JFCが公開したファクトチェック記事は4月26日現在で87本あり、note上のJFCページ(https://factcheckcenter.jp/)で閲覧可能です。検証対象は「言説」「画像」「動画」に分類され、それぞれについて、どうやって検証したかの過程も詳しく解説することで、読者が結果だけでなく、検証手法を学び、自ら実践できる内容となっています。
JFCページ上だけでなく、Yahooニュースへの配信で多くの読者を獲得している他、Twitter、Facebookなどのソーシャルメディアへの配信、「ケムトレイル」などの根強い陰謀論でGoogle検索結果のトップページに表示され、マイクロソフトbingのAIチャットでも回答に引用されるなど、より多くのユーザーに届くようにリーチの強化を図っています。
また、AI生成画像の検証や公開されている地理情報を活用したOSINT、動画検証などについて、幅広い検証事例を積み上げていく中で、編集部の体制を拡充し、新たな取り組みも始めています。
ショート動画の配信を開始
近年急速に増えているのが、ショート動画の誤情報です。TikTokだけでなく、YouTube、Instagram、Twitter、Facebookなどプラットフォーム横断的に急速に拡散し、特に若い世代に強い影響力を持っています。
JFCではショート動画フォーマットでの検証コンテンツの配信も始めています。国内外の大震災は人の手によるものだとする「人工地震説」を検証した動画を始め、今後は動画での配信頻度も増やしていきます。
メディア・リテラシー担当の副編集長が参画
JFCは昨年10月、編集長を含む3人のエディターと4人のインターンでスタートしました。活動範囲が増えるに伴って編集部も増強しています。
ファクトチェック記事や動画を配信するだけでなく、ファクトチェッカーの養成やメディア・リテラシー教育の普及、総合的な誤情報対策の研究など、活動範囲は多岐に渡るため、人材採用にも取り組んできました。
3月には、新たな戦力として副編集長に宮本聖二が加わりました。宮本はNHKやYahoo!JAPANで戦争アーカイブやメディア・リテラシーの普及などに取り組んできたベテランです。Yahoo時代にはJFC編集長の古田大輔とともに、誤情報対策のコンテンツづくりも担当していました。
JFCでは編集長の補佐役というだけでなく、SIAにおいてメディア・リテラシー教材の作成などを担当します。
ファクトチェッカー養成機関としての機能も
発足時の4人のインターンのうち、3月に1人は留学、2人は卒業して報道機関に就職しましたが、今年1月からこれまでに5人が新たにチームに加わっており、現在、インターンは大学院生2人を含む総勢6人。文系や理系、東京以外からの遠隔参加もあり、多様性を増しています。
学生がファクトチェックの手法を身に着けて巣立っていくことが、日本のファクトチェッカーの裾野を広げていきます。さらに教育手法をJFCとして磨いていくことで、トレーニングコースを外部にも提供しようと計画しております。
海外ではファクトチェック機関がファクトチェッカー養成講座を開き、草の根の真偽検証を広げていくことは珍しくありません。JFCも外部団体や有識者とも協力しながら、養成講座を準備していく計画です。
海外とのネットワーク
誤情報は国境を超えます。海外では、ファクトチェック機関も国境を超えたネットワークを作り、検証に協力しあっています。
IFCNが毎年開催するファクトチェックイベント「Global Fact」では、世界中のファクトチェッカーやジャーナリスト、研究者や教育者など誤情報に対策取り組む有識者が一堂に集まります。10回目の今年は初のアジアでの開催で、韓国ソウルで6月下旬に実施されます。編集長の古田が参加を予定しており、アジア各国の専門家たちとアジアにおける課題、協力について議論しようと準備を進めています。
コラボレーションとテクノロジーの強化へ
昨年以降、生成AIによる偽画像や誤情報の拡散が話題になっています。AIを用いて、誰でも短時間で簡単に大量に事実と異なる情報や画像を生成できるようになり、情報の質をめぐる状況は悪化しています。
JFCが単独で情報の検証を進めていったとして、誤情報の量と拡散するスピードには対抗できないのが現状です。ファクトチェックとメディア・リテラシーのさらなる普及は待ったなしですが、その効果を高めていくためには、テクノロジーの活用と外部の専門家や機関とのコラボレーションが欠かせません。
多様な関係者との議論や協力を深めていきたいと考えています。