第 43 回「石橋湛山賞」受賞作決定

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 2022年度・第43回の「石橋湛山賞」(一般財団法人石橋湛山記念財団主宰、株式会社東洋経済新報社・一般社団法人経済倶楽部後援)は、筒井清輝氏の『人権と国家――理念の力と国際政治の現実』(岩波新書、2022年2月刊)ならびに千々和泰明氏の『戦争はいかに終結したか――二度の大戦からベトナム、イラクまで』(中公新書、2021年7月刊)に決定しました。
 全国の有識者から推薦いただいた40余の著作・論文の中から、厳正なる審査を行いました。最終選考委員会での選考に残った両氏の著作は極めて水準が高く、昨年に引き続いて、2作品への同時授賞となりました。
 筒井清輝氏の『人権と国家』は、人類普遍の理念としての「人権」の確立を歴史的に解明しています。他国の内政に干渉してまで普遍的人権を守るべきだとする規範の確立について、奴隷貿易撤廃運動から世界人権宣言、国連人権委員会や人権NGOの活動など、具体的な例を引きながら、体系的に分析しています。国際的に人権外交の重要性が増すとともに、国内的にも人権への配慮が求められる現在、日本の「人権力」の強化が今日的課題だとしています。
 一方、千々和泰明氏の『戦争はいかに終結したか』は、第1次、2次世界大戦からベトナム、イラク戦争までの歴史的事例研究を通して、戦争終結の形をパターン化し考察した、ユニークな書です。「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスの中で、優勢な勢力が「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のどちらを選択するかで、さまざまな戦争終結の形がありうるとします。戦争がなぜ始まったかの研究は多いが、戦争の終わらせ方、出口を論じたものは少なく、日本の安全保障を考える上で有意義な書として評価されました。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、世界は新たな安全保障と人権の危機にさらされています。両書はウクライナ侵攻以前に上梓された著作ですが、現在の状況を考える上でも、示唆するところが多く、その点からも高く評価され、同時授賞とすることといたしました。

筒井 清輝著『人権と国家――理念の力と国際政治の現実』(岩波新書 2022年2月刊)
筒井 清輝(つつい きよてる)氏   略歴
1971年東京都生まれ。1993年京都大学文学部卒業。2002年社会学博士(スタンフォード大学)。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校助教授、ミシガン大学社会学部教授等を経て、現在スタンフォード大学社会学部教授。同大ジャパン・プログラム所長、人権・国際正義センター所長。東京財団政策研究所研究主幹。主な著書にRights Make Might: Global Human Rights and Minority Social Movements in Japan. Oxford University Press, 2018. Corporate Social Responsibility in a Globalizing World. Cambridge University Press,2015.(共編著)。The Courteous Power:Japan and Southeast Asia in the Indo-Pacific Era. University of Michigan Press,2021. (共編著)がある。

千々和 泰明著『戦争はいかに終結したか――二度の大戦からベトナム、イラクまで』(中公新書 2021年7月刊)
千々和 泰明(ちぢわ やすあき)氏   略歴
1978年生まれ。福岡県出身。2001年広島大学法学部卒業。2007年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て、現在防衛省防衛研究所戦史研究センター安全保障政策史研究室主任研究官。
主な著書に『大使たちの戦後日米関係―その役割をめぐる比較外交論 1952-2008年』(ミネルヴァ書房、2012年)、『変わりゆく内閣安全保障機構―日本版NSC成立への道』(原書房、2015年)、『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010―「基盤的防衛力構想」の時代』(千倉書房、2021年、第7回日本防衛学会猪木正道賞正賞)、『戦後日本の安全保障―日米同盟、憲法9条からNSCまで』(中公新書、2022年)がある。

 授賞式
 日時:2022年11月21日(月)14時~
 会場:東洋経済ビル 9階 経済倶楽部ホール(東京都中央区日本橋本石町 1-2-1)

「石橋湛山賞」について
 石橋湛山賞は、石橋湛山記念財団により、東洋経済新報社と経済倶楽部の後援の下に、1980年に創設されました。政治経済・国際関係・社会・文化などの領域で、その年度に発表された論文・著書の中から、石橋湛山の自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作に贈られています。 
 政界・経済界・学界・マスコミ関係者から寄せられた推薦論文・著書をもとに、財団理事・評議員らによる選考委員会が授賞候補を数点に絞ります。この中から最終選考委員の奥村洋彦(学習院大学名誉教授)、田中秀征(福山大学客員教授)、加藤丈夫(前国立公文書館館長)、柴生田晴四(経済倶楽部理事長)、山縣裕一郎(東洋経済新報社 代表取締役会長)各氏の合議を経て、最終選考委員会の場で決定します。

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