【共同プロジェクトの概要】
事業期間:2023年8月16日から2025年12月31日
本共同プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症の流行期前後における神戸市民の生活様式や健康状態、医療・介護給付費などの変化を把握し、適切な政策の実施に繋げることを目的として、
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生活習慣や健康行動の変化
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健康状態の変化
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健診受診や予防接種状況等の変化
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医療の受診控えや服薬中断によるその後の精神的な健康への影響
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新規要介護認定状況の推移と関連要因
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孤立・孤独や口腔衛生への影響
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行動自粛等の地域間格差による健康への影響
を調べ、分析します。
本プロジェクトを通じて、新型コロナウイルス感染症の流行により起きた生活様式の変化と、その変化が健康に与えた影響を明らかにし、今後の健康課題の解決に向けた施策や、新規感染症のパンデミックに備えた政策の実施に繋げることを目指します。
なお、JAGES機構は2018年に神戸市と共同で「市民の健康とくらしに関する調査」を実施しましたが、本共同プロジェクトにおいても「市民の健康とくらしに関する調査」を実施するとともに、神戸市が保有するその他の市民のヘルスケアデータを活用し、分析を行います。
【プロジェクトの背景・目的】
WHO神戸センターからの委託を受け、神戸市との協力のもと「神戸市民における新型コロナウイルス感染症流行期の行動変容とその健康への影響に関する分析」をテーマとして実施されます。
日本では、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、第1回目の緊急事態宣言が2020年3月に出され、2023年5月8日の5類感染症への移行までの約3年間、人々は様々な行動の制限を受けてきました。JAGES機構は、新型コロナウイルス感染症が流行している2020年12月から2021年2月にかけて、神戸市 を含む11の自治体と協力して高齢者に対する調査を行ったところ、約半数の調査対象者で社会参加や他者との交流が減り、それら社会参加や他者との交流を減らした高齢者に比べ、新型コロナウイルス感染症が流行している間も社会参加や他者との交流頻度を維持した高齢者は、要支援・要介護リスクやフレイル、うつなどのリスクが低いことを明らかにしました 。このように、新型コロナウイルス感染症の流行により、日頃の生活様式の変化が余儀なくされ、そういった生活様式の変化が人々の健康や医療の利用などに与える影響が明らかにされつつあります。
また海外からは、新型コロナウイルス感染症が流行している間に、当該ウイルスへの感染以外での医療受診が抑制されたこと や、特に若者の精神保健のニーズが満たされない傾向にあること などが報告されています。
高齢者については、上記の報告以外にも生活様式の変化とそれによる健康への影響など様々な報告がなされ、内閣府が自粛生活の長期化による健康二次被害(コロナフレイル)を予防することの重要性を周知 しています。一方壮年期については、生活様式や健康状態、医療費や介護費用にどのような影響があったのかの報告はあまり多くありません。
そこで本事業では、JAGES機構とWHO神戸センター、神戸市の三者が協力して神戸市の20-64歳を対象とした調査を実施し、新型コロナウイルス感染症流行期以降の生活及び健康の状況を把握して、2018年に実施済みの調査結果と比較するとともに、神戸市が運用している「ヘルスケアデータ連携システム」のデータを活用し、神戸市における壮年期及び高齢者の新型コロナウイルス感染症流行期前後の生活様式や健康状態、医療・介護給付費などの変化について分析を行います。
【分析内容】
本事業を通じて、
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神戸市における新型コロナウイルス感染症流行前後の健康行動の推移の把握とその関連要因の検証
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神戸市における新型コロナウイルス感染症流行前後の生活機能や健康、身体機能の変化の把握とその関連要因の検証
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新型コロナウイルス感染症の流行が健診の受診や予防接種に与えた影響
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新型コロナウイルス感染症の流行が人々の受診(受診控えなど)や精神的な健康に与えた影響
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神戸市における新型コロナウイルス感染症流行前後の新規要介護認定の推移の把握と関連要因の検証
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データから見られる新型コロナウイルス感染症の流行による影響(孤独・孤立、口腔衛生、歯科検診行動など)
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パンデミックの各フェイズにおける医療アクセス・健康アウトカムへの影響の地域間の格差
などが把握できることが期待されます。これらを把握することで、これまで(特に壮年期で)あまり明らかにされてきていない新型コロナウイルス感染症流行期に起きた生活様式、保健・医療・介護利用の変化と、その変化が健康に与えた影響を明らかにし、今後の保健事業や、今後のパンデミックに備えた施策に資するエビデンスの構築を目指します。