概要
GEAR5.0マテリアルユニットは鈴鹿高専を中核校として、協力校(鶴岡高専・小山高専・呉高専・大分高専)を含めた5つの高専からなります。各高専では、それぞれの得意なコアとなる保有技術を活かしたプラットフォームを形成し、高専間の連携のもと地域あるいは全国からの官民の課題解決に積極的に取り組んでいます。その中で鈴鹿高専は材料評価に関連した高度な先端分析拠点としての役割を担っており、共同研究推進センター内に分析機器を設置しています。
本キャンプでは、その代表的な先端機器、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM ※1)・周波数変調型走査型プローブ顕微鏡(FM-AFM ※2)・レーザーラマン分光光度計(※3)の3機種についての操作実習会が行われました。参加学生は、担当教員の指導を受けながら、現在進めている研究中の試料等の分析・観察を行いました。キャンプ初日には学生の研究発表もあり、異なる研究課題に取り組む学生同士の技術交流も図られ、先端機器の分析研修を通して研究及び技術開発で重要な問題解決能力の向上に対する貴重な体験の場となりました。
新素材キャンプ開催内容
日時 令和4年8月24日(水)~26日(金)
場所 三重県鈴鹿市白子町 鈴鹿工業高等専門学校
参加者 鶴岡高専3名(2)、小山高専2名(1)、鈴鹿高専5名(4)呉高専3名(2)、大分高専4名(2)、奈良高専1名、佐世保高専1名
全体19名、()内は学生の数
機器担当教員
電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM) 黒田大介 教授 中川沙織 技術補佐員
周波数変調型走査型プローブ顕微鏡(FM-AFM) 平井信充 教授
レーザーラマン分光光度計 兼松秀行 特命教授 幸後 健 講師
8月24日(水)
施設見学、研究発表会(ポスターセッション)、FE-SEM観察デモンストレーション
8月25日(木)
各装置の利用研修、グループワーク、発表資料の作成・準備
8月26日(金)
分析結果発表会、全体討論会
教育アドミニストレータ―(GEAR-KEA)大貫洋介教授のコメント
新素材キャンプは、参加学生の研究課題を解決するための能力向上を目標に高度先端機器を用いた分析・観察を経験することを軸とし実施しました。と同時に、学生にとって研究活動で必要なスキル・コンピテンシーとはどのようなものかを意識していただき、今後の研究活動のより良い動機付けになるように、共同・プレゼンテーションの機会をプログラムに組み込んでみました。キャンプの参加学生は複数の異なる高専に所属し、それぞれ違った研究テーマに取り組んでいるからこそ、得られる多くの新鮮で多角的な刺激を感じてくれたようです。今回のようなキャンプを通して、高専ならではの面的な研究ネットワークの構築・学生間交流につながることを期待しています。
引率教員 上條利夫教授(鶴岡高専)のコメント
本キャンプに参加する2名の学生(専攻科2年生、本科5年生)は、ポスター作成・測定サンプルの選定、準備をすべて自分たちだけで考え実施しています。自分の求める実験データが得られるかは、装置の特性(サンプル準備・測定条件・測定サイズなど)を把握していないとできません。成功も失敗も“なぜそうなったか?”を考えれば本人たちの経験につながりますので、本キャンプを通じて一回り成長することを期待しています。また、同じ研究理念をもつGEARの先生方に指導された他高専学生とポスター発表やワークショップにて交流を深めることにより、研究の大変さや研究の楽しさについても共有してほしいです。
引率教員 尾形公一郎教授(大分高専)のコメント
今回の新素材キャンプには、本校から専攻科1年生2名が参加しました。キャンプに参加してもらった理由は、学生自身が今後の研究活動で利用する分析機器の知識を習得できること、さらに、鈴鹿・鶴岡・小山・呉高専の学生および教職員と交流できるからです。この機会は、学生に対する高度な教育を実践できるとともに、コミュニケーション能力の向上に繋がると考えます。参加学生には、本キャンプで得た経験によって、探求心に火が付き、今後の教育研究活動の発展および人格形成に繋がることを期待しています。最後に、このような貴重な機会を頂きました鈴鹿高専教職員の皆様、ならびに本キャンプに参加された学生・教職員の皆様にお礼申し上げます。
学生のコメント
Aさん
今回はこのような特別な機会をご用意していただき、運営の方には感謝しかないです。他の高専生の方とも話したのですが、もっと長い期間でも良かったのかなと思いました。そのぐらいに今回のイベントは楽しく、かけがえのないものでした。
Bさん
まず、他高専との交流を通して、学習以外にもさまざまな発見がありました。他の高専生と繋がりを持てたということも大きな成果だと感じています。
キャンプ中では触れたことのない装置について学んだりして、今後の研究活動においてもより広い視点から問題を考えられるようになったと思います。
このような機会をいただき、ありがとうございました。
今後の予定
新素材キャンプ参加者に実施したアンケートを分析・解析し、その結果をGEAR5.0に関わる外部報告や教育研究活動報告に利用するとともに、今後こうしたキャンプが新たな・研究・教育の改善への取り組みとして活用されることが期待されます。
GEAR5.0マテリアル
https://www.suzuka-ct.ac.jp/gear-materials/
※1 電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)
走査型電子顕微鏡(SEM)は、電子レンズを使って電子線を微小径に集束し、試料の上に照射します。そして、試料から放出される二次電子像及び反射電子像を検出することで像を得る顕微鏡です。今回のキャンプで使用したFE-SEMは、コールド電子銃を搭載しており、低加速電圧での構文機能観察が可能で、DNAやウイルスなどの生体材料の微細表面観察が可能です。
※2 周波数変調型走査型プローブ顕微鏡(FM-AFM)(SPM)
走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM) は微小な針(探針:プローブ)で試料をなぞって、その形状や性質を観察することができる新しい顕微鏡です。試料に対して原子・分子レベルの分解能を持ち、真空環境を必ずしも必要とせず、大気中や溶液中で使用できるのも大きな特長です。最近では、表面観察だけでなく、試料表面の各種物性を画像化することができるようになってきており、ナノテクノロジー研究に必須の顕微鏡装置として一層の応用の拡がりが期待されています。
※3 レーザーラマン分光光度計
物質にレーザー光を当てるとその当てた光は散乱されますが、当てた光と異なる振動数の光も散乱され、この光はラマン散乱光と呼ばれます。このラマンスペクトルを解析することで、物質の同定や分子の構造解析ができる化学結合の種類と質の同定ができます。結晶性物質であれば結晶化の程度や結晶格子の歪みが分かります。
【鈴鹿工業高等専門学校について】
鈴鹿工業高等専門学校は、全国12の国立高専一期校のひとつとして1962年に設立され約10,000人の卒業生は技術者や研究者あるいは企業家として社会で活躍し、産業界から高い評価を受けています。1993年には、さらに2年間の高度な専門教育を実施する専攻科を設置して国際社会で活躍できる創造性豊かなエンジニアの育成に努めています。また、鈴鹿高専テクノプラザをはじめとして地域社会と密接に連携した教育研究により産業振興に努めています。
【学校概要】
学校名:独立行政法人国立高等専門学校機構 鈴鹿工業高等専門学校
所在地:三重県鈴鹿市白子町
校長名:竹茂 求
設立:1962年
URL:https://www.suzuka-ct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校・高等教育機関
【本リリースに関するお問い合わせ先】
独立行政法人国立高等専門学校機構
鈴鹿工業高等専門学校
総務課総務企画係
TEL:059-368-1717(平日8:30-17:00)
e-mail:somu@jim.suzuka-ct.ac.jp
~2022年度、高等専門学校制度は創設60周年を迎えます~
https://www.kosen-k.go.jp/Portals/0/60th/