、月経周期や月経の日数だけでなく、経血量をチェックするという意識も持ち、一人でも多くの女性が自身の体調管理に役立てられることを願っています。
■ 月経中、経血の量も気にしている?経血量が非常に多い「過多月経」の認知度とは。
Q. 経血の正常な量は「20~140ml」と言われていますが、このことを知っていますか。
個人差もありますが、正常な経血量は1回の月経期間で20~140ml※1と言われています。正常な経血量について聞いてみると、「知っている」10.0%、「なんとなく知っている」26.5%となり、健康意識の高いルナルナユーザーでも認知度は4割に満たない結果となりました。
Q. 経血量がいつもより多くなる場合、「過多月経」の疑いがあります。「過多月経」を知っていますか。
1回の月経期間に経血量が140mlを超える場合、過多月経の疑いがあります。この過多月経について知っているかを聞いてみると、「知っている」30.1%、「なんとなく知っている」34.6%となり、合計すると6割以上の人が過多月経を知っていることが分かります。
前問の結果では、正常な経血量を具体的な数字で認識している人は4割弱でしたが、経血量が多い状態が過多月経の可能性であることについては、ある程度認識されているようです。
■ 自分の経血量については「普通だと思う」が4割以上と最多。経血量の目安を知っていて、経血量をチェックしたことがある人は、自分の経血量を「多い」と思う結果に。
Q. 生理期間中の自身の経血量を、多いと思いますか。少ないと思いますか。
では、自身の経血量についてはどのように捉えているのでしょうか。自身の経血量について多いと思うか、少ないと思うかをたずねると、「普通だと思う」45.7%が最も多く、続いて「多いと思う」30.6%となりました。
また、自身の経血量を何らかの形でチェックしたことがある人は全体で15.3%おり、経血量のチェック経験があり、かつ正常な経血量の目安を知っている人に絞ると、自身の経血量を「とても多いと思う」の回答は26.2%と、全体の数字よりも高くなりました。
■ 経血の量が多く不安になったことがある女性が半数以上!
Q. これまでに生理の時の経血量が多く、不安に思ったことはありますか。/Q. 「ある」と答えた方にお聞きします。不安を感じた際のあなたの状態について教えてください。(複数回答:上位4つ)
続いて、経血量が多く不安になったことがあるかをたずねると、51.9%の人が「ある」という結果となりました。
「ある」と回答した人を対象に、不安を感じた際の状態を聞くと「経血にレバーのような大きな血のかたまりが混ざることがあった」76.6%が最も多い回答となり、「昼でも夜用のナプキンを使う日が多くなった」60.1%が続きました。
また、経血量が多いことで8割以上の人が「日常生活に影響がある」と回答しました。日頃、具体的にどのように困っているかについて、自由回答でエピソードが多く寄せられたため、その一部を紹介します。
≪経血量が多いことで困ったエピソード≫
★睡眠時に漏れてしまい、毎回寝具を汚してしまう。
★授業中(60〜90分)だけでも経血が漏れて、椅子を汚してしまう。 夜は夜用ナプキンでも足りなくて、パンツタイプを使用している。
★多い日用を使用していたが、出先で経血漏れがあり、下着だけでなく洋服も急きょ購入した。
★漏れが心配で何度もトイレへ行かなければならず、仕事に支障があった。
★忙しくて1時間交換できないだけで経血が漏れてしまい、職場の椅子(布地)を汚してしまった。そんな時に限って周囲に男性しかおらず、コソコソ隠れるように着替えたり椅子の掃除をした。
★量が多く、常にタンポンと夜用ナプキンを使っている状態。2つ交換するとなるとトイレにすごく時間がかかる。特に外出時に連れをかなり待たせてしまうので申し訳ない。
★過多月経用のナプキンを使用していたため値段も高く、購入頻度も高かった。一般的なナプキンの倍以上の金額がかかっていた。
自分で経血量を正確に測ることは難しいですが、自由回答にもあった通り、生理用品の使用頻度や使い方、経血の広がり方などを自身の状況と照らし合わせることで、過多月経の疑いに気付くこともできます。ぜひ、自身の経血についてもチェックを行い、不安を感じたり、日常生活に支障を来す場合は医療機関の受診を検討してほしいと思います。
また、最近は多様なフェムテック関連の製品やサービスもあります。例えば、月経カップを活用すると一目でどれだけの経血量か把握ができたり、履くだけで経血の量が測定できる生理用ショーツなども登場しています。このような製品も上手に活用して、自身に合う方法で経血量にも注意を向けられると良いのではないでしょうか。
経血量が140mlを超えるという目安以外にも、以下のような項目に当てはまる場合は、経血量が多いと考えられますので一度チェックしてみてください。
≪経血量が多いと考えられる目安≫
・ナプキンを2時間に1回よりも多い頻度で交換する必要がある
・夜用ナプキンを昼でも使用している
・ナプキンを複数枚、またはタンポンとナプキンを同時に使用している
・毎回100円玉サイズより大きい血の塊がでる
■ 知識によって行動に差!経血量が増えた際に婦人科を受診する割合は、正常な経血量を知っている場合は4割以上。知らない場合は約2割。
Q. 経血量が増えて不安を感じた際に、医療機関を受診しましたか。
自由回答からも、経血量が増えることで日常生活に様々な支障を来すことが分かりますが、医療機関を受診する人はどの程度いるのでしょうか。
結果は、正常な経血量の目安を知っているかどうかで傾向が異なりました。正常な経血量を知っている人は、経血量が増えた際に「婦人科を受診した」と回答した人が42.3%いるのに対して、正常な経血量について知らない人の受診率は21.2%と約半数でした。この結果からも、経血量についての正確な知識が、医療機関を受診するという具体的な行動につながっていることが推測されます。
■ 受診した約3割が過多月経の診断!症状があれば、まずは受診へ。
Q. 医療機関を受診した結果、「過多月経」であると診断されましたか。
ここからは、経血量が多く医療機関を受診したと回答した人を対象に、その後について質問してみました。
受診の結果、過多月経と診断されたかをたずねると27.2%が「はい」と回答しました。本意識調査では、経血量が多く不安に感じながらも、病院を受診していない人が7割以上と多数派でしたが、受診したうちの3割弱が過多月経の診断だったことを考えると、不安を抱えている場合はまずは受診し、過多月経やほかの疾患のリスクがないかを確認して欲しいと思います。
■ 過多月経の要因の6割以上が“良性の婦人科器質性疾患”。
Q. 「過多月経」と診断された方にお聞きします。過多月経の要因として該当するものは何でしたか。
続いて、過多月経と診断された人へその要因をたずねました。
最も多い回答は、「子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの良性の婦人科器質性疾患」62.3%でした。こうした疾患を治療せずに放置していると、症状が悪化したり、不妊につながるなどのリスクもあるため、やはり医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
■ 未受診の最大の理由は「症状が悪化したら行こうと思っていた」で4割以上。
過多月経への危機感は薄い現実。一方で、血液疾患のリスクも存在!
Q. 「医療機関は受診しなかった」と答えた方にお聞きします。その理由を教えてください。(複数回答:上位5つ)
一方で、経血量の多さに不安を抱きながらも病院を受診しなかった人へ、その理由をたずねると、「症状が悪化したら行こうと思ったから」40.8%が最も多い回答でした。経血量が多いという症状だけでは、受診の動機にはならない人が多いようです。
ただ、過多月経だった場合、その要因として、前問で多くあげられたように婦人科系の器質性疾患なども考えられます。また、経血量が多いと、体内を循環する血液の量が少なくなって起こる“鉄欠乏性貧血”になりやすいとも言われており、少し走っただけで息切れがするなど、日常生活にも影響が生じます。
経血量には個人差もあるため、家族や友人との会話だけでは自分の経血量が正常なのか、異常なのか判断しきれないかもしれません。しかし、経血量が多いということは、様々な疾患の可能性も考えられるため、少しでも不安になったら、まずはかかりつけの婦人科へ相談してみてほしいです。
海外では、過多月経の女性の13%が血液疾患という報告※2もあり、本意識調査でも、医療機関を受診し過多月経と診断された人のうち1%ほどは血液疾患が要因と回答しています。出血が止まりにくいなどの血液疾患がある場合は、それに気が付かないまま出産などを迎えると、産後に多量、もしくは長期間の出血を経験するケースもあると言われています。今回、そのような可能性を説明したうえで、出産などのライフイベントを迎えるにあたり、自分の血液の止まりにくさについて検査しておきたいかをたずねると、「時期が来れば検査したいと思う」65.5%が最も多い回答となりました。
≪成城松村クリニック 院長 松村圭子先生からのコメント≫
月経中に自身の経血量を正確に測ることは難しく、また人と比べられないため、正常な経血量についての認識が低い結果となったことにもうなずけます。20~140mlといってもピンと来ないかもしれません。普段から生理用品の交換頻度や経血の様子などをご自身で把握し、変化があれば医療機関を受診するという意識を持っていただくことが、過多月経などの異常に気付くために大切になってくると思います。
今回の調査では、経血量が多いと感じていても受診しない人の方が多い結果となりましたが、過多月経の原因がわかれば、経血量の改善のみならず、気付いていなかった婦人科系の疾患や、血液疾患の適切な治療につながることもあります。経血量の多さを個人の体質のせいなどと決めつけずに、まずは受診の一歩を踏み出してほしいです。
経血量の目安などの知識がないと、経血が多いなどの悩みがあっても、受診するほどのことではないと思ってしまう人もいるかもしれません。しかし、そうすることで疾患のリスクを放置してしまうことにもなりかねません。
『ルナルナ』は今後も、月経をはじめ、妊娠・出産、更年期、婦人科疾患などについての正確な情報を発信することで、女性たちが正しい知識をもとに行動できるようサポートしていきます。また、「FEMCATION®(フェムケーション)※3」を通じて、年齢や性別を問わず誰もが、女性のカラダやココロについて正しく学べる機会を創出し、あらゆる女性たちが、より生きやすく、暮らしやすく、働きやすい社会の実現の一助となることを目指します。
調査実施時期:2022年12月2日(金)~2022年12月6日(火)
調査方法および人数:『ルナルナ』、『ルナルナWeb』、『ルナルナ 体温ノート』、『ルナルナ ベビー』にて調査
回収回答数:5,769名
有効回答数:回答者のうち15歳以上の女性 5,608名
※1:厚生労働省 「働く女性の健康応援サイト」より https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/menstruation.html
※2:Shanker M.et al.,BJOG.2004;111(7):734-40
※3:「FEMCATION®」は(株)エムティーアイの登録商標で、FEMALE(女性)とEDUCATION(教育)を掛け合わせた造語です。
※参考:武田薬品工業株式会社「フォン・ヴィレブランド病に関する情報サイト」:https://vonwillebrand.jp/qa/03/
サイト名:ルナルナ®
概要:ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス
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