通常のアプリゲームではイベントを開催するとアクティブユーザー数と平均プレイ時間の両方が増加する傾向にありますが、『アークナイツ』に追加された今回のイベントではユニークな傾向が見られました。ユーザーの動向がどのように変わったのか、iGageで見ていきたいと思います。
『アークナイツ』で、7月14日より常駐イベント『ファントムと緋き貴石』が追加されました。『アークナイツ』は『アズールレーン』や『ブルーアーカイブ』の運営を行っているYostarから配信されているモバイルゲームで、重厚な世界観やストーリー、個性豊かなキャラクター達が人気のタワーディフェンスゲームです。この常駐イベントはメインのゲームモードとは異なり、ランダムなイベントや戦闘が発生するマスを選んでいき、最深部を目指すモードとなっています。一度失敗すると、前回のプレイで得たキャラクターやアイテムはリセットされ、最初からやり直しになってしまいます。そういったシステムから、ユーザーからは「ローグライク」と呼ばれています(本リリースでは「ローグライク風イベント」と表記)。
通常のアプリゲームではイベントを開催するとアクティブユーザー数と平均プレイ時間の両方が増加する傾向にありますが、『アークナイツ』に追加された今回のイベントではユニークな傾向が見られました。ユーザーの動向がどのように変わったのか、iGageで見ていきたいと思います。
iGageの詳細はこちら:https://www.gameage.jp/igage/
■ローグライク風イベントの追加でもアクティブユーザー数は変わらず
はじめにアクティブユーザーの推移を見ていきます。
7月29日より、2.5周年を記念した大型イベントが開催されたため、7月25週に関してはアクティブ数が35万人近くまで増加していますが、全体を通して見るとおおよそ30万人程度で推移しています。【グラフ①】
本イベントが追加された7月11週ではアクティブ数の増加はほぼ見られません。同時に復刻イベントも開催されていましたが、両イベントによる集客力は決して高くなく、アクティブユーザー数増加には大きく影響しなかったことが分かります。
続いてプレイステイタスを見ていきます。7月11週は他の週と比べても新規ユーザーも復帰ユーザーも少なく、7月25週の2.5周年イベントで、新規・復帰ユーザーを多く獲得していることが分かります。【グラフ②】
こちらのデータを見ても、ユーザーが大きく変動しているのは7月25週であることがわかります
■平均プレイ時間は1.3倍に増加
それでは7月14日に追加された常駐イベントはユーザーにどのような影響を与えたのでしょうか。
プレイ時間の推移を見ていきたいと思います。元々『アークナイツ』はモバイルゲームの中でも平均プレイ時間は長めとなっており45分程度で推移しています。常駐イベントが追加された7月11週の平均プレイ時間は72.7分と前週の7月4週と比べ1.3倍まで増加しています。アプリ全体を見ても平均プレイ時間が60分を超えるアプリは非常に少なくなっています。【グラフ③】
特に120分以上プレイしているユーザー数が大幅に増加しています。7月4週までは120分以上プレイしているのは、多くても3万人以下でしたが、7月11週以降は6万人以上と非常に数を伸ばしています。このイベントはプレイを開始するとクリアをするまでに1時間ほど時間がかかるものとなっており、また、ランダム要素や収集要素もあるため、繰り返しプレイするユーザーも多いです。その結果長時間プレイするユーザーが増加したと考えられます。
今回のように1つのイベント追加により、もともと平均プレイ時間の長いタイトルが、さらに大幅にプレイ時間が増加するのは非常に珍しいケースです。一方で、イベントなどの開催によってユーザーのプレイ時間が伸びると共に、イベントでの集客力もアップすることは稀ですが、今回のイベントではアクティブユーザーの増加は見られませんでした。今回のイベントは新規ユーザーを獲得するよりも、既存ユーザーが長時間プレイしたくなるようなゲーム体験を提供することで、既存のユーザーの満足度に寄与していることがわかる結果となりました。
今後の展開ですが、『アークナイツ』はすでにアニメ化が発表されている為、アニメ放映時期にもまた大きなユーザー動向の変動が起こることが予想されます。どのような施策によって新規ユーザーの増加を狙うのか、または既存ユーザーの満足度を獲得できる施策はどんなものがあるか、それらをデータで検証できたひとつの事例となったのではないでしょうか。