日本において貧困問題が深刻化する中、支援制度は複雑でわかりにくく、支援制度の対象となる人も、自分は支援の対象外だと思っているケースが多いと言われています。 当社の非営利組織であるCivichat.orgでは、選択格差を是正するための施策の一つとして、公共制度とのマッチングの最適化により貧困問題の解決に向けた取り組みを進めており、この度の取り組みはその一環となります。 白取耕一郎、高木俊輔、霞江翔、佐藤遼平、関谷剛、金辰泰、百野公裕「『防窮訓練』の開発と実践-アクティブ・ラーニングは貧困から命を守れるか-」日本アクティブ・ラーニング学会第6回全国大会予稿集
背景
日本において貧困問題がいっそう深刻化する中、支援制度は複雑でわかりにくく、支援制度の対象となる人も、自分は支援の対象外だと思っているケースが多いと言われています。制度を知らないことで、本人や家族が命を失う事件も発生しています。
中でも若者を取り巻く貧困問題は大変深刻であり、15-34歳の労働人口の26%(4人に1人)が非正規雇用・完全失業・無業者のいずれかに属しているほか、学生でありながら家族の世話をせざるを得ない「ヤングケアラー」なども問題視されています。
このような事情を踏まえ、Civichat.orgは市民有志と「防窮訓練」という教育プログラムを開発しました。貧困に陥ってしまうときの備えをしないまま社会保障制度の充実を議論するのは”予防なき治療”となりかねないことを危惧したプログラムであり、、この度、はじめて本格的に実施されたものです。
当社の非営利組織であるCivichat.orgでは、選択格差を是正するための施策の一つとして、公共制度とのマッチングの最適化により貧困問題の解決に向けた取り組みを進めており、この度の取り組みはその一環となります。
概要
大学における12月20日の授業の際、受講者64名に対して防窮訓練を実施しました。
以下、実施結果をまとめた白取ほか(2022)より引用
「防窮訓練」は、将来受講者が貧困におちいったときに命を守るための 1 コマの教 育プログラムである。Civichatという支援制度案内システム(ユーザーは使用料無料)を活用する。
Civichatは、LINEなどからチャットボット形式で自分の状況を入力することで、利用できる制度を推薦してくれる。
このため、受講者は、制度すべてを理解し記憶する必要がない。また、友だち登録を解除せずに「お守り」のようにしておけば、いざ困窮したときにすぐに公的支援制度を検索できる。
具体的な流れとしては、受講者はカードに書かれた架空の人物になりきり、カードの状況で利用できる公的支援制度を探す。その後、通常のインターネット検索とCivichatの利用の双方を体験する。
所要時間 | 内容 |
5:00 | 導入、目的の説明、事前アンケートフ ォーム記入→結果共有 |
10:00 | 動画視聴、ニュース紹介 |
10:00 | 配られたカードになりきって支援制度をネット検索→同じカードの人(近くにいる)と結果共有 |
10:00 | Civichat を導入し、同じように制度を探す |
10:00 | ディスカッション(探し方による違い、どういう探し方があったらよい?) |
5:00 | 事後アンケートフォーム記入→結果 共有、まとめ |
結果
「防窮訓練」前後での、知っている公支援制度数や貧困・制度に対する認識(5 件法)の変化を図2に示した。対応のある t 検定において、いずれも5%水準で有意 な改善が見られた(N=64、有効回答率 92.8%)。
参考文献
- 白取耕一郎、高木俊輔、霞江翔、佐藤遼平、関谷剛、金辰泰、百野公裕(2022)「『防窮訓練』の開発と実践-アクティブ・ラーニングは貧困から命を守れるか-」日本アクティブ・ラーニング学会第6回全国大会予稿集
- https://codeforjapan.github.io/projinclusive/boukyuukunnren
- https://speakerdeck.com/50400/fang-qiong-xun-lian-suraido
教育機関・行政と連携し、公共制度のマッチング最適化により貧困問題を事前に防ぐ取り組みを推進しています。
将来、受講者が貧困におちいったときに命を守るための1 コマの教育プログラムである「防窮訓練」の実施や、各地域へのローカライズ展開×教育現場での活用による教育事業です。
そのほか、各地域の貧困対策に取り組むNPOなどとの協働により、支援が届き渡らない問題に対して取り組みを実施しています。
現在は一般社団法人の設立準備中。
連絡先: press@civichat.jp