帝王切開の時に子宮を切開した部位が、産後にうまく修復されず、子宮の切開創部の内側にへこみ(陥凹)ができてしまうことがあります。その子宮のへこみに月経血や粘液などが貯留し、着床障害(※1)を主体とした不妊症や月経困難症(※2)、過長月経などの月経異常の原因になる可能性があります。これを帝王切開瘢痕症候群と言います。
(※1) 着床障害:問題のない良好な受精卵が、複数回にわたって子宮内膜に生着せずに妊娠に至らない病態のこと。
(※2) 月経困難症:月経期間中に下腹部痛、腰痛などの一般的な月経痛が重度な場合に加え、吐き気、頭痛、疲労感など月経に伴っておこる病的な状態のこと。
帝王切開術は世界で最も行われている手術の一つであり、日本においても全分娩の20~30%が帝王切開による分娩であるとされています。帝王切開は、子宮の下の方を横切開することで胎児を娩出する手術法です。帝王切開術を受けた一部の人で、子宮を切開した傷跡が何らかの原因でうまく治らないことで、子宮の内部のへこみとして傷跡が残ってしまうことがあります。それに加えて、茶色の帯下や過長月経、月経困難などの月経異常が新たに発症した場合に帝王切開瘢痕症候群の可能性があります。
妊娠の希望がない場合には、それらの月経異常に対して低用量ピルやプロゲスチン製剤などのホルモン療法が選択肢となります。また、妊娠を希望している方で、茶色の帯下や子宮内の粘液の貯留などを伴う場合には、子宮鏡や腹腔鏡を用いた手術が検討されます。
当院の女性総合診療部では、腹腔鏡と子宮鏡を併用した手術方法をアメリカ生殖医学会の英文誌である「Fertility and Sterility」に2022年10月22日に報告(※3)し、その術式をベースにそれぞれの患者さんに応じた手術方法を選択しています。
(※3) Hysteroscopic-guided laparoscopic resection of a cesarean scar defect in 5 steps: the usefulness of nonperfusion hysteroscopy. URL: https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(22)01383-8/fulltext
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