・慢性的な人手不足が顕著になる中で、日本全体として生産性を高めていくためには仕事と人材の最適なマッチングが必須となる。
・旧来の労働慣行が弱まり、またインターネットを利用しての求人求職活動が活況を呈する現在においては、効率的な人材異動、従業員のリスキリング 、採用・外部人材活用におけるミスマッチの回避、などのために「スキル標準」が求められている。
・スキルデータの活用に関するこれまでの国の取組によってはマッチング精度向上に資するスキル標準は社会実装されていない。また、民間においても個社を超えたスキル標準を打ち立てようとする動きは大きくは起こってこなかった。
・しかし現在、特にデジタル分野においては人材不足が世界的にも深刻になっており、人材の育成とともにより効率的なマッチングを実現するため、デジタルスキル標準の社会実装が喫緊の課題となっている。
・現在の政策的状況を鑑みるに、デジタル人材のスキル標準を早期に社会実装するためには民間が主体となって取り組んでいくことが不可欠である。そこで、民間が主体となり官民におけるスキルデータ活用についての課題を乗り越えるための以下の方策を提言する。
- 現場のニーズを踏まえたデジタルスキル標準の整備
- それを実現するための仕組みとしての議論の場(座組)の組成
・座組においては、「たたき台」となるスキル規格について、個社における実際の運用で明らかになった課題点及びその解決策を明確にし、それを共有しながら標準を民間においてより活用しやすいものにアップデートすることにより標準の社会実装を目指す。
・アップデートされたスキル標準は座組に参加するそれぞれの組織が活用するのみならず、政府に対して政策提言を行うことで迅速な社会実装が実現される。
・「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」掲載のスキル規格「デジタルスキルマップ(DSM)」は種々の点から民間企業においても有用であり、座組における「たたき台」として有力であると考えられる。
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https://www.j-paa.or.jp/policyproposal/731
執筆者プロフィール
岩本 隆 日本パブリックアフェアーズ協会理事
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。KBSでは産学連携による「産業プロデュース論」「ビジネスプロデュース論」などの研究を実施。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。山形大学では文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの事業プロデューサーとして山形地域の事業プロデュースを統括。
「技術」「戦略」「政策」を融合させた「産業プロデュース論」を専門領域として、様々な分野の新産業創出に携わる。