当社は同2社とともに,自走式多軸台車(以下,「ドーリー(*)」という。)を活用したクレーン移設試験の実施など,2024年6月の実用化に向けた準備を進めています。
「S-Movable Towercrane」は,十字型の架台の上で自立する陸上風車建設用移動式タワークレーンで,風車の建設後,クライミングダウンを行い架台の脚部を取り外すだけで,ドーリーに搭載し,移動することができます。作業性能は,最大揚程152m,定格荷重145tと自立式タワークレーンでは国内最大・最高性能を誇り,5~6MWクラスの大型陸上風車の建設に対応できます。
カーボンニュートラルの実現に向けた社会機運が高まるなか,再生可能エネルギー由来の電源として風力発電施設の建設需要も増加しています。累積容量が4.8GW(2022年末時点)に達する陸上風力発電施設については,新設需要のみならず,施設の耐用年数経過に伴うリプレース需要も発生しています。
また,事業性の観点から陸上風力発電施設の大規模化が進むなか,陸上風車の単基出力も増大傾向にあります。今後,高さ120m超・5~6MWクラスの大型風車の市場投入が予想されますが,現行の陸上風車建設用移動式タワークレーンでは,高さ100m・4MWクラスの中型風車の建設が限界でした。そこで当社は,陸上風車の高層・大型化に対応できる移動式タワークレーンとして「S-Movable Towercrane」の開発・製作を行いました。
陸上風力発電施設の建設で不可欠となるクレーンの移設を柔軟に行えることも「S-Movable Towercrane」の大きな利点です。「S-Movable Towercrane」の活用によって,クレーン部材の解体を架台の脚部だけに留めて,速やかに次の建設ヤードへ移設し,サイクル工程を約5日間も短縮できるため,発電事業者は工期・費用の面で大きなメリットを享受できます。
当社は,国内最大の実績を誇る建築用タワークレーンなどで培ってきた技術を,今後は陸上風車建設用タワークレーンや,浮体式洋上風力発電施設の組立に対応できるリングリフトクレーンなど新エネルギー分野へも展開し,カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
≪参 考≫
■「S-Movable Towercrane」諸元
最大作業半径:46m
定格荷重 :145t(作業半径12.5m)
揚程 :152m
電気容量 :600KVA